意識不明の重体になった被害者のご家族へ|今後の流れと弁護士の役割

更新:2025年12月17日 公開:2025年12月17日
基礎知識
意識不明の重体になった被害者のご家族へ|今後の流れと弁護士の役割
交通事故によりご家族が突然、意識不明の重体となった場合、残されたご家族には大きな不安と混乱が押し寄せます。「このあと、どうすればいいのか」「治療や介護はどうなるのか」「損害賠償の請求は可能なのか」などの疑問を抱えながらも、日々の看病や手続きに追われ、心身ともに限界を感じている方も少なくないでしょう。

しかし、つらい状況であっても本人が適切な治療を受けつつも家族の今後の生活を安定させるためには、適切な賠償金の支払いを受けることが非常に重要なカギを握るといっても過言ではありません。

本コラムでは、意識不明の重体になったときにご家族が今すぐに取るべき行動や適切な損害賠償請求の方法、弁護士に相談すべき理由までベリーベスト法律事務所 交通事故専門チームの弁護士が解説します。

1、ご家族が意識不明の重体になったとき知っておくべきこと

ご家族が突然、交通事故で「意識不明の重体」となったとき、何が起きているのか、今後どうなるのか、不安でいっぱいになると思います。以下では、「意識不明の重体」とはどのような状態か、今後の流れや後遺障害についてわかりやすく説明します。

  1. (1)意識不明の重体とは? 医学と法律上の基礎知識

    「意識不明の重体」とは、外傷や病気などによって、脳がダメージを受けることで意識を失い、生命の危機に瀕している状態をいいます。

    医学の分野では、「意識不明」「重体」とは言わずに、こうした状態を「昏睡(こんすい)状態」や「最小意識状態」と呼びます。「昏睡」は、まったく反応が見られない状態、「最小意識状態」は、意識が部分的に保たれ、目を開けたり、かすかな反応があったりする状態を指します。これらの状態は、今後の治療方針を検討していくうえでも重要な指標になるでしょう。

    一方、法律の分野では、治療が終わったとしても意識がない、動けないといった状態から回復しないと医師に判断された場合は、「後遺障害」として扱われます。後遺障害は、今後の生活に支障が出るほどのけがや障害が残ったときに認められ、損害賠償や保険の支払いに大きく関係してきます。

  2. (2)治療の流れと残りうる後遺障害

    事故後は、まず命を助けるために、緊急手術やICU(集中治療室)での治療が行われます。治療の結果、数時間以内に意識が回復すれば、後遺症が生じず日常生活に復帰できることもあります。

    他方で、意識不明の重体が6時間以上続いてしまうと、脳の損傷が深刻である可能性があります。結果、意識が戻らない、または意識が戻っても重篤な後遺症が生じることは少なくありません。

    意識不明の重体になった場合に残りうる後遺障害としては、主に以下のようなものが挙げられます。

    • 高次脳機能障害:記憶障害、注意障害、遂行機能障害など認知機能の低下を伴う障害
    • 遷延性意識障害:いわゆる植物状態と呼ばれる状態
    • 麻痺:身体の一部が動かせなくなる障害
    • 外傷性てんかん:脳の損傷が原因で生じるけいれんや意識変容などの反復性発作
  3. (3)あなたご自身の心身ケアも重要

    ご家族が意識不明の重体と呼ばれる状態にある場合、精神的な負担が大きくなることは間違いありません。そのうえ、付き添い看護や入院等の諸手続き、ご家族の学校や職場、さらには相手方の保険会社との対応など、あなた自身も休む暇もなくなりがちです。

    しかし、看病を続けるためには、支える側の心と体も健康であることが大切です。無理を続けていると、体調を崩し、心が折れてしまいかねません。誰かに話を聞いてもらうだけでも、気持ちが少し楽になることがあります。

    病院には医療ソーシャルワーカーなど、家族を支援する専門のスタッフがいるケースがほとんどです。遠慮せずに相談してみてください。

    また、実務的かつ専門的なやり取りが伴う保険会社との対応については弁護士に一任してしまい、少しでもあなた自身の負担を軽減する方法も検討してください。

2、事故直後からご家族がとるべき具体的行動

ご家族が突然、交通事故で意識不明の重体になった場合、ただ病院で回復を待つだけではなく、のちの損害賠償請求に備えた準備が重要になります。以下では、事故直後からご家族ができる具体的な行動について、段階ごとにわかりやすく説明します。

