おかまほられた(追突事故)の対処法は? 過失割合など弁護士が解説

交通事故でおかまをほられた場合、基本的には被害者に落ち度がないことが多いでしょう。そのため、どのような項目で賠償金が受け取れるのか、賠償金はどう受け取るのかなど、今後の補償について不安に思われるかもしれません。
そこで今回は、交通事故でおかまをほられた場合の対処法や、弁護士に相談するメリットなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、「おかまほられた」とは? 追突事故・もらい事故との違い
交通事故における「おかまほられた」とは、追突事故の被害に遭うことを意味します。
警察庁が公表する、交通事故の発生状況に関する統計資料によると、令和6年に発生した車両同士の事故は24万107件でした。そのうち、おかまほられた事故(追突事故)は8万5293件ともっとも多く、全体の約36%を占める割合です。
このように、おかまをほられることは、珍しくない事故といえるでしょう。
なお、「もらい事故」とは、被害者にまったく落ち度のない交通事故を指す言葉です。「おかまほられた」も、基本的にはもらい事故といえますが、少しでも落ち度があった場合は、もらい事故とはいえません。
2、おかまをほられた場合の過失割合・請求できる賠償金
以下では、おかまをほられた場合の過失割合と、請求できる賠償金について説明します。
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(1)おかまほられた場合の過失割合は基本的にはゼロ
おかまをほられた際の被害者の過失割合は、基本的にはゼロです。過失割合がなければ、被害者は加害者に対して、100%の賠償を求めることができます。
ただし、以下に示すとおり、おかまほられた被害者にも過失割合が生じるケースがあります。 -
(2)おかまほられても被害者に過失割合が生じるケース
事故でおかまをほられた被害者に過失割合が生じる例として、以下のようなものが挙げられます。
① 被害者による急ブレーキ
急ブレーキは本来、危険を回避するためのやむを得ない場合にのみ使える手段です。
そのため、急ブレーキが必要な状況ではないにもかかわらず、前方を走行する被害者が急ブレーキをかけたことで、後方を走行する加害者が追突したようなケースでは、被害者側に30%程度の過失が認定される可能性があります。
② 被害車両のブレーキランプの故障
ブレーキランプが故障したまま、適切に灯火しない状態で走行すると、灯火義務違反となります。また、ブレーキランプを灯火していないと、後続車両は前方車両がブレーキを踏んでいることを認識できず、追突のリスクが高くなります。
そのため、夜間に、被害車両のブレーキランプの故障によって、後方車両が被害車両の制動を確認することができず、追突事故が発生してしまったような場合には、被害者側に10~20%程度の過失が認定される可能性があるでしょう。
③ 駐停車禁止場所での事故
車を駐停車するときは、道路の左側に沿って交通の妨げにならないようにするのがルールです。また、以下のような場所については駐停車が禁止されています。- 坂の頂上付近
- トンネル内
- 勾配の急な坂
- 道路の曲がり角
被害者が、ルールに違反した駐停車をすることで追突事故が発生した場合、駐停車した場所に応じて、被害者側にもある程度の過失が認定される可能性があります。
④ 高速道路上での事故
高速道路には最低速度が定められており、また、原則として駐停車は禁止です。そのため、高速道路上で発生した追突事故については、一般道路の追突事故よりも被害者側の過失割合が大きくなります。
たとえば、ガス欠やエンジントラブルなど、被害者側の落ち度で高速道路上に駐停車した際に追突事故が発生した場合、被害者側も40%程度の過失を認定される可能性があります。 -
(3)おかまほられた事故で請求できる賠償金の項目
以下では、人身事故と物損事故の場合に分けて、おかまをほられたときに請求できる賠償金の項目を説明します。
① 人身事故の場合
おかまをほられてケガをすると、以下のような賠償金を請求することができます。- 治療費
- 通院交通費
- 休業損害
- 慰謝料(入通院慰謝料、後遺障害慰謝料)
- 後遺障害逸失利益
② 物損事故の場合
おかまをほられた際にケガをしなくても、物損事故として以下のような賠償金を請求することができます。- 車両の修理費
- 代車使用料
- 評価損
- レッカー費用
- 携行品の損害(スマートフォン、眼鏡など)
なお、人身事故・物損事故を問わず、適切な賠償金を請求するためには、知識と経験を有する弁護士のサポートが不可欠です。おかまほられたときは、まずは弁護士に相談しましょう。
3、賠償金が支払われるまでの流れと注意
以下では、おかまほられた際に賠償金が支払われるまでの流れを説明します。
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(1)保険会社から賠償額の案内が送付される
まず、保険会社と示談交渉を行います。示談交渉が始まるのは、以下のいずれかのタイミングになります。
- ケガが完治したタイミング
- 症状固定となり、後遺障害等級申請の手続きが終了したタイミング
示談交渉が始まる前は、事故により負ったケガの治療に専念するようにしましょう。
