弁護士費用特約(弁護士特約)とは? 交通事故被害時に使うべき理由

更新:2024年09月10日 公開:2016年11月21日
基礎知識
弁護士費用特約(弁護士特約)とは? 交通事故被害時に使うべき理由
あなたが利用している自動車保険や医療保険などに、弁護士費用特約(弁護士特約、弁護士費用保険などとも呼ばれます)をつけていますでしょうか。日本弁護士連合会(日弁連)が公表するデータによると、弁護士費用保険の販売件数は年々増加傾向にあり、令和元年度の次点で2807万件を超えました。

さらに、令和4年1月1日現在、日本弁護士連合会(日弁連)と協定を結んでいる保険会社・共済協同組合の数は20にのぼります[参考:日本弁護士連合会/弁護士費用保険(権利保護保険)について]。

これら全労済などの組合や各種損害保険株式会社などが提供している任意保険では、「弁護士費用特約」(弁護士費用保険)を付けられるため、多くの方が特約を付けておられると考えられます。

本コラムでは、すでに弁護士費用特約に加入している方や、加入するかしないかについてお悩みの方にむけて、弁護士費用特約の概要や使い方について解説します。弁護士費用特約を適切に使えば、事故後の示談交渉において大きな金銭的メリットを得ることができます。ぜひご活用ください。
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弁護士費用特約を利用されてご依頼となった場合には、特約から1時間1万1千円(税込)の相談料を頂戴いたしますが、お客様のご負担はございません。

1、弁護士費用特約とは?

弁護士費用特約とは、交通事故被害者になったときや、日常生活で弁護士への相談や依頼が必要となったとき、その費用を保険会社が補償してくれる特約です。たとえば交通事故に遭ってしまった場合、被害者は加害者に対して損害賠償請求をすることができますが、その際、弁護士に相談することを検討される方も多いのではないでしょうか。

しかし、実際に弁護士に依頼をするとなると、その費用は被害者自らが負担しなければならず、それは決して安いものではありません。そのため、被害者の中にはその費用を支払ってまで弁護士に依頼するか悩まれる方もいます。

そんなとき役に立つのがこの弁護士費用特約です。自転車保険や医療保険などの任意保険と一緒にこの特約に加入していれば、弁護士に相談・依頼をする際の費用を保険会社が負担してくれるため、自己負担金0円(あなたの持ち出しは無料)で弁護士に依頼できるケースがほとんどなのです。ただし、実際に事故被害にあったとしても、ご自分が加入している保険に弁護士費用特約を付けていたことまで思い至らず、弁護士への相談をあきらめてしまうというケースも多々あるようです。まずはご自身が加入されている保険の内容を確認してみてはいかがでしょうか。

2、弁護士費用特約が使える場合と使えない場合

(1)弁護士費用特約が役に立つケース

契約者が100%加害者ではない事故

結論からいえば、特約が使えない場合はほぼありません。

保険約款を確認していただければわかりますが、契約者の過失割合が0%の場合はもちろんのこと、たとえ99%でも、相手の1%分の責任を追及するために弁護士へ依頼するのであれば、弁護士費用特約を利用することができます。

物損事故

物損事故でも特約を利用することができます。

物損事故の場合、示談金がそこまで高くならないため、弁護士費用の方がかかってしまい、弁護士に依頼するメリットがない場合が多いといえます。

しかし、特約に加入していれば、弁護士費用の心配をすることなく弁護士に依頼をすることできます。

相手が任意無保険

相手が任意保険に加入していない場合、その相手は自動車保険の保険料さえ支払えない経済状態であったり、そもそも被害者に損害賠償をする気がなかったりすることが多いでしょうから、満足な損害賠償を得ることができるかわかりません。そのため、弁護士費用を自ら支払って弁護士に依頼をしても、費用倒れになる可能性が高いといえます。

