交通事故のむちうち│後から出た「しびれ」は後遺障害認定できる?

症状固定後もしびれ等の症状が残るようであれば後遺障害等級認定の対象になりますが、必ずしも後遺障害等級が認定されるわけではないため、認定のポイントをしっかりと押さえておくことが大切です。
今回は、交通事故後しばらく経ってからしびれの出るむちうち症状のケース、後遺障害等級認定のポイント、適切な慰謝料請求の方法などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、むちうちで後からしびれが出るケースとは?
交通事故のむちうちで事故後しばらく経ってからしびれが出るのは、どのようなケースなのでしょうか。
-
(1)交通事故直後に症状がでないケースも多い
一般的な外傷とは異なり、むちうちは、事故直後にすぐに症状が出ず、事故からしばらく経ってから症状が出るケースも少なくありません。これは、事故直後は興奮状態になっていて、アドレナリンが分泌されているため痛みやしびれなどを感じにくくなっているのが理由です。痛みの症状が出ていなくても、実際は進退に異常が出ている可能性もあります。
実際に症状があらわれるのは、事故当日から1~2週間以内であるケースが多いです。
そのため、事故直後は痛みやしびれなどがなかったり、感じにくかったりするとしても、すぐに病院を受診し、その後、通院を続けながら注意して経過を観察するようにしましょう。 -
(2)しびれ等の原因│むちうちのタイプ5つ
一般的に使われている「むちうち」という用語ですが、実は正式な傷病名ではありません。正式には、以下の5つのタイプに分類されます。ここでは、むちうちのタイプ別に症状が出やすい部位や症状の特徴などをみていきましょう。
① 頚椎捻挫型
むちうちのほとんどのケースは、頚椎捻挫型にあたります。
頚椎捻挫型は、頚椎を構成する筋肉、靭帯、関節包などがダメージを受けることで、首や肩の痛み、筋肉の凝り、首が動かしづらいなどの症状があらわれます。
② 神経根型
神経根型のむちうちとは、交通事故の衝撃により首の骨がずれ、首の中を通っている神経根が圧迫されることでむちうちの症状があらわれるタイプです。
神経根型のむちうちになると、主に以下のような症状があらわれます。- 肩や腕、手指の痺れ
- 神経痛
- 筋力低下や握力低下
神経根型のむちうちは、事故の衝撃で首の骨がズレている状態ですので、くしゃみ・咳・首を前後に倒すなどの動作時に痛みやしびれを感じるのが特徴です。頚部の痛みだけではなく、上肢のしびれや神経痛などを感じるときは、神経根型のむちうちである可能性があります。
③ バレ・リュウ症候群型
バレ・リュウ症候群型のむちうちとは、事故の衝撃により交感神経を痛めることで、頚椎捻挫症状に自律神経失調症状が合併した状態のむちうちです。バレ・リュウ症候群型のむちうちになると、首の痛み以外にも頭痛、めまい、眼精疲労、耳鳴り、動悸、全身倦怠などの症状があらわれます。
④ 脊髄症状型
脊髄症状型のむちうちとは、交通事故による衝撃で、頸椎の中を走っている脊髄やそこから伸びている神経が損傷することでむちうちの症状があらわれるタイプです。
脊髄症状型のむちうちになると、主に以下のような症状があらわれます。- 手足のしびれ、麻痺
- 知覚障害
- 歩行障害
- 排泄障害
脊髄症状型のむちうちは、脊髄が損傷していますので、神経根型のむちうちに比べて重い症状があらわれるのが特徴です。上肢のしびれだけでなく、下肢にも症状があらわれますので、「ふらつくようになった」、「尿や便がしづらくなった」などの症状にあてはまるときは、脊髄症状型のむちうちである可能性があります。
⑤ 脳脊髄液減少型
脳脊髄液減少型のむちうちとは、交通事故で首に強い衝撃が加わることで、クモ膜下腔から脳脊髄液が漏れ続けることで発症する疾患です。脳脊髄液減少型のむちうちになると、頭痛、頚部痛、めまい、吐き気、倦怠感、耳鳴りなどの症状があらわれます。
2、むちうちが対象となる後遺障害等級認定
症状固定後もむちうちによるしびれなどの症状が残る場合は、後遺障害等級申請をすることで、症状に応じた後遺障害等級認定を受けられる可能性があります。
以下では、むちうちが対象となる後遺障害等級と認定されるポイントを説明します。
-
(1)むちうちで認定される可能性のある後遺障害等級
むちうちで認定される可能性のある後遺障害等級には、別表第二の12級13号と14級9号があります。
12級13号とは、むちうちにより「局部に頑固な神経症状を残す」場合に認定される後遺障害等級です。局部に頑固な神経症状を残すとは、身体の一部に頑固な痛みやしびれなどの症状が残る状態をいい、レントゲン・CT・MRIの他覚的所見により異常が認められることが要件となります。
14級9号とは、むちうちにより「局部に神経症状を残す」場合に認定される後遺障害等級です。局部に神経症状を残すとは、身体の一部に痛みやしびれなどの症状が残る状態をいい、他覚的所見がなくてもむちうちの存在が医学的に説明できることが要件となります。
後遺障害等級12級13号と14級9号の違いをまとめると以下のようになります。12級13号 14級9号 認定基準 局部に頑固な神経症状を残すもの 局部に神経症状を残すもの 認定条件 むちうちの存在が医学的に証明できること むちうちの存在が医学的に説明できること 他覚的所見の有無 あり なし -
(2)認定されるポイント
以下では、むちうちで後遺障害等級認定を受けるポイントを説明します。
① 後遺障害が生じるような事故態様であったこと
