交通事故で示談書を取り交わすときの注意点|記載事項とポイント
一度示談をしてしまうと、後から条件の変更はできませんので、示談書の内容を精査し慎重に対応することが重要です。示談成立の前に、示談書にはどのような事項が記載されるのか、何に注意すべきかをしっかりと理解しておきましょう。
今回は、交通事故の示談書の記載事項と示談書を取り交わす際の基礎知識、知っておくべき注意点も併せて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、交通事故の示談書とは?
交通事故の示談書とはどのようなものなのでしょうか。
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(1)示談書の役割
示談書とは、当事者間で紛争が解決した際に、お互いの合意内容を明らかにするために作成される書面です。示談書という名称以外にも「合意書」や「和解書」と呼ばれることもあります。
示談書には、合意内容を明らかにし、後日のトラブルを防ぐという役割があります。
交通事故では、過失割合や損害額(慰謝料、休業損害、逸失利益など)が争いになることが多いですが、示談書を作成しておけば、どのような内容で紛争が解決したのかを客観的に残すことができます。
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(2)交通事故の示談書は誰が用意するの?
交通事故の示談書は、誰が用意するかについて明確な決まりはありません。そのため、被害者または加害者のどちらでも示談書を作成することができます。
もっとも、加害者が任意保険に加入している場合には、実務上は、加害者の任意保険会社が示談書を作成して、被害者に送付するという扱いがとられています。そのため、通常のケースであれば、被害者が示談書を用意する必要はないでしょう。
2、示談書に記入する内容は? 基本の記載事項
交通事故の示談書には、どのような内容を記載するのでしょうか。以下では、交通事故の示談書の基本的な記載事項について説明します。
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(1)事故の表示
示談書には、示談の対象となる事故が表示されます。これは、どの事件に関する示談であるかを特定するために必要となる記載事項です。
事故の表示内容については、交通事故証明書に基づいて、以下の内容を記載します。
- 事故発生日時
- 事故発生場所
- 事故状況の詳細
- 氏名、住所、車両登録番号などの当事者情報
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(2)示談内容
当事者がどのような内容で示談をしたのかを記載します。交通事故による示談では、主に以下の内容が記載されます。
- 事故の過失割合
- 損害額
- 支払い方法
- 支払時期
なお、交通事故の損害には、治療費、通院交通費、休業損害、慰謝料(入通院慰謝料、後遺障害慰謝料)、逸失利益などがありますが、示談書では、その内訳が記載されることはなく、総額での表示になるのが一般的です。
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(3)清算条項
清算条項とは、示談書での合意内容以外に債権債務関係がないことを確認する条項です。これは、後日にトラブルが蒸し返されることを防ぐために設けられる条項で、清算条項がある場合には、示談成立後に後遺症が判明したとしても、原則として、後遺症に関する損害を請求することができなくなります。
なお、後遺障害が発生した場合に改めて協議したい場合はその旨を「留保条項」として記載します。
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(4)違約条項
万が一、示談金が支払われなかった場合に備え、違約金について取り決めをしておく項目です。相手側が個人である場合は重要ですが、保険会社の場合は支払いの遅れはほぼないため、必須条項ではありません。
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(5)当事者の記名・押印と日付の記入
示談書の記載内容に間違いがないことを確認した後に、当事者が記名・押印を行います。その際には、示談が成立した日付も記載します。
3、示談書を取り交わす際に、注意するべき点
交通事故の示談書を取り交わす際には、以下の点に注意が必要です。
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(1)損害が明確化してから作成する
示談書を取り交わして示談が成立してしまうと、原則として、示談内容を覆すことができなくなります。
事故後は特に痛みや痺れなどがなかったとしても、事故から時間が経ってから症状が出てくることがあります。そのため、交通事故の示談書を交わすタイミングとしては、損害が明確化した時点で行うべきでしょう。
また、物的損害(車の修理費など)と人身損害(怪我の治療費や慰謝料など)がある場合には、一般的には、物的損害の示談が先行して進められます。物的損害の示談に応じてしまうと、合意した過失割合が人身損害の示談にも適用されてしまうおそれがあります。
そのため、示談に応じる際には、賠償額だけでなく過失割合についても納得した上で応じるようにしましょう。
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(2)示談金の内訳に誤りがないかを確認する