しかし、特約に加入していれば費用倒れになるリスクを回避することができます。

(2)加入していなければ弁護士費用特約は使えない

この特約は任意保険とはあくまで別物ですので、別途契約をしていない限り、特約は利用できません。

また、仮に特約に加入していても、事故の状況によっては特約を利用できない場合があります。たとえば、契約者本人の故意・重過失が原因で損害が発生した場合です。具体的には、無免許運転や酒気帯び運転、また、犯罪行為の結果、事故が発生した場合などです。また、自動車事故でない場合や台風や洪水などの自然災害により発生した被害事故の場合もこの特約を利用することができません。

3、契約者以外でも弁護士費用特約が使える場合

実は、この特約は契約者以外の方が被害に遭われた場合でも使えることがあります。
具体的には、以下の6つのどれかに該当すれば利用することができます。
なお、保険が適用される方の範囲は、契約者(正式には「記名被保険者」といいます。)を基準に考えます。

  1. 契約者
  2. 1の配偶者(内縁関係でも可)
  3. 2または2の同居の親族
  4. 1または2の別居の未婚の子
  5. 契約自動車に搭乗中の者
  6. 1~2に該当しない者で契約自動車の所有者

なお、保険会社によって若干の違いがありますので、詳しくは保険約款をご確認ください。

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4、弁護士費用特約を使うベストなタイミングは?

では、特約が使えることがわかった場合、どのような場合にこの特約を使い、弁護士に依頼するのがよいのでしょうか。一般的には、以下のような場合に弁護士への依頼を検討されるとよいでしょう。

  • 保険会社から提示された示談金額が妥当かどうか知りたい
  • 慰謝料の金額をアップさせたい
  • 適切な後遺障害等級認定を受けたい
  • 後遺障害等級認定に納得ができないので異議申立てをしたい
  • 保険会社との窓口になってほしい

5、弁護士費用特約を利用して弁護士に依頼する場合の流れ

(1)弁護士を探す

まずは弁護士を探すところから始めます。探す際には必ず交通事故を得意としている弁護士を探してください。

というのも、交通事故の分野は法律だけでなく医学や保険の知識が必要になり、非常に専門性が高いといえます。そのため、必ずその道に精通している弁護士に依頼すべきです。

具体的な方法としては、交通事故事件を取り扱っている弁護士・法律事務所のホームページを探すのが一番簡単ですが、より詳しいことが知りたいのであれば、弁護士・法律事務所が出版している交通事故に関する書籍を参考にするのもよいでしょう。

(2)保険会社に特約を使う旨を伝える

弁護士が決まったら、保険会社の担当者に連絡し、特約を使って弁護士に依頼する旨を伝えましょう。その際、依頼する弁護士の名前、法律事務所名、電話番号等を伝えてください。また、依頼する弁護士にも保険会社の担当者と電話番号を伝えてください。

(3)弁護士の変更は可能

この弁護士なら大丈夫だと思って依頼したのに、その弁護士が頼りなかったり、実は交通事故の問題に詳しくなかったり、という場合も考えられます。
そうした場合、途中で弁護士を変更することが可能です。しかし、変更する際には事前に保険会社へ連絡しましょう。
ただし、すでに支払った着手金などは返還されません。

6、弁護士費用特約を使って弁護士に依頼するメリット

(1)弁護士費用を気にせず依頼できる

通常、弁護士に交通事故事件を依頼する場合、着手金や報酬金などの弁護士費用がかかります。しかし、この特約があれば、代わりに保険会社が支払ってくれるため、そうした費用をご自身が負担する必要がありません。そのため、費用の点を気にせずに弁護士に事件を依頼できるのです。

また、事件を依頼しようと思っても、依頼するとかえって費用がかさんでしまうのではないかと思い、依頼をためらってしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、心配はご無用です。先ほどと同様、費用は保険会社が負担してくれますので、費用倒れの心配がないのです。

そして、弁護士に依頼すれば、加害者が加入している保険会社とのやりとりはすべて弁護士が代理して行ってくれますので、ご自身で交渉をしたり、書面を作成したりするなどの煩わしさから解放されます。

なお、特約があっても費用を無制限に保証してくれるわけではありません。保険会社にもよりますが、通常、300万円までの費用を負担してくれます。もし、最終的に300万円を超える費用がかかる場合(たとえば、常時介護が必要な重度の後遺障害の場合や死亡事故の場合など高額請求になりそうなケース)には、その部分についてはご自身で負担する必要があります。事前に依頼する弁護士に確認しておくとよいでしょう。