  1. (1)事故直後|刑事記録の確保、証拠の保全

    交通事故直後は、事故現場の状況を証拠に残すこと(証拠保全)が重要です。

    具体的には、事故現場の状況を写真や動画で記録し、目撃者がいる場合には連絡先を交換しておくことで後日協力を頼むことができます。

    また、交通事故現場の状況や当事者、目撃者の供述内容については、実況見分調書や供述調書にまとめられています。そのため、事故状況を立証する証拠として刑事記録を入手しておきましょう。

    このような刑事記録は、検察庁に開示請求をすることで入手可能です。しかし、加害者が不起訴になった場合は実況見分調書等の客観的証拠しか開示されません。その場合は弁護士に相談してください。

  2. (2)治療中|医師とのコミュニケーションと日々の記録

    治療が始まったら、主治医と定期的に連絡を取り、診断内容や回復の見通しについて確認しておきましょう。医師から聞いたことは、ノートやスマホのメモに記録しておくと、今後の手続きに役立ちます。

    また、被害者であるご家族の様子(たとえば、意識の有無、反応の有無、表情の変化など)を日々メモしておくことで、症状の経過を示す資料になります。

    これらの記録は、後遺障害等級の認定や介護の必要性を説明するうえでも重要な証拠となりえます。

  3. (3)保険会社とのやり取りにおける注意点

    交通事故の治療費は、加害者側の保険会社が病院に直接支払ってくれることが多いです。それでも、意識不明の重体が継続していると、「これ以上回復する見込みはない」と判断し、保険会社が治療費の打ち切りを打診してくることがあります。

    しかし、治療の終了時期を判断するのは保険会社ではなく治療を担当する医師です。保険会社側から治療費の打ち切りを打診されたとしても、医師の判断をもとに治療を続けることが非常に大切なポイントとなります。

3、適切な損害賠償を受ける方法と必要書類

交通事故によってご家族が意識不明の重体となった場合、将来的に高額な治療費や介護費用がかかることがあります。このような費用は加害者(保険会社)に対して損害賠償請求することができます。以下では、意識不明の重体になったときに請求できる損害項目や計算方法、必要な書類について説明します。

  1. (1)被害者とご家族が請求できる賠償項目一覧

    交通事故で意識不明の重体になった場合、被害者とそのご家族は損害賠償請求することができます。

    請求できる損害項目は、概ね以下のとおりです。

    • 治療費(手術代、入院費、リハビリ費など)
    • 入院中の雑費(オムツ代、日用品など)
    • 付添看護費(家族が医師の指示で病院に付き添った場合の看護料)
    • 将来の治療費(生命維持や症状の悪化を防ぐための費用)
    • 将来の介護費(後遺障害が残ったときの介護にかかるお金)
    • 休業損害(被害者が働けなくなったことによる損失)
    • 後遺障害逸失利益(後遺障害で将来働けなくなったことで得られなくなった収入)
    • 入通院慰謝料(けがをしたことによる精神的苦痛に対する補償)
    • 後遺障害慰謝料(後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対する補償)
    • 家族の慰謝料(家族が受けた精神的苦痛に対する補償)
  2. (2)後遺障害逸失利益や介護費などの計算方法と実際の事例

    意識不明の重体になった場合の損害項目のうち、特に高額になるのが「後遺障害逸失利益」と「将来の介護費」です。これらは、被害者やご家族の将来に関わる重要な補償です。しっかりと理解しておく必要があります。

    ① 後遺障害逸失利益の計算方法
    後遺障害逸失利益とは、本来であれば将来得られるはずだった収入が、後遺障害によって得られなくなったことへの補償です。

    後遺障害逸失利益の計算式は、以下のとおりです。

    【基礎収入×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数】
    • 基礎収入:事故前の年収や賃金センサスをもとに決定
    • 労働能力喪失率:後遺障害等級に応じた割合
    • 就労可能年数:原則として症状固定時から67歳までの期間
    • ライプニッツ係数:将来の収入を現在価値に換算するための数値

    たとえば、年収600万円の方が後遺障害等級1級の障害を負い、30年間働けなくなったとすると、逸失利益は1億円以上になる可能性があります。

    ② 将来の介護費の計算方法
    将来の介護費は、重度の後遺障害により自力で生活できず、家族や介護士の助けが必要になった場合の費用です。将来介護費の計算式は、以下のとおりです。

