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胸腹部の後遺障害

胸腹部の症状と治療法

人体の胸部に存在する臓器には、気管・食道・肺・心臓・胃・肝臓・大腸・小腸・すい臓・ひ臓・じん臓・尿管・膀胱などがあります。

心臓は、握りこぶしくらいの大きさの重さ200~300グラムの臓器であり、身体全体に血液を送り出すポンプとしての役割を果たしています。
肺は呼吸を司っている気管で、心臓を挟むように左右に位置し、気管を通って入ってきた空気から酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出する働きをしています。

このような、いわゆる胸腹部臓器と呼ばれる臓器は、身体の中でそれぞれ代わりのない役目を果たしているわけですが、交通事故による外傷によって損傷し、下記のような後遺障害が残ってしまうことがあります。

胸腹部の後遺障害等級認定

等級 後遺障害
1級
2号
胸腹部臓器に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
2級
2号
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
3級
4号
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5級
3号
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
7級
5号
胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
7級
13号
両側の睾丸を失ったもの
9級
1号
胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
9級
16号
生殖器に著しい障害を残すもの
11級
10号
胸腹部臓器に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
13級
11号
胸腹部臓器の機能に障害を残すもの

後遺障害等級認定獲得のためのポイント

胸腹部臓器の障害としては、大まかに「呼吸器の障害」と、「循環器の障害」、「腹部臓器の障害」、「泌尿器の障害」、「生殖器の障害」に分かれます。
それぞれの障害に応じて認定の基準が存在しますので、下記に説明していきます。

呼吸器の障害

(1)原則的な検査方法

動脈血酸素分圧 動脈血炭酸ガス分圧
限界値範囲内
(37Torr~43Torr)
限界値範囲外
(37Torr以下、43Torr以上)
50Torr以下 常時介護:1級
随時介護:2級
その他:3級
50Torr~60Torr 5級

常時介護:1級
随時介護:2級
その他:3級

その他 :3級
随時介護:2級
常時介護:1級

60Torr~70Torr 9級 7級
70Torr以上 非該当 11級
  • ※動脈酸素分圧(PaO₂)・・・動脈血中の酸素分圧のこと。単位はTorr(mmHg)で、基準値は80~100Torr。換気・ガス交換・肺循環・呼吸中枢制御機能という4つの機能の結果として血液の中の酸素を供給できているかということを示す指標。
  • ※動脈血炭酸ガス分圧・(PaCO₂)・・動脈血中の炭酸ガス分圧のこと。血液の肺胞換気量を示し、35 ~ 45 Torr (mmHg)が正常値。

(2)例外的な検査方法

スパイロメトリーの結果 呼吸困難の程度
高度 中等度 軽度
%1秒量:
35以下または
%肺活量:
40以下

常時介護:1級
随時介護:2級
その他:3級

その他 :3級
随時介護:2級
常時介護:1級

7級 11級
%1秒量:
35~55または
%肺活量:
40~60
7級
%1秒量:
55~70または
%肺活量:
60~80
11級
  • ※スパイロメトリー:測定装置(スパイロメーター)を使用し、肺活量や換気量を調べる検査。
呼吸困難の
程度
状態
高度 呼吸困難のため、連続しておおむね100m以上歩けないもの
中等度 呼吸困難のため、平地でさえ健常者と同様には歩けないが、自分のペースでなら、1km程度の歩行が可能であるもの
軽度 呼吸困難のため、健常者と同様には階段の昇降ができないもの

(3)補足的な検査方法

(1)(2)の検査では障害等級に該当しないものの、呼吸機能の低下による呼吸困難が認められ、運動負荷試験の結果から明らかに呼吸機能に障害があると認められるときは、11級が認定されます。

運動負荷試験:漸増運動負荷試験、6分間・10分間等の歩行試験、シャトルウォーキングテスト等の時間内歩行試験、50m歩行試験等

循環器の障害

交通事故における後遺障害等級の考え方が労災の基準に倣っていることから、下記のような心臓機能が低下したものについても基準が存在しますが、過重労働等による心筋梗塞などによって心機能が悪化することがある労働災害の分野と比べて、一度の外力により発生する交通外傷によって心臓機能が低下することはほとんど考えられず、実際の事例は極めて少ないのが現実です。