(2)賠償額が増額し、かつ早期解決につながる

特約を使って弁護士に依頼をすれば、賠償額の増額が期待できます。

弁護士に依頼せず、自らが保険会社と交渉をする場合、保険会社は自社の内部基準(この基準を「任意保険基準」といいます。)に従って慰謝料等を算定し、賠償額の提示をしてきますが、この任意保険基準は弁護士が交渉する際に使用する裁判所基準よりも大幅に金額が小さいのです。

しかし、弁護士が保険会社と交渉を行うと、交渉が決裂した場合に裁判になることが予想されるので、保険会社も裁判の結果を見据えた金額を提示してきます。その結果、賠償額の増額が期待できるのです。

弁護士に依頼することによって得られる慰謝料の金額について、具体例を紹介します。たとえば、死亡慰謝料の金額には、自賠責基準と裁判所基準では、下記の表のように、数倍もの差があることを知っておきましょう。

死亡慰謝料表 死亡慰謝料表

(3)保険の等級は下がらない!

特約を利用した場合、車両保険を利用した場合と同様に等級が下がり、翌年の保険料が余計にかかると思っている方もいるでしょう。

しかし、特約を利用しても、保険の等級は下がらないのが一般的です。そのため、保険料の値上がりを気にせず、必要があれば気軽に特約を利用することができます。

(4)使っても何ら損をしない!

等級の話とも関係しますが、中には特約を使うともったいないと思っている方もいるかもしれません。しかし、弁護士費用特約は、通常の保険のように、今年保険を使わなかったから来年1等級上がるといったことはありません。今回の事故で特約を使わなかったからその分が来年に持ち越されることもないです。

そのため、せっかく特約があるのに使わないのはむしろもったいないのです。

(5)依頼する弁護士は自由に選べる

特約を使って弁護士に依頼をしようと保険会社にその旨を伝えたら、保険会社から弁護士の紹介を受けることがあります。

そうすると、特約を使う際には保険会社が紹介してくれる弁護士でないとダメなのでは?と勘違いしてしまいそうですが、どの弁護士に依頼をするのかは自由に決めることができます。

保険約款を確認していただきたいのですが、特約を使う場合は保険会社指定の弁護士でないといけない旨は書かれていないはずです。
ご自身が納得して選んだ弁護士に依頼することをおすすめします。

7、弁護士費用特約はいくら?

特約を任意保険に付帯させるには、その分の保険料を保険会社に支払う必要があります。

前述のように、特約はそれ自体単独では存在せず、任意保険などとセットになっています。そして、多くの保険会社では、付帯させるかどうかを契約者が任意に決めることができます。

もし、自動車保険に加えて特約も契約しようとすると、付帯させない場合よりも年間1000円から2000円程度保険料がかかります。

もちろん弁護士に依頼した場合にかかる費用は弁護士によって異なりますが、もしものときのことを考えれば、特約を付けておいても損はないのではないでしょうか。

8、まとめ

交通事故の被害にあってしまうと、場合によってはこれまでの人生から何もかもが一変してしまうことがあります。そのような大きなストレスを受けている中で、ご自身で加害者側の保険会社の担当者と交渉を続けることは、さらなる負担となることでしょう。弁護士費用特約に加入していれば、弁護士への依頼を自身の負担なく行うことが可能です。しかも、自動車保険の等級にも影響しません。

弁護士を依頼することによって、交渉の段階から弁護士に対応を任せられるだけでなく、自賠責基準よりも大きな金額の賠償金を受け取ることができます。まずは、医療スタッフと連携した対応を行える、ベリーベスト法律事務所の弁護士にご相談ください。あなたが治療に専念したうえで、適切な損害賠償を受けられるよう、力を尽くします。

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この記事の監修者
外口 孝久
外口 孝久
プロフィール
外口 孝久
プロフィール
ベリーベスト法律事務所
パートナー弁護士
所属 : 第一東京弁護士会
弁護士会登録番号 : 49321

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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