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高次脳機能障害の症状や生活への影響は? 原因と具体的な対応方法

更新日:2024年1月16日 後遺障害
高次脳機能障害とは、脳に何らかの損傷が生じることによって生じる障害です。交通事故における他の傷病、たとえば骨折などのように「目に見える傷病」ではありません。記憶障害や注意障害、性格の変化などさまざまな形となってあらわれます。

そのため、その苦しさが他の人にとってわかりづらく、また、本人としても自らの障害が受け入れがたいという特色があります。それはすなわち、たとえご本人やご家族が「被害者の言動が事故に遭ってから変わってしまった」と感じていても、「苦しさが他の人からわかりづらい」ことから、交通事故の後遺障害として認定されにくいということも意味します。

本コラムでは、高次脳機能障害がどのような障害であるのかについて、ベリーベスト法律事務所 交通事故専門チームの弁護士が解説します。交通事故に遭われた方の参考になれば幸いです。

目次

  1. 1、高次脳機能障害の具体的な症状
    1. (1)記憶障害
    2. (2)注意力障害
    3. (3)半空間無視
    4. (4)遂行機能障害
    5. (5)社会的行動障害
    6. (6)失行症
    7. (7)失認症
    8. (8)失語症
  2. 2、高次脳機能障害の原因
    1. (1)脳血管障害
    2. (2)外傷性脳損傷
    3. (3)その他
  3. 3、高次脳機能障害の判断基準
    1. (1)脳の器質的病変(ダメージ)の原因となる受傷や疾病の発症の事実があること
    2. (2)障害が残存していること
    3. (3)検査所見があること
    4. (4)高次脳機能障害の診断にあたり注意すべき点
    5. (5)原則(1)~(3)の基準にすべてあてはまるとき診断される
  4. 4、高次脳機能障害のリハビリ方法
  5. 5、高次脳機能障害の場合の日常生活上での具体的な注意点[*3]
    1. (1)記憶障害(約束を守れない、大切なものをしまった場所を忘れてしまうなど)
    2. (2)注意障害(突飛な行動を取る、作業が長く続けられないなど)
    3. (3)遂行機能障害(仕事が約束どおりに仕上がらない、仕事を途中で投げ出してしまうなど)
    4. (4)社会的行動障害(興奮して大声を出したりするなど)
    5. (5)コミュニケーション障害(話にまとまりがない、雰囲気にそぐわない会話をする)
    6. (6)病識欠落(本人が高次脳機能障害が残っていることを理解できていない)
  6. 6、まとめ
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01
高次脳機能障害の具体的な症状

悩み

高次脳機能障害を負ってしまった場合に出現する主な症状には、以下のようなものがあります。

(1)記憶障害

記憶には、出来事を覚えておく力である「記銘力」と、覚えたことを思い出す「想起力」がありますが、高次脳機能障害の場合には、「記銘力」に大きい影響が出ることが多いようです。そうなると、新しいことを覚えることができなくなってしまうことになりますし、約束を忘れたり、内容を誤って覚えていたりと、日常生活に支障が出てしまいます。

(2)注意力障害

集中力が低下し、ひとつのことに注意を向け続けることや、注意の対象を切り替えることが困難になります。

すぐに周りの環境に気を取られてしまい、落ち着きがなくなってしまったり、逆に、ひとつのことに没頭してしまい、同時並行で作業をすることができなくなったりしてしまいます。

(3)半空間無視

空間の半分を認識することができなくなってしまうこともあります。

多くの場合において、左側が認識できなくなってしまうため、この症状が出ると、右側を向いてしまい、右側ばかりに注意が向きます。この障害がある人の目の前に、横向きにピンと張った状態のひもを差し出して、真ん中をつかむように指示すると、右寄りをつかんでしまいます。また、食事の際に、左側だけを食べ残してしまったりします。

(4)遂行機能障害

自分で手順を決めたり段取りを考えたりすることができなくなってしまいます。ひとつひとつ指示されないと行動に移せなくなってしまいますし、融通が利かなくなってしまいます。

(5)社会的行動障害

感情のコントロールが困難になり、状況に応じた行動が取れなくなってしまいます。

すぐにイライラしたり、子どもっぽくなったりしてしまうため、対人関係に支障をきたします。
また、がまんができなくなって、お金をあるだけ使ってしまったりすることもあります。疲れやすくなったり、気力がなくなったりして、ひきこもりがちになってしまうこともあります。