後遺障害等級認定を受けるには、むちうちによる症状が将来にわたって回復困難な症状であるといえなければなりません。車体をこすっただけ、ドアミラー同士の衝突など軽微な事故態様だと、むちうちによる症状が残っていたとしても、事故との因果関係が否定される可能性が高いです。
そのため、事故態様が後遺障害の生じるような重大な事故であったことが後遺障害等級認定のポイントの1つになります。
② 適切な通院頻度であること
後遺障害等級認定は、医療機関への通院実績や通院頻度も重要な判断要素になります。
むちうちの治療をする際は、医師の指示に従って適切な頻度・期間で通院するようにしてください。
通院頻度が著しく低い場合や途中で通院の中断があるような場合には、むちうちによる症状が残ったとしても、事故との因果関係が否定される可能性がありますので注意が必要です。
③ 症状の一貫性・継続性があること
後遺障害等級認定を受けるには、むちうちによる痛みやしびれなどの症状に一貫性・継続性があることが必要です。
症状の一貫性とは、事故当初から症状固定まで、症状が生じた部位や内容に変化がないことをいいます。また、症状の継続性とは、事故当初から症状固定まで症状が常に生じていることをいいます。
症状の一貫性・継続性は、カルテなどの記載に基づいて判断されますので、痛みやしびれなどがある場合は、はっきりと医師に伝えるようにしましょう。
3、後遺障害慰謝料の相場
むちうちで後遺障害等級認定を受けられた場合、後遺障害慰謝料を請求することができます。以下では、慰謝料の3つの算定基準と後遺障害慰謝料の相場について説明します。
-
(1)3つの慰謝料算定基準
後遺障害慰謝料の計算で用いられる算定基準には、以下の3つがあります。
- 自賠責保険基準:自賠責保険が慰謝料額を計算する際に用いる基準
- 任意保険基準:任意保険会社が慰謝料額を計算する際に用いる基準
- 裁判所基準(弁護士基準):弁護士が示談交渉をする際または裁判所が慰謝料の金額を計算する際に用いる基準
後遺障害慰謝料の金額は、どの基準を使うかによって慰謝料額が大きく変わります。一般的には、裁判所基準がもっとも高額で、自賠責保険基準がもっとも低額になるといわれています。
保険会社から提示される慰謝料額は、任意保険基準により算定された金額になりますが、自賠責基準と同程度の提示がなされることもあり、 裁判所基準との間には大きな金額の開きが生じることになります。 -
(2)算定基準ごとの後遺障害慰謝料の相場
むちうちで認定される可能性がある後遺障害等級は、12級13号または14級9号になります。
後遺障害慰謝料は、認定された等級に応じて金額が変わりますので、自賠責保険基準および裁判所基準によるむちうちでの後遺障害慰謝料の相場を示すと以下のようになります。等級 後遺障害慰謝料の金額 自賠責保険基準 裁判所基準 12級 94万円 290万円 14級 32万円 110万円
このように、自賠責保険基準と裁判所基準とでは、後遺障害慰謝料の金額に2~3倍程度の差がありますので、慰謝料を請求する際には、裁判所基準により慰謝料の算定をすることが重要になります。
4、後遺障害等級認定のために弁護士に相談を
むちうちによる後遺障害等級認定をお考えの方は、早い段階から弁護士に相談することをおすすめします。
-
(1)後遺障害等級が認定される可能性が高くなる
むちうちによる痛みやしびれなどの症状が残ったとしても、後遺障害等級申請の結果、非該当になるケースも少なくありません。
後遺障害等級の認定を受けるには、通院頻度・通院実績、後遺障害診断書の記載内容などが重要になりますので、通院段階から専門家である弁護士のサポートを受ける必要があります。交通事故問題に詳しい弁護士に相談をすれば、適切な後遺障害等級の認定を受けられるよう、サポートしてもらうことができますので、自分で対応するよりも後遺障害等級が認定される可能性が高くなります。 -
(2)異議申立てにより認定結果が覆る可能性がある
後遺障害等級申請の結果、非該当になってしまったとしてもすぐに諦めてはいけません。後遺障害等級申請の結果に不服がある場合には、異議申立てをすることができます。
ただし、単に「認定結果が不服である」という理由だけで異議申立てをしても結果が覆ることはありません。当初の認定結果を覆すためには、新たな証拠に基づいて後遺障害等級認定がされるべきであることを主張・立証していかなければなりません。それには、専門家である弁護士のサポートが不可欠ですので、異議申立てを検討中の方は、すぐに弁護士に相談するようにしましょう。 -
(3)交通事故の相談は経験・実績豊富な弁護士に相談を
交通事故の相談や、後遺障害等級認定手続きのサポートを依頼するなら、なるべく後遺障害等級の認定基準やポイントを熟知している弁護士であることが望ましいでしょう。
ベリーベスト法律事務所では、交通事故の対応の経験を持つ弁護士やパラリーガル、医療コーディネーター(メディカルコーディネーター)で構成された交通事故専門チームがサポートしますので、交通事故に関するお悩みは、当事務所までお気軽にご相談ください。
5、まとめ
交通事故によるむちうちは、事故直後ではなくしばらく経ってからしびれなどの症状が出ることがあります。そのような症状が症状固定時まで残っている場合には、後遺障害等級認定の対象になりますが、むちうちによる後遺障害等級申請では、非該当になることも少なくありません。
そのため、むちうちで適切な後遺障害等級認定を受けるには、専門家である弁護士のサポートが不可欠です。
ベリーベスト法律事務所であれば、初回相談料60分無料、交通事故専門チームの弁護士が慰謝料等の増額交渉も可能ですので、交通事故のお悩みは、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。