ゼブラゾーン事故の過失割合|事例別にわかりやすく解説

弁護士のサポートを受けながら、適正な過失割合に基づく損害賠償を請求しましょう。
本記事では、ゼブラゾーン事故の過失割合や、交通事故で請求できる慰謝料などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、ゼブラゾーン(導流帯)とは?
「ゼブラゾーン(導流帯)」とは、道路上にしま模様が書かれた部分をいいます。交差点などにおいて、車両の安全かつ円滑な走行を誘導する目的で、ゼブラゾーンが設定されることがあります。
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(1)ゼブラゾーンの目的
ゼブラゾーン(導流帯)の目的は、車両の安全かつ円滑な走行を誘導することです。ゼブラゾーンに入らないように車両を誘導することにより、スムーズな交通が促されます。
警察庁の交通規制基準では、以下の道路がゼブラゾーンによる交通規制の対象とされています。車両の安全かつ円滑な走行を誘導する必要がある場所で、次のいずれかに該当する道路
- ① 交差点が広すぎるため、交差点を通行する車両の走行位置が不安定で交差点の処理能力が低下し、又はこれに起因する交通渋滞若しくは交通事故が発生するおそれのある道路
- ② 交差点が変形又は複雑であるため、車両の交錯が多く、これに起因する交通渋滞又は交通事故が発生するおそれがある道路
- ③ 車線数が減少する場所その他道路の形状及び交通の状況からみて安全かつ円滑な走行を誘導する必要があると認められる道路
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(2)ゼブラゾーンの走行は禁止されていない|ただし非推奨
ゼブラゾーンに入ること自体は、法律上禁止されていません。
ただしゼブラゾーンは、そこに車両が入らないように誘導することにより、交通の円滑化を図るためのものです。したがって、ゼブラゾーンはできる限り避けて走行すべきでしょう。
また後述するように、ゼブラゾーンを走行している時に交通事故を起こすと、通常時に比べて過失割合が増えることがあるので注意を要します。 -
(3)ゼブラゾーンと安全地帯の違い
ゼブラゾーンとは異なり、道路上に設置されている「安全地帯」は車両の進入が禁止されています(道路交通法第17条第6項)。
安全地帯とは、路面電車の乗り降りをする乗客や、道路を横断する歩行者の安全を確保するための場所です。横に広がったV字が描かれた青い標識で、安全地帯が表示されています。
ゼブラゾーンはやむを得ず走行することもあり得ますが、安全地帯を走行することは認められないと理解しておきましょう。
2、事例別|ゼブラゾーン事故における過失割合
ゼブラゾーンを走行することは、交通事故のリスクを高める行為です。もしゼブラゾーンを走行している時に交通事故を起こすと、自分側の過失割合が高めに認定されることがあります。
4つのケースについて、ゼブラゾーン事故における過失割合を紹介します。
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(1)ゼブラゾーン走行車と右折レーンへの車線変更車の事故
ゼブラゾーン走行車 右折レーンへの車線変更車 基本過失割合 30% 70% ゼブラゾーン走行による修正要素 +10~20% 修正後の過失割合 40~50% 50~60%
比較的広い交差点では、右折レーンの直前にゼブラゾーンが設定されていることがあります。
この場合、右折車はゼブラゾーンに入らないように直進レーンを走行し、ゼブラゾーンがなくなった地点以降に右折レーンへ入ることが推奨されます。
しかし、早めに右折レーンへ入ろうとして、ゼブラゾーンを走行する車両も散見されます。
この場合、右折車が右折レーンへ車線変更をする際に、後続するゼブラゾーン走行車を予期できず、ゼブラゾーン走行車と側面衝突するケースがあります。
この場合、右折レーンへの車線変更車が。後続するゼブラゾーン走行車を予期するのは難しいことや、できる限り避けて走行すべきとされているゼブラゾーンを走行していることはある程度非難されるべきであることから、ゼブラゾーン走行車の過失割合が通常よりも高くなります。 -
(2)ゼブラゾーン走行車と道路外から右折する車の事故
ゼブラゾーン走行車(右側から直進してくる車) 道路外から右折する車 基本過失割合 20% 80% ゼブラゾーン走行による修正要素 +10~20% 修正後の過失割合 30~40% 60~70%
店舗や施設の駐車場などから出てきた車が、右折して反対側の車線へ移っていくのはよく見られる光景です。
このとき、道路外から右折する車と、右側から直進してくる車が衝突する事故がしばしば発生します。
