交通事故被害者は裁判を起こすべき? その必要性や費用・期間を解説

更新:2024年09月10日 公開:2023年05月16日
訴訟
交通事故被害者は裁判を起こすべき? その必要性や費用・期間を解説
交通事故の被害者は、加害者に損害賠償を請求できます。損害賠償請求は示談交渉によるのが一般的ですが、加害者側(保険会社)の提示額に納得できない場合には、裁判(訴訟)で争うことも可能です。

ただし、裁判にはメリット・デメリットの両面があるため、裁判での解決を目指すか否かは慎重に検討しましょう。判断が難しい場合には、弁護士にご相談ください。

今回は、交通事故の損害賠償請求に関する裁判につき、裁判した方がよい場合としない方がよい場合の判断基準や、費用・手続きの流れ・事前準備などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
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1、交通事故の被害に遭った場合、裁判をすべきか?

交通事故の損害賠償請求は、民事裁判(訴訟)によって争うこともできますが、状況に応じて裁判をするのかどうかを決めることが大切です。

  1. (1)裁判をした方がよい場合

    交通事故の損害賠償請求を裁判で争った方がよい場合としては、以下の例が挙げられます。

    ① 加害者(保険会社)から提示された損害賠償金額が低すぎる場合

    示談交渉によって被害者が主張する額との差が埋まることは見込めないため、裁判で争うのが適切と考えられます。

    ② 加害者側に損害賠償の意思が全くない場合

    損害賠償を支払う意思がなく、示談交渉そのものを拒否されているようなケースでは、裁判で争わざるを得ません。

    ③ 過失割合について争いがある場合

    損害賠償額に大きな影響を与える過失割合について争いがあり、被害者・加害者双方の主張内容がかけ離れている場合は、裁判で争わざるを得ないケースが多いです。

    ④ 加害者(保険会社)との示談交渉がうまくいっていない場合

    ①~③以外の様々な理由で示談交渉が平行線をたどっている場合は、それ以上時間をかけてもまとまる見込みは低いため、裁判で争う方が適切です。

    裁判をする方が良いかを判断するためにも、裁判を起こす前に、弁護士を通じて加害者側の保険会社に対し示談金額を提示することをおすすめします。

    そもそも、交通事故の損害賠償額を算定する基準には、複数の種類が存在します。加害者側の保険会社は、独自の基準である「任意保険基準」に基づいて金額を提示してきますが、被害者に生じた客観的な損害額として裁判所でも用いられているのは「弁護士(裁判所)基準」です。

    弁護士基準に基づく損害額は、任意保険基準よりもはるかに高額であることがほとんどです。被害者は本来、弁護士基準に基づく損害賠償を受ける権利があります。
    しかし、被害者が自分で交渉しても弁護士基準の計算を行わないのが保険会社の通常の対応ですので、弁護士を通すことで、弁護士基準の計算に切り替わり、結果的に、裁判をしなくても大幅な増額を得られる可能性があります。

    損害賠償請求の裁判を起こすのは、弁護士を通じた示談交渉を試み、それが決裂してからでも遅くはありません。ただし、損害賠償請求には時効がありますので注意してください。

  2. (2)裁判をしない方がよい場合

    これに対して、交通事故の損害賠償請求について裁判をしない方がよい場合としては、以下の例が挙げられます。

    ① 示談交渉がまとまる可能性がある場合

    裁判は長期化しやすく、被害者には時間的・経済的に大きな負担がかかります。示談交渉が早期にまとまる可能性があるうちは、むやみに裁判を行うことは避けるべきです。

    ② 加害者側に資力がない場合

    加害者が任意保険に加入していない場合は、損害賠償請求が認められたとしても、実際に賠償金を回収できるかどうかが問題となります。

    もし加害者に資力がなく、賠償金を回収できる可能性がなければ、コストが無駄になってしまうので裁判はやめた方がよいでしょう。ただし、「お金がない」という加害者の主張を信用できない場合は、弁護士が調査を行うことも可能ですので、一度弁護士にご相談ください。

2、交通事故の裁判にかかる費用・手続きの流れ

交通事故の損害賠償について裁判を検討している方は、必要となる費用や手続きの流れについてあらかじめ確認しておきましょう。

  1. (1)交通事故の裁判にかかる費用

    交通事故の裁判には、主に弁護士費用と訴訟費用がかかります。

    ① 弁護士費用

    依頼する弁護士に対して支払う費用です。法律相談時にかかる相談料、依頼時に支払う着手金、損害賠償を獲得できた場合に支払う報酬金などがあります。
    弁護士費用特約を利用できる場合は、全額または大部分が弁護士費用特約によって賄われることになります

    ベリーベスト法律事務所の交通事故に関する弁護士費用は、以下のページをご参照ください。
    (参考:「弁護士費用(弁護士特約)」(ベリーベスト法律事務所)

    ② 訴訟費用

    裁判(訴訟)を提起する際、裁判所に対して支払う費用です。訴額(請求額)に応じた手数料と、連絡用の郵便切手数千円分が必要になります。

    手数料額については、以下の裁判所資料をご参照ください。
    (参考:「手数料額早見表」(裁判所)

  2. (2)交通事故の裁判手続きの流れ

    交通事故の裁判(訴訟)は、大まかに以下の流れで進行します。

    ① 訴訟の提起

    裁判所に訴状を提出して、訴訟を提起します。原告(被害者)の主張を裏付ける証拠資料についても、訴状と併せて提出するのが一般的です。

    ② 期日指定・被告答弁書の提出

    訴状を受理した裁判所は、第1回口頭弁論期日を指定して、原告・被告の双方に通知します。被告は、裁判所に指定された提出期限までに、訴状に対する反論を記載した答弁書を提出します。