(6)失行症

身体的な機能に問題はないのに、日常生活における何気ない動作が困難になることがあります。たとえば、ドライヤーの使い方は認識しているのにもかかわらず、実際に髪を乾かすという動作がうまくできなかったりします。

(7)失認症

視覚としては見えているのに、色、形、物の使い方や名称がわからなくなってしまうこともあります。たとえば、よく知っている人の顔を見ても誰だか識別できないが、声を聞くとすぐにわかるというような症状が出ることもあります(これは視覚に症状が出た場合ですが、聴覚や触覚に症状が出ることもあります)。

(8)失語症

言語を扱う能力に障害が生じると、話す、書く、聞く、読むなどの行為が困難になることがあり、他人に意思を伝えたり、言われたことを理解したりすることが困難になることがあります。

02
高次脳機能障害の原因

脳の損傷

高次脳機能障害は、脳の損傷によって引き起こされますが、脳が損傷するのは以下のような場合です。

(1)脳血管障害

脳梗塞・脳出血・くも膜下出血など。

(2)外傷性脳損傷

交通事故・労働災害などにおける受傷によるもの

(3)その他

脳炎、低酸素脳症など

高次脳機能障害の76%が交通事故などによる外傷性脳損傷を原因疾患とするとされており、次に脳血管障害(17%)、低酸素脳症(3%)と続きます[*1]。それ以外にも、脳炎や脳腫瘍の後遺症として高次脳機能障害が生じることもあります。

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03
高次脳機能障害の判断基準

検査

高次脳機能障害が認められるかどうかは、以下のような基準により判断されます。

(1)脳の器質的病変(ダメージ)の原因となる受傷や疾病の発症の事実があること

高次脳機能障害は脳へのダメージを原因として生じますので、この原因となるべき脳梗塞の発症や脳外傷の受傷の事実が存在することが重要です。すなわち、原因は不明であるものの、高次脳機能障害的な症状だけが存在するというような場合に、高次脳機能障害であると診断される可能性は極めて低いということです。

(2)障害が残存していること

診断時点において、日常生活や社会生活に支障があり、その主な原因が、(手足のマヒなどの身体機能への障害ではなく)記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害である必要があります。

(3)検査所見があること

CT、MRI、脳波検査などによって、認知障害の原因と考えられる脳の器質的病変の存在が確認できるか、もしくは、過去の診断書などによって脳の器質的病変が存在したと確認できることが必要です。つまり、「高次脳機能障害の原因が、客観的な検査によって裏付けられている必要がある」ということです。

(4)高次脳機能障害の診断にあたり注意すべき点

  • 1は認められ、身体障害として認定可能である症状(マヒなど)はあるものの、2の記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害が認められないものについては、高次脳機能障害とは診断されません。
  • 認知障害が認められるとしても、受傷または発症前から有する症状と検査所見は考慮されません(つまり、「2が1によって生じた」といえなければなりません)。
  • 先天的な疾患や、周産期(妊娠22週から生後7日未満までの期間)における脳損傷、発達障害、進行性疾患を原因とする場合は、高次脳機能障害とは診断されません。

(5)原則(1)~(3)の基準にすべてあてはまるとき診断される

1、2、3の基準をすべてクリアした場合には、高次脳機能障害と診断されます。なお、高次脳機能障害の診断は、脳の器質的病変の原因となる受傷や疾病が落ち着いた後に行われます。

また、診断においては、神経心理学的検査の所見を参考にすることができますので、1と3は満たすものの、2の検査所見が不十分で脳の器質的病変の存在が明らかにできない場合であっても、高次脳機能障害として診断されることはありえます。

04
高次脳機能障害のリハビリ方法

リハビリ

高次脳機能障害が残存してしまった場合、現時点においては、確立された治療方法が存在しないため、治療は困難です。
そこで、残存してしまった障害とうまく付き合っていく方法を習得していくことが重要です。すなわち、目標とすべきは、認知能力そのものを元に戻すことではなく、日常生活や仕事において必要になってくる動作や技能を習得することだということです。
高次脳機能障害における認知障害に対するリハビリテーションを「認知リハビリテーション」と呼びます。

高次脳機能障害の評価

リハビリを開始するにあたり、まず、実際にどのような高次脳機能障害が生じているかについて評価する必要があります。

仮に、「約束の時間が守れない」という問題が生じているとしても、「約束していること自体を忘れてしまっている」「時間を忘れて何かに熱中してしまう」「約束以外の別のことに気を取られてしまう」「道を覚えていられない」というように、さまざまな原因が考えられますし、そもそも高次脳機能障害の発症に関係なく以前からあった問題である可能性もあるからです。

