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実は複雑?主婦が交通事故に遭った場合の損害賠償

実は複雑?主婦が交通事故に遭った場合の損害賠償

被害者の方からよくご相談いただくのが、「交通事故で家事ができなくなってしまったのに『給料を貰っているわけじゃないから補償はない』と言われてしまった」というお悩みです。

今回は、ご家族のために家事をされている「家事従事者」の方が交通事故に遭った場合に、加害者加入の任意保険会社に対し、どのように賠償を求めていくのかをご案内します。

1. 治療費

「治療費」は、必要性と相当性の認められる実費を請求できるのが原則です。

保険会社が立て替える形で前払いしてくれていることが多いです(通院時に被害者自身はお金を支払わず、後から病院が保険会社に請求する、という形です)。

もっとも、被害者にも過失がある場合、保険会社が最終的に負担するのは加害者の過失がある分だけです。そのため、前払いで全額立て替えられていた場合、被害者の過失分は慰謝料などから差し引く形で調整されます。
たとえば、治療に100万円かかったときに加害者の過失が90%であれば、保険会社の負担部分は90万円ですから、100万円全額を保険会社が立て替えた場合、慰謝料などから被害者の過失分10万円が差し引かれることになります(差し引かれる前の慰謝料の総額も過失に応じた9割分になっています)。

治療費の前払いは、あくまで保険会社が被害者の治療の便宜を考えて任意で行っているため、保険会社が立替払いを打ち切ると決めた場合には、阻止することはできません。打ち切り後の通院では、通常の通院と同様、診療費を窓口で自分で支払うことになります。

打ち切り後の診療費を加害者側に請求するには、打ち切り後にも治療が必要で、相当な治療方法であったと認められる必要があります。一般に、医師が治療を尽くしたと判断する「症状固定」という段階までは必要性が認められやすく、整骨院など医師以外による治療については相当性が否定されやすくなります。

2. 通院交通費

また、通院するためにかかった「通院交通費」も、必要かつ相当な実費を請求できるのが原則です。

ご自身の車で通院された場合も、距離に応じてガソリン代相当の交通費が認められます。一方、家の近くに病院があるのに、あえて遠い病院にタクシーで行ったりすると、必要性が否定されてしまいかねないので注意が必要です。

3. 傷害慰謝料

さらに、怪我をしてしまった場合には、最終的に完治したか否かにかかわらず、原則として通院期間を基準として「傷害慰謝料」を請求できます(軽い怪我について、通院期間が長期に渡り、その通院頻度も少ないような場合には、実際に通院した実日数を基準に算定することもあります)。

通常、性別や職業によって額が変わる費目ではありませんが、ほとんどのケースにおいて、保険会社が示談の際に基準としている額と、弁護士が用いる裁判所が基準としている額の開きが大きくなるため、弁護士に交渉を任せることで増額が見込みやすい費目となっています。

4. 休業損害

交通事故で怪我をしてしまい仕事を休んだことで収入減があった場合、「休業損害」という形で賠償を求めることができます。交通事故によって収入減があったこと(又は有給休暇を使ったこと)を証明しなければ請求できないのが原則です。

主婦の方が交通事故に遭われた場合に示談交渉で大きな山場となるのが、「家事労働」について、この「休業損害」を認めてほしい、という交渉です。

主婦が家事を行うことについては、誰かから給料が支払われるというものでもありませんので、たとえ怪我のせいで家事ができなくなってしまっても、それについて収入減があったことを証明して休業損害を請求するのは難しいようにも思えます。

しかし、家事労働も仕事と同じく経済的価値を有する作業であって、それが数日間、場合によっては数ヶ月間できなくなることは大きな損失です。
そのような配慮からか、裁判所も基本的には、主婦の家事労働についても休業損害を支払うべきであると判断しています。たとえば最高裁昭和50年7月8日判決は、家事労働について金銭的な評価も不可能ではないとして、家事労働に従事できなかった期間について休業損害が認められると判断しています。

専業主婦については、全女子労働者の平均賃金を基礎に計算して賠償額を定めるのが一般的です。一方、兼業主婦の場合には全女子労働者の平均賃金と仕事での報酬を比べて高い方で請求することになります。
専業・兼業問わず、家事労働について平均賃金を基準に休業損害を請求すると、多くの場合、保険会社から「損害がない」「兼業しているパートの年収を基準とすべき」などと激しく争われることになるため、弁護士が介入しないと請求が難しい費目です。

なお、男性で家事労働に専念している「専業主夫」の場合も、全女子労働者の平均賃金で休業損害を計算するのが通常です。また、女性が家事を担当することが多いという社会状況からか、被害者男性が家事を担当している、という点について証明を求められることが多いため、女性の場合に比べて交渉は難航します。

5. 後遺障害慰謝料と逸失利益

医師が一定期間にわたって治療と経過観察を続け、治療を尽くしたと考える段階においても症状が完治していない場合、残ってしまった症状を「後遺障害」として認定してほしいという申請をすることになります。
たとえば、片耳が聞こえなくなってしまったから第9級など、残ってしまった症状の種類や程度に応じて、あらかじめ定められた等級の基準を満たすかが審査されます。

完治しなかった症状が後遺障害として認定された場合、症状が残ってしまったことの精神的苦痛について「後遺障害慰謝料」を別途請求できます。
また、今後の仕事に差し支える分を金銭的に評価して「逸失利益」という形で請求することができます。後遺障害の内容・程度に応じて、年収の○○%×○年分という形で計算されます。

「後遺障害慰謝料」については、通常、主婦であることを理由に減額を求められることはありません。裁判をした場合よりも低い額で示談の提示されることはままありますが、これはどんな職業の方でも同じですし、費目全体を否定されることはそう多くないでしょう。

一方、「逸失利益」については、専業主婦の場合、全女子労働者の平均賃金を元に計算・請求することになります。休業損害と同様に、保険会社から額について争われることが予想されるため、弁護士に交渉を任せることをお勧めします。

6.物的損害

車、自転車…乗っていた物の破損についての請求はもちろんですが、それ以外の物の損害も忘れてはいけません。
「物損」というと、車の修理費用などが想像されますが、服やアクセサリー、スマートフォンなど交通事故で汚損した物があれば弁償してもらえるのが原則です。特に、歩行中や、自転車・バイクに乗っていたなど、車に乗っているとき以外に交通事故に遭われた場合、着衣や携帯物が汚損してしまうことがよくあります。

ネックレスや指輪の宝石が欠けてしまった、コートが破れてしまったなど車と同等以上の損害が発生している可能性もあります。請求には、ほとんどの場合に「交通事故でこのように壊れてしまった」という証明が必要になるので、もし身につけられない状態になってしまっても処分しないようにしてください。

まとめ

主婦の方が交通事故に遭われた場合、基本的には、これまでご案内したような費目について請求していくことになります。

家事労働についての休業損害は、認められれば請求額が大きく変わるケースも多いため、なんとしても示談段階で賠償を認めさせたいところです。
主婦の方が交通事故に遭われて数か月の通院を余儀なくされたような場合は、弁護士に依頼したときに利益が見込みやすい典型的なケースといえます。もし保険会社から示談の提示があった場合には、すぐに応じてしまわず、無料相談などを利用して一度は弁護士に妥当な額かを尋ねてみることを強くおすすめします。

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