交通事故の慰謝料に税金はかかる? 例外的に課税されるケースとは?

ただし、慰謝料の金額や支払われたお金の性質によっては税金がかかるケースもあります。そのため、どのようなケースで慰謝料に税金がかかるのかをしっかりと把握しておくことが大切です。
今回は、交通事故の慰謝料に税金がかかる4つのケースについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、交通事故の慰謝料には原則として税金はかからない
交通事故の慰謝料には税金がかかるのでしょうか。交通事故における慰謝料とは何かということに触れながら解説します。
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(1)交通事故の慰謝料とは?
交通事故の慰謝料とは、交通事故の被害者が被った精神的苦痛に対して支払われる賠償金のことをいいます。交通事故の慰謝料には、発生原因に応じて以下の3種類があります。
- 入通院慰謝料(傷害慰謝料):事故で怪我をしたことによる精神的苦痛を慰謝するために支払われる慰謝料
- 後遺障害慰謝料:事故で後遺障害が生じたことによる精神的苦痛を慰謝するために支払われる慰謝料
- 死亡慰謝料:事故で亡くなった被害者が被った精神的苦痛を慰謝するために支払われる慰謝料
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(2)原則として慰謝料などの賠償金には税金はかからない
交通事故の被害に遭うと上記のような慰謝料の他にも、被害者には以下のような損害が生じます。
- 治療費
- 通院交通費
- 入院雑費
- 休業損害
- 後遺障害逸失利益
- 死亡逸失利益
このような交通事故の賠償金については、原則として非課税とされていますので、税金が発生することはありません。
一般的に税金は、対象者が何らかの原因により利益を得た場合、その利益に対して課税されます。交通事故の被害者は、事故を原因として、加害者(保険会社)から慰謝料を含む賠償金の支払いを受けますので、一見すると利益が生じているようにもみえます。
しかし、交通事故の賠償金は、被害者に生じた損害を補填するものですので、被害者に利益が生じることはありません。すなわち、事故によりマイナスになった状態をゼロに戻すということですので、基本的に税金はかからないのです。
2、例外的に慰謝料に税金がかかる4つのケース
交通事故の慰謝料には、原則として税金はかかりませんが、以下の4つのケースについては、例外的に税金が発生することがあります。
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(1)過剰な慰謝料の支払いを受けたケース|贈与税
交通事故の慰謝料に税金がかからない理由には、損害の補填という性質があるからです。
しかし、慰謝料の相場を大きく上回る過剰な支払いを受けた場合には、損害の補填という性質を超えて、金銭の贈与があったものとみなされます。
そのため、慰謝料相場を上回る部分については、贈与があったものとして贈与税の課税対象となります。 -
(2)収入に代わる性質をもつ見舞金|所得税
交通事故より仕事を休むことになった場合、収入の減少という損害が生じます。このような損害については、休業損害により補填を受けることができます。
しかし、休業損害だけでは十分な補填を得られない場合、被害者の勤務先から見舞金名目で金銭の支払いを受けることがあります。このような見舞金は、収入の補填という性質を有していますので、収入と同様に所得税の課税対象となります。 -
(3)破損した事業用の物品への補填|所得税
交通事故により車両の損壊などが生じた場合の修理費についても、損害を補填するものになりますので原則として非課税となります。
しかし、破損した物品が事業用の資産の場合には、所得税の対象となる可能性がありますので注意が必要です。たとえば、トラックで商品を運送中に事故に遭い、積み荷が破損した場合、積み荷の弁償も受けることになります。しかし、商品は、本来であれば市場で売却して利益を得るはずのものでしたので、積み荷の弁償を受けると商品を売却したのと同様の効果が生じます。
そのため、このようなケースでは、損害の補填ではなく、事業用の収入を得たと評価できるため所得税が課税されます。 -
(4)被害者の慰謝料請求権の相続|相続税
交通事故により被害者が死亡した場合、被害者本人に代わって相続人である遺族が慰謝料の請求をしていくことになります。この場合、加害者(保険会社)から支払われる慰謝料は、原則として相続税の対象にはなりません。
しかし、被害者本人が賠償金を受け取ることが生存中に決まっていたものの、それを受け取る前に死亡してしまった場合、賠償金を受け取る権利が相続財産となります。このような被害者の慰謝料請求権を相続した相続人には、相続税が課税されます。