生活や仕事における生の情報による評価

家族、職場の仲間、教師などの、高次脳機能障害を負った人に日常的に接している者から聴取を行い、どのような生活上の困難が生じているか、それがどういった認知障害に起因するものであるのか推測します。

神経心理検査を用いた評価[*2]

  1. 知能テスト
    • 長谷川式簡易痴呆スケール(HDS-R)
    • MMSE(mini-mental state examination)
    • WAIS-Ⅲ ウエクスラー成人知能検査
  2. 記憶障害
    • 日本版ウエクスラー記憶検査(WMS-R)
    • Reyの聴覚性単語学習課題(AVLT)
    • ベントン視覚記銘検査
  3. 全般性注意障害
    • トレイルメーキングテスト
    • 定速聴覚的連続加算テスト
    • 選択的末梢試験
  4. 方向性注意障害
    • 抹消試験
    • 線分二等分試験
    • 模写試験
    • BIT行動性無視検査
  5. 遂行機能障害
    • ウィスコンシン・カード分類検査(WCST)
    • BADS(遂行機能障害症候群の行動評価)
    • Stroopテスト

必要に応じて、上記のようなテストを行い、客観的に障害の程度を評価していきます。

05
高次脳機能障害の場合の日常生活上での具体的な注意点[*3]

日常生活

高次脳機能障害を負ってしまった方のご家族などが、本人をサポートする際に注意すべき点は以下のとおりです。

(1)記憶障害(約束を守れない、大切なものをしまった場所を忘れてしまうなど)

メモを取る習慣をつけさせたり、できる限り生活を習慣化して覚えることを減らしていったりする工夫が必要です。

(2)注意障害(突飛な行動を取る、作業が長く続けられないなど)

慣れるまでは人の少ない静かな環境で生活させ、また、触れ合う人も、あまり多人数にならないように注意した方が良いでしょう。また、疲れやすかったり、集中力が保ちづらくなっている場合には、休息をしっかり取らせ、また、作業についても、次第に複雑な作業をやらせていくようにしましょう。

(3)遂行機能障害(仕事が約束どおりに仕上がらない、仕事を途中で投げ出してしまうなど)

根気よく必要な動作について繰り返すことで習熟させたり、マニュアルを利用したり、行動をパターン化して環境を単純化したりすることによって対応します。また、日常生活において必要な作業の一部分を担当させ、家族の中で一定の役割を果たしている、家族から期待されているということを実感できるような工夫をしていくことも重要です。

(4)社会的行動障害(興奮して大声を出したりするなど)

まずは、人の少ない静かな環境に置き、不必要に疲れさせたり刺激を与えたりしないようにしていく必要があります。また、問題行動があった場合、本人と一緒に、どのような点が問題になっていて、どのように対処していくかについて考えていく必要があります。どうしようもない場合は、数分間相手にせずに無視することが有効な場合もあります。

(5)コミュニケーション障害(話にまとまりがない、雰囲気にそぐわない会話をする)

ロールプレイなどを通じて、コミュニケーションにどのような問題点があるのか、わかりやすく指摘していきます。

(6)病識欠落(本人が高次脳機能障害が残っていることを理解できていない)

本人のプライドに配慮しつつ、不適切な行動や間違いについて、根気よく指摘・修正していくことが必要であり、あまり強く指摘して自信を無くさせないように注意する必要があります。

06
まとめ

高次脳機能障害にはさまざまな症状があり、その対処方法も多種多様です。見た目だけではわかりづらい障害であることから、本人だけではなく、サポートする家族や周りの方々も障害を正しく理解し対処していく必要があります。

交通事故により負傷したあと、性格が変わってしまった、新しいことを覚えられなくなったなど、脳へのダメージが疑われる場合は、気のせいと受け流そうとせず、まずは病院へ足を運び、適切な診断を受けるべきです。さらに、症状固定となり高次脳機能障害が残った場合は今後の生活が一変してしまうケースは少なくありません。保険会社から提示された金額ですぐに合意せず、まずは交通事故の後遺障害などについての知見が豊富な弁護士にご相談ください。

ベリーベスト法律事務所では、弁護士だけでなく医療コーディネーターなどともタッグを組んだ交通事故専門チームが力を合わせ、適切な慰謝料を受け取れるよう力を尽くします。この記事が、高次脳機能障害の症状について知りたいという方のご参考になれば幸いです。

*1 *2 *3 参照「高次脳機能障害ハンドブック 診断・評価から自立支援まで」編集:中島 八十一/寺島 彰(医学書院)
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