右側から直進してくる車がゼブラゾーンを走行していた場合、道路外から右折する車にとっては、道路外から相手車両を確認することが通常よりも難しくなります。
そのため、衝突事故が発生した場合には、ゼブラゾーン走行車の過失割合が通常よりも高くなります。 -
(3)ゼブラゾーン走行車と道路外へ出る右折車の事故
ゼブラゾーン走行車(対向車線の直進車) 道路外へ出る右折車 基本過失割合 10% 90% ゼブラゾーン走行による修正要素 +10~20% 修正後の過失割合 20~30% 70~80%
店舗や施設の駐車場などに入ろうして右折する車と、対向車線を走行している直進車が衝突する事故もよく見られます。
直進車がゼブラゾーンを走行していた場合、右折車から見ると、相手車両が通常よりも早いタイミングで出現するため、事故を回避しにくい側面があります。そのため、ゼブラゾーン走行車の過失割合が通常よりも高くなります。 -
(4)高速道路を走行中における直進車と進路変更車のゼブラゾーン事故
ゼブラゾーン走行車(直進車) 進路変更車 基本過失割合 20% 80% ゼブラゾーン走行による修正要素 +20% 修正後の過失割合 40% 60%
高速道路での交通事故について、当事者の一方がゼブラゾーンを走行していた場合は、ゼブラゾーンを走行車の過失割合が20%加算されます。
高速での走行中は、通常とは異なる他の車両の挙動を予期して事故を回避することが難しいです。そのため、異例の挙動であるゼブラゾーンの走行について、一般道よりも高い過失割合が認められやすい傾向にあります。
3、ゼブラゾーン事故について請求できる慰謝料の種類と算定基準
ゼブラゾーン事故に巻き込まれた場合は、加害者側に対して慰謝料を請求できます(そのほかにも、治療費・休業損害・逸失利益などの損害賠償を請求可能です)。
交通事故について請求できる慰謝料の種類と算定基準を紹介します。
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(1)交通事故の慰謝料の種類
交通事故の被害者が、加害者に対して請求できる慰謝料の種類は以下の3つです。
① 入通院慰謝料
交通事故によってけがをした場合に、入院や通院の期間に応じた額の慰謝料を請求できます。
② 後遺障害慰謝料
交通事故によるけがが治癒せず後遺症が残った場合に、その部位や症状に応じて認定される後遺障害等級に応じた額の慰謝料を請求できます。
③ 死亡慰謝料
交通事故の被害者が死亡した場合に、本人および遺族の精神的損害を補填する慰謝料を請求できます。死亡慰謝料の額は、被害者の家族における立場などによって決まります。 -
(2)交通事故の慰謝料の算定基準
交通事故の慰謝料額を算定する基準としては、以下の3つがあります。
① 自賠責保険基準
自賠責保険から支払われる保険金額を算定する基準です。
② 任意保険基準
加害者側の任意保険会社が独自に定めている基準です。
③ 裁判所基準(弁護士基準)
過去の裁判例などに基づき、被害者が受けた損害の客観的な評価額を算定する基準です。3つのうち、慰謝料の額がもっとも高額になるのは裁判所基準です。被害者は、裁判所基準による慰謝料を受け取る権利があります。
4、ゼブラゾーン事故の損害賠償請求は弁護士に相談を
ゼブラゾーン事故に巻き込まれたら、早い段階で弁護士にご相談ください。
交通事故の損害賠償請求について弁護士に相談することには、主に以下のメリットがあります。
- 事故の客観的な状況に応じて、適正な過失割合を主張できる
- 受けた損害を漏れなく把握し、適切に評価したうえで賠償を請求できる
- 後遺障害等級認定のサポートを受けられる
- 加害者側との示談交渉を任せられる
- 示談交渉が決裂した場合は、ADRや訴訟の対応を任せられる
- 加害者側の提示額よりも、多くの損害賠償を受け取れる可能性が高まる
- 労力やストレスが大幅に軽減される
自動車保険などに弁護士費用特約が付いていれば、それを利用すると弁護士費用の自己負担額を大幅に抑えられます。
ご自身が加入している保険の弁護士費用特約の有無を確認したうえで、お早めに弁護士へご相談ください。
5、まとめ
ゼブラゾーン(導流帯)の走行は禁止されていませんが、ゼブラゾーン走行車が交通事故を起こすと、通常よりも高い過失割合が認められます。
ゼブラゾーン事故に巻き込まれてしまったら、弁護士のサポートを受けながら正しい過失割合に基づく損害賠償を請求しましょう。
ベリーベスト法律事務所は、交通事故の損害賠償請求に関するご相談を随時受け付けております。ゼブラゾーン事故について適正額の損害賠償を受けたい方は、早い段階でベリーベスト法律事務所へご相談ください。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。