    ③ 口頭弁論期日

    裁判所の公開法廷において、当事者双方が主張・立証を行う口頭弁論期日が実施されます。
    主張内容を記載した準備書面を期日までに作成し、裏付けとなる証拠資料とともに裁判所へ提出するのが一般的です。双方の主張が出そろったら、必要に応じて証人尋問や当事者尋問も行われます。
    なお、争点整理を行うために、非公開で弁論準備手続またはウェブ会議(書面による準備手続)が行われることもあります。
    口頭弁論期日・争点整理期日の開催頻度は、おおむね1か月に1回程度です。

    ④ 和解期日

    裁判の途中で和解が試みられることもあります。当事者双方が和解案につき合意すれば、裁判上の和解が成立して裁判は終了します。

    ⑤ 判決

    審理が熟し、和解の見込みがない場合には、裁判所が判決を言い渡します。

    ⑥ 控訴・上告

    一審判決に対しては控訴、控訴審判決に対しては上告による不服の申立てが認められています。控訴・上告の期間は、判決書が送達された日(現実に受け取った日とは限りません。)の翌日から起算して2週間です。

    期間中に適法な控訴・上告が行われなかった場合、または上告審判決が言い渡された場合には、判決が確定します。

3、交通事故の裁判を起こす前にやるべきこと

交通事故の裁判を起こす前には、ご事情に応じて以下の対応を行いましょう。どのような準備が必要か分からない場合は、弁護士にご相談ください。

  1. 自賠責保険の被害者請求・仮渡金の請求
  2. 後遺障害等級認定の申請
  3. 示談交渉・ADRでの解決を模索
  4. 訴訟提起の準備
  1. (1)自賠責保険の被害者請求・仮渡金の請求

    自賠責保険の保険金請求は、加害者側の保険会社に任せることもできますが、被害者自身が行うことも可能です(被害者請求)

    被害者請求を行うと、損害保険料率算出機構の調査事務所において、支払いの適確性(自賠責保険の対象の有無、傷害と事故の因果関係等)や発生した損害額等の調査が行われます。調査の結果、支払いの適確性や損害額等が認められれば、加害者側との示談交渉が終わっていなくても、自賠責保険の保険金を受け取ることができます。経済的な余裕がない場合には、被害者請求をご検討ください

    なお、自賠責保険からは、法令の規定に基づく仮渡金の支払いを受けることもでき、その金額は被害の程度によって決められています(自動車損害賠償保障法第17条第1項、同法施行令第5条)。
    仮渡金は損害賠償の前払いという位置づけになりますが、被害者請求を行う際に併せて請求するとよいでしょう。

  2. (2)後遺障害等級認定の申請

    交通事故のケガが完治せずに後遺症が発生した場合は、後遺障害等級の認定を申請しましょう。適切な等級の認定を受けられれば、後遺障害慰謝料や逸失利益の請求に当たって大きな好材料となります。

    後遺障害等級認定の申請は、加害者側の保険会社に任せることもできますが、納得できる形で手続きを進めるには、被害者自身で申請を行うのがおすすめです(被害者請求)
    弁護士にご相談いただければ、後遺障害等級認定の被害者請求を全面的にサポートいたします。

  3. (3)示談交渉・ADRでの解決を模索

    裁判は長期化しやすいため、できる限り裁判外での解決を模索する方が、被害者にとって負担が軽く済むことが多いです。

    示談交渉がまとまればそれに越したことはありませんが、難しければADR(裁判外紛争解決手続き)を利用することも考えられます。

    交通事故ADRを取り扱う機関

  4. (4)訴訟提起の準備

    交通事故の損害賠償請求を裁判で争う場合には、十分に事前準備を整えることが非常に大切です。

    (例)
    • 交通事故状況や損害についての証拠を集める
    • 損害賠償請求の主張構成を検討する
    • 和解可能なラインを検討する
    • 裁判所に提出する書面(訴状、証拠説明書など)を作成する
    など

    弁護士にご相談の上で、必要な準備を漏れなく整えた上で、万全の体制で訴訟に臨みましょう

4、交通事故の損害賠償請求をベリーベスト法律事務所に依頼するメリット

交通事故の損害賠償請求は、ベリーベスト法律事務所へのご依頼がおすすめです。

ベリーベスト法律事務所にご相談いただければ、交通事故の専門チームに所属する弁護士が、お客さまのために親身になってご対応いたします。経験豊富な弁護士のサポートにより、適正額の損害賠償を得られる可能性が高まります。

ベリーベスト法律事務所は全国各地にオフィスを構えているため、幅広い地域のお客さまからのご相談に対応可能です。初回相談は60分無料、交通事故については着手金も無料となっており、大変ご相談しやすい法律事務所となっています。

交通事故の被害に遭ってしまった方は、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。

5、まとめ

交通事故の損害賠償請求は、裁判によって争うこともできます。
示談交渉がまとまる見込みのない場合は、裁判で争うことを検討すべきでしょう。ただし、裁判には多大な時間とコストがかかるため、実際に裁判へ踏み切るかどうかは慎重に検討することをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所では、交通事故被害者からのご相談を随時受け付けております。交通事故裁判に関するご相談は、当事務所までお気軽にご連絡ください。

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この記事の監修者
外口 孝久
外口 孝久
プロフィール
外口 孝久
プロフィール
ベリーベスト法律事務所
パートナー弁護士
所属 : 第一東京弁護士会
弁護士会登録番号 : 49321

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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