上記のいずれかのタイミングになると、保険会社から賠償額の案内が記載された書面が送付されます。保険会社から書面が届いたら、内容を精査するようにしてください。 -
(2)保険会社と示談交渉を行う
保険会社から提示された賠償金の額に納得ができないときは、保険会社との示談交渉により、賠償金の増額を求めていきます。
なお、被害者側の過失がゼロの場合、被害者が加入する保険会社は示談代行ができません。おかまをほられた場合、基本的には被害者に落ち度がないため、加害者側の保険会社との示談交渉は、被害者自身で行う必要があります。
自分で示談交渉するのに不安がある方は、弁護士に相談するようにしましょう。 -
(3)金額に納得できたら示談書に署名押印する
保険会社との示談交渉で納得できる金額が提示されたら、示談を行います。
基本的には、保険会社が作成した「免責証書」という書面に署名押印することで、示談成立となります。一度示談書に署名押印すると、あとから不利な条件だと考えなおしても、示談を撤回することはできません。しっかりと内容を確認してから署名押印するようにしてください。 -
(4)交渉が決裂したら訴訟提起する
保険会社から納得できる金額が提示されないときは、基本的には、裁判所に訴訟を提起することになります。
訴訟手続きは専門的かつ複雑なので、自分ひとりで対応するのは非常に難しいといえます。そのため、交渉が決裂したときは、弁護士に対応を任せるのがおすすめです。
4、おかまほられて被害に遭ったら、弁護士に相談を
おかまほられたときは、まず弁護士に相談しましょう。弁護士に相談するメリットを4つ紹介します。
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(1)過失ゼロの事案では保険会社は示談代行ができない
おかまをほられた場合、被害者側の過失は基本的にはゼロです。過失がゼロだと、被害者に、加害者への賠償義務が発生しません。そうすると、被害者側の保険会社が賠償を支払うこともなく、被害者側の保険会社は事故と無関係の立場になります。そのため、過失がゼロの事故の場合、被害者側の保険会社は、被害者に代わって、示談を代行することができません。
被害者自身で加害者側の保険会社と示談交渉を行うのは、手間がかかります。また、知識や経験が乏しい方では、不利な条件で示談をしてしまうリスクもあるでしょう。
そのようなリスクを回避し、負担を軽減するためは、弁護士に示談交渉を任せるのがおすすめです。弁護士であれば、保険会社との示談交渉を代行できるため、適切な条件で示談できる可能性が高まるでしょう。 -
(2)後遺障害等級認定のサポートができる
おかまをほられたことで負ったケガが完治せず、何らかの後遺障害が残存してしまったときは、後遺障害等級認定の申請を行うことができます。
後遺障害等級認定を受けることができれば、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を請求できるため、損害額を大幅に増額できるかもしれません。しかし、後遺障害等級認定の手続きは基本的に書面審査のため、提出する書類によっては認定等級が変わったり、認定を受けられなかったりすることもあるでしょう。
適正な後遺障害等級認定を受けるには、専門家である弁護士のサポートが不可欠です。治療段階から弁護士に依頼することで、審査に適切な書類についてのアドバイスなどを受けられます。 -
(3)慰謝料を増額できる可能性がある
交通事故でケガを負った際には、慰謝料を請求できる可能性があります。交通事故で慰謝料を請求したい場合、以下の3つのうちいずれかの基準をもとに、金額を算定します。
- 自賠責保険基準
- 任意保険基準
- 裁判所基準(弁護士基準)
慰謝料の金額は、「自賠責保険基準≦任意保険基準<裁判所基準」の順で大きくなり、裁判所基準がもっとも高額です。
加害者が任意保険に加入していた場合、保険会社からは任意保険基準で慰謝料を提示されます。任意保険基準による金額に納得できない場合は、裁判所基準で計算をした慰謝料を請求する必要があります。
示談交渉で裁判所基準を用いることができるのは、基本的には、弁護士が代理人として交渉をする場合に限られるため、慰謝料を増額したい方は、弁護士への依頼が不可欠です。 -
(4)弁護士に相談する流れや持ち物
法律事務所は、予約制を取っていることが多いでしょう。事前に法律事務所に連絡をして、相談の予約を取るようにしてください。
相談時間内で、相談の内容をなるべく的確に弁護士へ伝えるためにも、事前に以下のような準備をしておくようにしましょう。- 交通事故に関連する資料を整理しておく
- 事故から現在までの経緯を時系列でまとめる
5、まとめ
交通事故でおかまほられたら、基本的には被害者側の過失はゼロのため、保険会社の示談代行を利用することはできません。しかし、被害者自身で示談交渉をするのは負担が大きいだけでなく、不利な条件で示談してしまうリスクもあるでしょう。そのため、保険会社との示談交渉は、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士に依頼することで、慰謝料を増額できる可能性もあります。交通事故でおかまほられたときには、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。