心臓機能が低下したもの

等級 後遺障害
9級 おおむね6METsを超える強度の身体活動が制限されたもの
(例)平地を健康な人と同じ速度で歩くのは差し支えないものの、平地を急いで歩く、健康な人と同じ速度で階段を上がるという身体活動が制限されるもの
11級 おおむね8METsを超える強度の身体活動が制限されるもの
(例)平地を急いで歩く、健康な人と同じ速度で階段を上がるという身体活動に支障がないものの、それ以上激しいか、急激な身体活動が制限されるもの

METs(メッツ):安静座位の酸素摂取量 1METs(3.5ml/KG/min)の何倍の酸素摂取量にあたるかを示す単位で、運動・作業強度の単位として広く用いられる。

除細動器またはペースメーカを植え込んだもの

等級 後遺障害
7級 除細動器を植え込んだもの
9級 ペースメーカを植え込んだもの

心臓の弁を置換したもの

等級 後遺障害
9級 房室弁または大動脈弁を置換し、継続的に抗凝血薬療法を行うもの
11級 房室弁または大動脈弁を置換したもので、抗凝血薬療法を受けていないもの

大動脈に解離を残すもの

等級 後遺障害
11級 大動脈に偽腔開存型の解離を残すもの

胸腹部の障害

胸腹部の障害で特徴的なのは、労働能力の喪失を伴わなくても障害が残存したという事実だけで等級が認定されることがあるということです。例えば、ひ臓に関しては、なくても大きな支障はないといわれていますが、交通事故によりひ臓を失うと、それだけで13級が認定されます。

この臓器へのダメージそのものに対する認定に加えて、全身疲労や頭痛等で身体に及ぼす影響が大きいような場合には、より高次の等級が認定されることになります。

循環器の障害と同じく、臓器に応じて様々な検査方法が定められているため、順番に見ていきます。

①食道の障害

等級 後遺障害
9級 食道の狭窄による通過障害を残すもの
  • ※通過障害:「通過障害の自覚症状があること」+「消化管造影検査により、食道のさくによる造影剤のうっ滞が認められること」

②胃の障害

障害等級 消化吸収
障害
ダンピング
症候群
胃切除後
逆流性
食道炎
7級 あり あり あり
9級 あり あり なし
9級 あり なし あり
11級 あり なし なし
11級 なし あり なし
11級 なし なし あり
13級 噴門部または幽門部を含む胃の一部を亡失したもの

胃を失うと、胃酸・ペプシンの欠如または不足により、食べた物が消化されないまま長管に移動することなどにより消化吸収障害が生じることがあります。上記の表にある「消化吸収障害」とは次のいずれかに該当することをいいます。

  • 胃の全部を亡失したこと
  • 噴門部または幽門部を含む胃の一部を亡失し、低体重等(BMIが20以下であるもの/事故前から20以下であったものについては体重が10%以上減少したもの)が認められること

次に、「ダンピング症候群」とは、次のいずれにも該当することをいいます。

  • 胃の全部又は幽門部を含む胃の一部を亡失したこと
  • 食後30分以内に出現するめまい、起立不能等の早期ダンピング症候群に起因する症状または食後2時間後から3時間後に出現する全身脱力感、めまいなどの晩期ダンピング症候群に起因する症状が認められること

最後に、「胃切除後逆流性食道炎」とは、次のいずれにも該当するものをいいます。

  • 胃の全部又は幽門部を含む胃の一部を亡失したこと
  • 胸焼け、胸痛、嚥下困難等の胃切除後逆流性食道炎に起因する自覚症状があること
  • 内視鏡検査により食道にびらん、潰瘍等の胃切除後逆流性食道炎に起因する所見が認められること

③小腸および大腸の障害

小腸を大量に切除したもの
等級 後遺障害
9級 残存する空腸および回腸の長さが100cm以下となったもの。
11級 残存する空腸および回腸の長さが100cmを超え300cm未満となったものであって、消化吸収障害が認められるもの(低体重等が認められるものをいう)。
大腸を大量に切除したもの
等級 後遺障害
11級 腸の全てを切除するなど、大腸のほんどどを切除したもの。