交通事故の示談書には、賠償額が総額で表示されていますので、示談書の記載だけでは、どのような損害が含まれているのかがはっきりわかりません。「保険会社から提示された金額だから間違いないだろう」と示談に応じてしまうのは危険です。
保険会社から示談金の内訳を明らかにする書面を送ってもらい、ご自身でも金額が間違っていないかをチェックすることが大切です。万が一、金額に誤りがあったとしても、既に示談をしてしまった後では、示談のやり直しはできません。
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(3)清算条項を入れると後遺症が判明しても請求できない
交通事故の示談書には、一般的に「清算条項」という示談条項が設けられています。これは、後日の紛争の蒸し返しを防ぐための条項なので、当事者は、原則として、示談書に記載された内容以外にあとから発生した損害の請求をすることができなくなります。
そのため、後日、後遺症が生じる心配があるときは、留保条項を設けておくとよいでしょう。留保条項があれば、清算条項があったとしても、後遺症に関する損害の請求は可能になります。留保条項の例としては、「ただし、後遺障害が認められた場合は、その損害の支払いについて別途協議する」という内容です。
4、示談書について弁護士へ相談するメリット
相手の保険会社から示談書が届いたら、まずは弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に依頼するメリットは以下の通りです。
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(1)示談金額がアップする可能性がある
交通事故の慰謝料の算定基準には、以下の3種類の基準があります。
- 自賠責保険基準
- 任意保険基準
- 裁判所基準(弁護士基準)
このうち、もっとも高額な賠償金となる算定基準は、裁判所基準です。裁判所基準を利用して、保険会社との示談交渉を行うことができるのは、弁護士に依頼した場合に限られます。少しでも有利な条件で示談をしたい場合には、弁護士への依頼が必須となりますので、まずは、弁護士にご相談ください。
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(2)適切な後遺障害等級認定のサポートを受けられる
治療を続けても症状が完治せずに、何らかの後遺症が残ってしまうことがあります。そのような場合には、後遺障害等級認定の申請をすることで、症状に応じた等級認定を受けられる可能性があります。
後遺障害等級認定の申請手続きには、事前認定と被害者請求という2つの方法があります。
事前認定は保険会社が申請書の作成から申請まですべて行うため、被害者にとって負担の少ない手続きといえます。
しかし事前認定のデメリットとして、保険会社の提出資料を被害者が確認できず、等級認定に有利な資料が出ていない可能性があります。それゆえ、被害者自身が資料をそろえて申請をする被害者請求と比べると、適切な等級認定を受けられず、賠償金が少なくなるおそれがあります。
一方で、被害者請求は、被害者側が自ら申請手続きを行う方法です。
適切な後遺障害等級認定を受けるためには、被害者請求をおすすめします。交通事故案件に実績がある弁護士に依頼すれば、被害者請求で必要になる書類作成から申請手続きまですべて任せることができますので、事前認定と変わらない負担で適切な後遺障害等級認定を受けることが可能になります。 -
(3)示談書に不備がないかチェックしてもらえる
示談書には、さまざまな条項が設けられており、専門的な用語が用いられています。示談書の内容を十分に理解することなく示談に応じてしまうと、後日思わぬ不利益を受けることもあります。
交通事故の示談書が不備のない内容であるかをチェックするには、交通事故案件に実績がある弁護士のサポートが不可欠といえます。保険会社から示談書が届いたら、まずは弁護士に相談をして内容をチェックしてもらうとよいでしょう。
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(4)弁護士費用特約を利用すれば無料で依頼できる
弁護士に相談や依頼をしたくても、費用がネックになり躊躇してしまうケースもあるでしょう。そのような場合、まずはご自身の保険に弁護士費用特約が付いていないかを確認してみましょう。
弁護士費用特約があれば、弁護士への相談料や依頼した場合の弁護士費用などを保険会社が負担してくれますので、ほとんどの方が実質0円で弁護士を利用することが可能になります。特約を利用したとしても、保険料の負担が増加することはありませんのでご安心ください。
なお、弁護士費用特約に加入していなかったとしても、ベリーベスト法律事務所では、初回相談料無料、着手金無料の完全成功報酬制を採用しています。費用については、初回相談時に詳しく説明し、納得いただいた方のみ契約となりますので、安心してご利用いただけます。
5、まとめ
保険会社から示談書が届いた場合には、すぐにサインをしてしまうのではなく、一度弁護士に相談することをおすすめします。弁護士であれば示談書の内容に不備がないかチェックし、適切な示談金獲得のために保険会社との示談交渉を行います。
保険会社から示談書が届いたが、この内容で進めていいのか不安があるという方は、まずは、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。