    【1日あたりの介護費×365日×平均余命に対応するライプニッツ係数】

    たとえば、被害者が40歳(平均余命年数41年)で1日8000円の介護費が必要な場合、将来介護費は、6800万円以上になります。


    参考事例
    交通事故で高次脳機能障害となった男性のケース

    神奈川県に住む70代の自営業男性(Gさん)は、原付を運転中に交差点で右折してきたバンと衝突し、一時意識不明の重体となりました。Gさんは重症頭部外傷などを負い、一命はとりとめたものの、高次脳機能障害により意思の疎通が困難な状態になってしまいました。また、介助が常に必要となり、将来的な介護・生活への不安から、ご家族が当事務所へ相談されました。

    当事務所の弁護士は、医師との連携や後遺障害等級1級1号の認定、成年後見開始の申立て、さらには訴訟提起を含めた全面的なサポートを行いました。その結果、過失割合も含めほぼ満額の和解を獲得し、最終的に6410万2396円の賠償金が支払われました。
  3. (3)保存しておくべき書類

    将来的に損害賠償を請求するには、実際に何にどのような理由でどれぐらい費用がかかったのかがわかる書類を残さなければなりません。

    具体的には、以下のような書類をきちんと保管しておく必要があります。

    • 病院の領収書、明細書
    • 診断書、診療報酬明細書
    • 介護記録、訪問看護記録
    • ご家族の付き添い日誌や出勤簿
    • 保険会社とのやり取り(メール、書類)
    • 実況見分調書や事故報告書
    • 医師の意見書、後遺障害診断書

    これらの書類は、損害の存在や程度を証明するために不可欠です。特に、後遺障害等級の認定では、医師の記録が大きなカギを握ります。書類の整理が難しい場合は、弁護士に相談するとスムーズです。

4、事故直後から弁護士に相談・依頼しておくべき理由

ご家族が突然の事故で意識不明の重体になったとき、残されたご家族だけですべて対応するのは、とても大きな負担になります。以下では、事故直後から弁護士に相談・依頼しておくことで得られる3つの大きなメリットをご紹介します。

  1. (1)保険会社対応を弁護士に任せて心の負担を軽減

    被害者が意識不明の重体になると、保険会社との対応は、残されたご家族の方が行わなければなりません。しかし、本人の入院の付き添い・介護、さらにご自身も家事や育児、仕事などをしながら保険会社との交渉もしなければならないのは大きな負担となることは間違いないでしょう。

    このような場合、弁護士に依頼することで保険会社との対応をすべて弁護士に任せることができます。これによりご家族の心の負担を大きく減らすことができ、不利な条件を押し付けられる心配もありません。

  2. (2)適正な後遺障害等級の獲得を目指せる

    後遺障害等級は、将来受け取れる損害賠償の金額を決める大切な基準です。しかし、実際の認定手続きはとても複雑で、保険会社が対応した場合、書類や医師の診断書の内容によっては、本来より低い等級しか認められないことがあります。

    弁護士は、等級認定に必要な医師の意見書や画像資料の内容をチェックし、適正な等級が得られるようにサポートすることができます。また、等級が不適切な場合は異議申立ても代行できますので、適正な等級が認められる可能性が高くなるでしょう。

  3. (3)介護費用や逸失利益など適切な損害賠償請求が可能

    意識不明の重体となった場合、今後の生活では介護費や治療費が長期にわたり必要になります。また、被害者本人が仕事に戻れなくなることで、将来得られたはずの収入(逸失利益)も失われてしまいます。

    こうした損害を正しく計算し、相手に請求するには、知識や経験が不可欠です。弁護士に依頼すれば、適切な金額を請求することができ裁判になった場合でも、ご家族に代わってしっかり主張してくれます。

    慰謝料算定ツール

5、まとめ

ご家族が交通事故で意識不明の重体になったとき、突然の出来事に戸惑い、どう対応すればよいのかわからなくなるのは当然です。まずは医師の説明をよく聞き、事故の記録や書類を丁寧に残しておくことが、今後の損害賠償や後遺障害の認定にとって重要な一歩となります。

意識不明の重体になった場合の賠償金は非常に高額になるケースがほとんどです。それだけ大変な事故に遭ってしまったわけですし、金銭だけではカバーできないと思われることでしょう。

しかし、だからこそ、適切な損害賠償金を請求できるよう、早い段階で弁護士に相談することが重要です。ご家族の心の負担を軽くし、将来への備えを整えるためにも、まずはベリーベスト法律事務所までご相談ください。交通事故専門チームの弁護士が、あなたのご家族の状況に適したサポートを行えるよう、力を尽くします。

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この記事の監修者
パートナー弁護士
弁護士会登録番号 : 49321

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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