日弁連交通事故相談センターとは? 弁護士に無料相談する方法

「弁護士白書 2024年版」によると、令和5年度に日弁連交通事故相談センターへ寄せられた相談件数は3万8538件でした。令和3年度の相談件数は3万2538件、令和4年度は3万6758件となっており、交通事故問題の相談は年々増加しています。
本コラムでは、交通事故で弁護士に無料相談できる窓口や日弁連交通事故相談センターの利用方法などについて、ベリーベスト法律事務所 交通事故専門チームの弁護士が解説します。
1、交通事故で弁護士に無料相談できる場所一覧
交通事故にあった場合でも、弁護士への相談は必ずしも費用がかかるわけではありません。いくつかの窓口では、無料で法律相談ができる体制が整っています。
以下では、主に利用されている無料相談窓口と、相談する際に必要となるものについて解説していきます。
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(1)日弁連交通事故相談センター
日弁連交通事故相談センターは、日本弁護士連合会が中心となって設立した公益財団法人です。被害者救済を目的として、交通事故に関する相談や示談のあっせんなどを無料で行っています。
フリーダイヤルでの通話料・相談料無料の簡易な相談のほか、北海道から沖縄まで全国150カ所以上もの相談所が設けられているため、地方でも面談による相談がしやすいでしょう。無料相談ができる具体的な場所は、日弁連交通事故相談センターの公式サイトから検索可能です。
日弁連交通事故相談センターの利用には、以下のようなメリットがあります。- 全国展開されており近くの相談所が探しやすい
- 相談には交通事故の取り扱い経験が豊富な弁護士が対応してくれる
- 示談あっせん制度など相談後の支援もある
対して、デメリットは以下のとおりです。
- 無料相談回数は、同一事故につき、1回30分で原則5回までと上限がある
- 状況によっては無料相談や示談あっせん制度を利用できない
交通事故に遭い困っているときは、まず日弁連交通事故相談センターの利用を検討してみましょう。
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(2)市区町村で実施されている法律相談や法テラス
市区町村では、住民向けに無料の法律相談日を設けているケースがあります。実施する日時や場所・相談できる内容などは自治体によって異なるため、居住している市区町村の担当課に確認しましょう。
また、法テラス(日本司法支援センター)は、無料法律相談や、民事法律扶助制度に基づき弁護士費用や実費を立て替える仕組みを採用している公的機関です。経済的に困窮している方を対象に、ひとつの問題につき3回まで弁護士による無料相談を受け付けています。
市区町村や法テラスの無料相談を利用するメリットは、以下のとおりです。- 居住地の身近な相談窓口として利用できる
- 法テラスには弁護士費用の立て替え制度もある(原則、分割払いで返済)
- 法テラスを通じて依頼すると弁護士費用が安くなる
一方で、以下のようなデメリットもあります。
- 相談する弁護士が交通事故問題に詳しくない可能性もある
- 法テラスの利用には資力基準(収入要件や資産要件)がある
- いずれも相談時間の制限がある(1回30分程度)
身近な弁護士に相談したい場合には市区町村、収入要件などを満たしている場合には法テラスの利用がおすすめです。
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(3)無料相談ができる法律事務所
最近では、初回相談を無料で提供している法律事務所も増えています。交通事故問題の経験豊富な弁護士であれば、示談交渉や後遺障害・保険会社対応など、全般的なアドバイスが受けられるでしょう。
法律事務所の無料相談を利用するメリットは、以下のとおりです。- 信頼できる弁護士を選んで相談できる
- 相談後に依頼したい場合もスムーズに移行できる
- 問題解決に向けた手続きや交渉を一任できる
対して、以下のようなデメリットも挙げられます。
- 無料相談は時間が限定されていることが多い
- 無料相談を実施していない法律事務所もある
ベリーベスト法律事務所でも、初回の交通事故に関する法律相談は60分無料で対応しております。平日は夜21時まで、土日祝日は夜18時まで電話受付を行っているため、お気軽にお問い合わせください。
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(4)事故について弁護士に無料相談するとき必要なもの
交通事故に関して弁護士に無料相談する際には、事前に準備しておくとスムーズに話が進められます。具体的には、以下のようなものを用意しておきましょう。
- 相談したいことや確認したいことをまとめたメモ
- 相手方の保険会社とのやりとりの記録
- 保険会社からの提案書(提示されている場合)
- 交通事故証明書
- 医療費明細書や医師の診断書
- 休業損害証明書や事故前の収入を証明する書類
- 簡単な事故状況図
これらの資料があることで、相談を受ける弁護士がより正確に状況を把握し、適切なアドバイスを提供できます。事前準備には手間がかかりますが、相談の質を高めるためにも大切です。
2、日弁連交通事故相談センターで相談する方法
日弁連交通事故相談センターでは、自動車事故に関するさまざまな悩みについて無料で相談できます。ただし、相談内容や方法には一定のルールがあるため注意が必要です。
以下では、日弁連交通事故相談センターで相談できる内容や、相談方法について解説していきます。
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(1)相談できる内容とできない内容
日弁連交通事故相談センターで相談できる主な内容は、以下のとおりです。
- そもそも賠償責任は発生するのか
- 過失割合はどの程度なのか
- 勤務中の事故にどのように対応したらいいのか
- 加害者が保険に未加入だった場合にはどうすればいいのか
- 自身が受けた治療費などの損害をどのように請求すればいいのか
- 示談金額が適正なのか
相談できるのは、国内における自動車・二輪車事故の民事に関する問題に限られます。国外での交通事故や、刑事処分・行政処分に関する相談はできません。
同じ問題に対する相談回数は原則として5回までとなっており、上限を超えると受付を断られる可能性があります。また、相談できるのは「事故の当事者・同居の親族・四親等内の親族およびこれらに準ずる方」と決められています。すでに、弁護士に依頼している方も相談できません。 -
(2)相談は電話と面談のどちらかを選べる!