④人工肛門を造設したもの

等級 後遺障害
5級 小腸または大腸の内容が漏出することにより、ストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じ、パウチ等の装着ができないもの
7級 人工肛門を造設したもので5級に該当しないもの

⑤小腸または大腸の皮膚瘻を残すもの

皮膚瘻とは、小腸や大腸の内容が皮膚に開口した腹孔から出てくる病態をいいます。要するに、小腸や大腸の障害により、消化されたものが肛門から排泄されるのではなく、お腹の皮膚から漏れ出てしまうことをいいます。

等級 後遺障害
5級 瘻孔から小腸または大腸の内容の全部または大部分が漏出するもので、パウチによる維持管理が困難なもの
7級
  • 瘻孔から小腸または大腸の内容の全部または大部分が漏出するもので、5級に該当しないもの
  • 瘻孔から漏出する小腸または大腸の内容がおおむね100ml/日以上であってパウチ等による維持管理が困難なもの
9級 瘻孔から漏出する小腸または大腸の内容がおおむね100ml/日以上のもので、7級に該当しないもの
11級 瘻孔から少量ではあるが明らかに小腸または大腸の内容が漏出する程度のもの

⑥小腸または大腸に狭窄を残すもの

等級 後遺障害
11級 小腸または大腸に狭窄を残すもの
  • ※立証方法
    小腸:レントゲンで小腸ケルクリングひだ像が認めらること。
    大腸:レントゲンで貯留した大量のガスにより結腸膨起像が相当区間認めらること。

⑦便秘を残すもの

等級 後遺障害
9級 用手摘便(便を手で掻き出している状態)を要するもの
11級 9級に該当しないもの

※「便秘」とは、次のいずれにも該当するものをいう。

  • 排便反射を支配する神経の損傷がMRI、CT等により確認できること
  • 排便回数が週2回以下の頻度であって、恒常的に硬便であることが認められること

小腸大腸等への直接のダメージによるものというよりも、せき髄等の中秋神経系の損傷により生じるものが対象となっている。

⑧便失禁を残すもの(大腸の障害)

等級 後遺障害
7級 完全便失禁
9級 常時おむつの装着が必要なもの
11級 常時おむつの装着は必要ないものの、明らかに便失禁があると認められるもの

⑨胆嚢の障害

胆嚢は肝臓の下にある小さな器官で、肝臓で作られる胆汁の濃縮・貯蔵を行っています。

等級 後遺障害
13級 胆嚢を失ったもの

⑩すい臓の障害

等級 後遺障害
9級 外分泌機能の障害と内分泌機能の障害の両方が認められるもの
11級 外分泌機能または内分泌機能の障害のいずれかが認められるもの
12級
or
14級
軽微なすい液瘻を残したために皮膚に疼痛等を生じるもの

※「外分泌機能の障害」とは、次のいずれにも該当するものをいう。

  • 上腹部痛、脂肪便、頻回の下痢等の外分泌機能の低下による症状が認められること
  • 次のいずれかに該当すること
    • すい臓を一部切除したこと
    • BT-PABA(PFD)試験で異常低値(70%未満)を示すこと
    • ふん便中キモトリプシン活性で異常低値(24U/g未満)を示すこと
    • アミラーゼまたはエスタラーゼの異常低値を認めるもの

※「内分泌機能の障害」とは、次のいずれにも該当するものをいう。

  • 異なる日に行った経口糖負荷試験によって、境界型または糖尿病型であることが2回以上確認されること
  • 空腹時血漿中のC-ペプチド(CPR)が0.5ng/ml以下(インスリン異常低値)であること
  • Ⅱ型糖尿病に該当しないこと

⑪脾臓の障害

等級 後遺障害
13級 脾臓を失ったもの

⑫腹壁瘢痕ヘルニア、腹壁ヘルニア、鼠径ヘルニアまたは内ヘルニアを残すもの

等級 後遺障害
9級 常時ヘルニアの脱出・膨隆が認められるもの、または立位をしたときヘルニア内容の脱出・膨隆が認められるもの
11級 重激な業務に従事した場合等腹圧が強くかかるときにヘルニア内容の脱出・膨隆が認められるもの