3、保険会社からの保険金にも、税金がかかるケースがある
慰謝料などの賠償金だけでなく、保険会社から支払われる保険金も税金の対象となることがあります。
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(1)課税される可能性のある保険金
保険会社から被害者に支払われる「賠償保険」、保険加入者の損害を補償する「傷害保険」、事故により破損した車両の修理費などを補償する「車両保険」から支払われる保険金については、いずれも利益ではなく損害の補填になりますので、税金はかかりません。
しかし、被保険者が死亡した場合の死亡保険金については、課税対象となりますので注意が必要です。ただし、死亡保険金のうち、相手方の過失割合の部分は非課税になります。これは相手方の過失割合の部分は、本来相手方が被害者に賠償すべき部分だからです。 -
(2)課税される税金の種類
保険会社から支払われる死亡保険金に課税される税金は、誰が保険料を負担していたかによって以下のように変わってきます。
① 相続税の対象となるケース
保険料を被保険者が負担し、相続人が死亡保険金を受け取った場合、相続税の課税対象となります。
② 贈与税の対象となるケース
保険料を被保険者及び保険金の受取人でない第三者が負担していた場合、死亡保険金を受け取った人に贈与税が課税されます。
③ 所得税の対象となるケース
保険料を負担していた人が自ら死亡保険金を受け取った場合、一時所得として所得税が課税されます。
4、交通事故の慰謝料に関するお悩みを弁護士に相談するメリット
交通事故の慰謝料に関するお悩みは、以下のようなメリットがありますので、弁護士に相談するのがおすすめです。
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(1)慰謝料に税金がかかるか判断できる
交通事故の慰謝料には、原則として税金はかかりませんが、一定の例外的なケースに該当する場合には、税金が発生する可能性があります。
税金が発生するケースであるかは、事案に即して実質的に判断しなければなりませんので、知識や経験がない方では正確な判断は困難だといえます。弁護士であれば、慰謝料に税金が発生するかどうかを正確に判断することができますので、自分で判断するのが不安だという方は、弁護士や税理士にご相談ください。 -
(2)慰謝料を増額できる可能性がある
交通事故の慰謝料の算定基準には、以下の3つの基準があります。
- 自賠責保険基準
- 任意保険基準
- 裁判所基準(弁護士基準)
慰謝料を被害者の主観に基づいて算定すると、被害者ごとで金額が大きく変動し、不公平な事態が生じます。そこで、慰謝料の算定を客観的に行うために、実務では、上記の算定基準に基づいて慰謝料の計算が行われています。
もっとも、具体的な慰謝料の金額は、どの算定基準を採用するかによって大きく変わってきます。通常は、「自賠責保険基準<任意保険基準<裁判所基準」という順で慰謝料の金額が大きくなりますので、裁判所基準が被害者にとって、もっとも有利な基準といえます。
ただし、裁判所基準を利用して示談交渉をするには弁護士への依頼が必須となります。保険会社から提示された慰謝料額に納得できないときは、弁護士が示談交渉をすることで増額できる可能性がありますので、まずは弁護士にご相談ください。 -
(3)保険会社との対応を任せることができる
交通事故の示談交渉は、被害者自身で相手方の保険会社の担当者と行わなければなりません。
しかし、日常的に交通事故事案を取り扱う保険会社の担当者と被害者とでは、知識や情報量に差がありますので、対等に交渉を進めるのは困難です。
また、保険会社から示談の提案があったとしても、被害者自身では適正な条件であるかどうか判断できず、不利な内容であることに気付かずに示談をしてしまうリスクがあります。
このようなリスクを回避するためにも、交通事故の示談交渉は弁護士に依頼するようにしましょう。弁護士は代理人として示談交渉を行うことができますので、保険会社と対等な立場で交渉を行い、不利な条件での示談を回避することにつながります。
万が一、交渉が決裂し訴訟に発展したとしても、引き続き弁護士に対応を依頼できるため、最後まで安心して任せることができます。
5、まとめ
交通事故における慰謝料などの賠償金には、原則として税金は発生しないため、高額な賠償金の支払いを受けたとしても、税金の心配をする必要はありません。ただし、例外的に税金が発生するケースもありますので、不安がある方はまずは弁護士や税理士に相談することをおすすめします。
交通事故の被害に遭ってお困りの方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。