日弁連交通事故相談センターの相談方法には、「電話相談」と「面談相談」の2種類があります。どちらも無料で利用可能ですが、それぞれ相談時間が異なるため注意が必要です。
電話相談の番号は、「0120-078325(フリーダイヤル)」です。固定電話・携帯電話・公衆電話から利用する場合、通話料無料で相談できます。
フリーダイヤルが利用できない国際電話やIP電話から相談する場合は、公式サイトで相談先の番号を確認しましょう。なお、電話相談で相談できる時間は10分程度です。
電話では書類を直接見てもらうことができないため、事故状況や被害状況を把握してもらうのに時間がかかってしまいます。口頭での説明が難しい事故等、簡単な相談以外は、面談で相談することを検討しましょう。
面談の相談時間は、1回につき30分程度です。相談自体は無料ですが、相談所に出向く際の交通費は自己負担となります。 -
(3)相談ができる時間と制限
日弁連交通事故相談センターの電話相談の受付時間は、月曜日〜金曜日(祝日を除く)の10:00〜19:00です。
面談相談の受付時間は、利用する相談所によって異なります。電話予約のほかネット予約ができる相談所もあるため、詳しくは日弁連交通事故相談センターの公式サイトをご確認ください。
無料相談の制限は、ひとつの事案につき原則5回までとなっています。5回を超える無料相談は原則として対応してもらえないため注意が必要です。
3、日弁連交通事故相談センターで行われる示談あっせん・審査と流れ
日弁連交通事故相談センターでは、法律相談だけでなく「示談あっせん」も無料で受けられます。
そもそも示談あっせんとはなにか、どのような場合にあっせんしてもらえるのかについて、以下で確認していきましょう。
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(1)示談あっせんとは?
「示談あっせん」とは、交通事故の当事者間で示談がまとまらない場合に、センター所属の弁護士を介して話し合う手続きです。全国46カ所に示談あっせん開催場所があるため、居住地に近い場所を利用しましょう。
示談あっせん手続きから示談成立までの一般的な流れは、以下のとおりです。- 日弁連交通事故相談センターでの面談相談
- 示談あっせんの申し込み
- 示談あっせんの実施(1回~3回。平均開催期日1.53回)
- 双方が合意すれば示談成立
示談あっせんは通常1回~3回程度実施され、指定された期日に呼び出しを受けます。当日は担当弁護士が当事者双方の話を別々で聞き、着地点を提示してくれます。示談が成立せず、打切り・不成立となった場合、相手方が日弁連交通事故相談センターと協定のある共済であれば審査に移行します。
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(2)示談あっせんが可能なケース
示談あっせんが可能なのは、自賠責保険または自賠責共済に加入が義務づけられている「自動車・二輪車」事故に限られます。
人損事故および人損をともなう物損事故の場合、すべてのケースで示談あっせんが可能です。自賠責保険や自賠責共済のみの加入のほか、無保険でも問題ありません。
物損のみの事故の場合は、損害賠償者が特定の任意保険・任意共済のいずれかに加入していれば示談あっせんが可能です。具体的には、任意保険の場合には、下記の保険会社のいずれかに加入している必要があります。- あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
- アクサ損害保険株式会社
- イーデザイン損害保険株式会社
- AIG損害保険株式会社
- SBI損害保険株式会社
- 共栄火災海上保険株式会社
- セコム損害保険株式会社
- セゾン自動車火災保険株式会社
- ソニー損害保険株式会社
- 損害保険ジャパン株式会社
- 大同火災海上保険株式会社
- 東京海上日動火災保険株式会社
- 日新火災海上保険株式会社
- 三井住友海上火災保険株式会社
- 三井ダイレクト損害保険株式会社
- 楽天損害保険株式会社
任意共済については、公式ホームページをご確認ください。
また、示談あっせんは、原則3回以内ですので、示談に十分熟した事案である必要があり、人損又は人損を伴う物損事案では、以下のケースが適しています。- 治療が終了しているか、または症状固定している
- 後遺症の有無や等級認定に争いがない
- 相手方から示談金について具体的な提示がある
これらのケースに当てはまらない場合、示談あっせんを申し込んでも、時期尚早として、示談あっせんに回付されない可能性があるため注意しましょう。
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(3)示談あっせんが受けられないケース
一方で、以下のようなケースに当てはまる場合には、示談あっせんが受けられません。
- 調停または訴訟の手続きを進めている場合
- 日弁連交通事故相談センター以外の機関にあっせんを申し込んでいる場合
- 不当な目的により申込みをしたものと認められる場合
- 当事者が権利または権限を有していないと認められる場合
- 非弁行為の疑いがある方からの申込みである場合
- そのほか、示談あっせんを行うにあたって適当でないと認められる場合
また、原則として自転車事故は示談あっせんの対象外となります。
4、交通事故の実績豊富な弁護士に個別相談したほうがよいケースは?