泌尿器科の障害

①腎臓の障害

GFRの値 31~50ml/分 51~70ml/分 71~90ml/分 71~90ml/分
腎臓を亡失(片側) 7級 9級 11級 13級
腎臓の亡失なし 9級 11級 13級 -
GFRの値 31~50ml/分
腎臓を亡失(片側) 7級
腎臓の亡失なし 9級
GFRの値 51~70ml/分
腎臓を亡失(片側) 9級
腎臓の亡失なし 11級
GFRの値 71~90ml/分
腎臓を亡失(片側) 11級
腎臓の亡失なし 13級
GFRの値 71~90ml/分
腎臓を亡失(片側) 13級
  • ※GFR:糸球体濾過値。糸球体の機能を検査するものであり、内因性クレアチニンクリアランスによって計測する。

②尿管・膀胱及び尿道の障害

尿路変更術を行ったもの

等級 後遺障害
5級 非尿禁制型尿路変更術を行ったもので、尿が漏出しストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じ、パッド等の装着ができないもの
7級 非尿禁制型尿路変更術を行ったもので、5級に該当しないもの
尿禁制型尿路変更術を行ったもので、禁制型尿リザボアの手術を行ったもの
9級 尿禁制型尿路変更術を行ったもの(禁制型尿リザボアおよび外尿道口形成術を除く)
11級 外尿道口形成術を行ったもの
  • ※尿禁制型尿路変更術:尿管S状結腸吻合術、禁制型尿リザボア(コックパウチ、インディアナパウチ等)、下部尿路再建術(人工膀胱)、外尿道口形成術、尿道カテーテル留置等
  • ※非尿禁制型尿路変更術:皮膚造瘻術及び回腸(結腸)導管

③排尿障害・蓄尿障害を残すもの

等級 後遺障害
9級 残尿が100ml以上のもの
11級 残尿が50~100ml未満であるもの
尿道狭窄のため、糸状プジーを必要とするもの
14級 尿道狭窄のため、「シャリエ式」尿道ブジー第20番がかろうじて通り、時々拡張術を行う必要のあるもの
7級 持続性尿失禁を残すもの
切迫性尿失禁または腹圧性尿失禁のため、終日パッド等を装着し、かつ、パッドをしばしば交換しなければならないもの
9級 切迫性尿失禁または腹圧性尿失禁のため、常時パッド等を装着しているが、パッドの交換までは要しないもの
11級
  • 切迫性尿失禁または腹圧性尿失禁のため、パッドの装着は要しないが下着が少し濡れるもの
  • 頻尿を残すもの

※「頻尿を残すもの」とは、次のいずれにも該当するものをいう

  • 器質的病変による膀胱容量の器質的な減少または膀胱若しくは尿道の支配神経の損傷が認められること
  • 日中8回以上の排尿が認められること
  • 多飲時の他の原因が認められないこと
  • ※持続性尿失禁:膀胱の括約筋機能が低下または欠如しているため、尿を膀胱内に蓄えることができず、常に尿道から尿が漏出している状態で、膀胱括約筋の損傷または支配神経の損傷により生じる
  • ※切迫性尿失禁:強い尿意に伴って不随意に尿が漏れる状態(尿意を感じてもトイレまで我慢できずに尿失禁が生じるもの)
  • ※腹圧性尿失禁:咳やくしゃみ等のきっかけにより急激に腹圧が上昇したときに尿が漏れる状態のこと

生殖器の障害

等級 後遺障害
7級 両側の睾丸を失ったもの
両側の卵巣を失ったもの
常態として精液中に精子が存在しないもの
常態として卵子が形成されないもの
9級 陰茎の大部分を欠損したもの(陰茎を膣に挿入することができないと認められるものに限る)
勃起障害を残すもの
射精障害を残すもの
膣口狭窄を残すもの(陰茎を膣に挿入することができないと認められるものに限る)
両側の卵管の閉鎖または癒着を残すもの、頚管に閉鎖を残すものまたは子宮を失ったもの(画像所見により、認められるものに限る)
11級 狭骨盤または比較的狭骨盤が認められるもの
13級 1側の睾丸を失ったもの(1側の睾丸の亡失に準ずべき程度の萎縮を含みます)
1側の卵巣を失ったもの
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