交通事故の相談は無料窓口でも可能ですが、交通事故の知識や実績が豊富な弁護士に個別で依頼したほうがよいケースもあります。弁護士への個別相談・依頼を検討すべきケースとして挙げられるのは、以下の4つのケースです。
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(1)後遺障害等級認定が必要なケース
交通事故によるケガが完治せず症状が残った場合は、後遺障害等級認定の申請を行います。1級から14級のいずれかの後遺障害等級が認められれば、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益といった損害賠償金が請求できます。
しかし、後遺障害等級を申請しても必ず認められるわけではありません。否認される場合や、想定よりも低い等級となる場合もあるでしょう。
後遺障害等級認定が必要なときは、弁護士へ相談することをおすすめします。交通事故問題の実績豊富な弁護士であれば、必要な検査の案内、診断書や所見のチェック等のサポートを受けることができますし、認定結果に納得ができない場合には異議申立てなどにより、法的な観点から再認定を目指せます。 -
(2)保険会社との対応窓口から書類作成まですべて任せたいケース
交通事故後は、保険会社との交渉だけでなく、診断書・損害明細・示談書など書類のやりとりが多数発生します。こうした手続きに不慣れな被害者にとっては、大きな負担となるケースもあるでしょう。
弁護士に依頼すれば、交渉対応から書類作成まで一括で任せられるため、精神的・時間的な負担が軽減され、治療に専念できます。
また、弁護士が関与することで保険会社側の対応が変わり、より妥当な示談条件が提示される可能性も高まります。 -
(3)重傷を負い適切な慰謝料を受け取りたいケース
交通事故で骨折や手術をともなう重傷を負った場合は、慰謝料が高額になる傾向にあります。適切な慰謝料を受け取るためには、弁護士への相談が特に重要です。
弁護士は過去の裁判例をもとにした基準(弁護士基準、裁判所基準と呼ばれています。)で慰謝料を算定できます。結果、保険会社から提示される金額より実態に即した慰謝料額での請求が可能です。
特に重傷を負ってしまったケースや、事故により後遺障害が残ってしまったケースは、交通事故の実績が豊富な弁護士に個別相談したほうがよいといえるでしょう。 -
(4)弁護士費用特約に加入しているケース
弁護士費用特約に加入している場合も、弁護士に個別で相談したほうがよいケースといえます。
弁護士費用特約とは、弁護士に相談・依頼する際の費用を、一定額まで保険会社が補償してくれる特約です。保険会社や契約内容によっても異なりますが、一般的に最大300万円程度まで弁護士費用が補償されます。
この特約が使えれば、多くのケースで自己負担なしで弁護士への依頼が可能です。特約の適用可否については、加入している任意自動車保険などの契約内容を確認しましょう。
5、まとめ
交通事故に遭った直後は、不安や混乱の中で多くの対応を求められるだけでなく、さまざまな判断が迫られます。特に、保険会社との交渉や損害賠償の金額については、法律知識がなければ適正な判断が難しい場面も多いでしょう。
日弁連交通事故相談センターをはじめ、各種の無料法律相談を活用することで、弁護士のサポートが受けられます。また、示談交渉が思うように進まない場合でも、示談あっせん制度によって解決できる可能性があります。
一方で、後遺障害や高額な損害賠償が関わるケースでは、交通事故の実績豊富な弁護士に個別で相談することがおすすめです。どの弁護士に相談すべきか悩んだ際は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所の無料相談の利用を検討してみてください。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。