交通事故の過失割合が8対2とは? 慰謝料に納得できないときの対処法
過失割合は、少しの差で受け取れる慰謝料に大きく影響するため、加害者側から提示された過失割合に納得できないときは、弁護士に相談しましょう。
本記事では、交通事故の過失割合が8対2のときの慰謝料額、過失割合に納得できないときの対処法などを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、交通事故の過失割合が8対2だと、慰謝料の額はどうなる?
交通事故の損害賠償額を算定する際には、当事者の過失割合に応じた調整(=過失相殺)が行われます。
過失割合が8対2(=被害者側の過失が2割)だと、被害者が請求できる慰謝料などの金額は8割に減額されてしまいます。詳しく解説しましょう。
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(1)交通事故の過失割合とは
交通事故の過失割合とは、事故の当事者間において、どちらにどれだけ責任があるかを示した割合です。「10対0」「9対1」「8対2」などの比率や、「100%」「90%」「80%」などのパーセンテージで表されます。
過失割合は、道路交通法による交通規制の内容を踏まえつつ、事故の客観的な状況に基づいて決まります。被害者側が完全に停止している状態での交通事故や、加害者側の信号無視による交通事故は、過失割合が10対0(=被害者側の過失がゼロ)となるケースも少なくありません。 -
(2)過失割合が8対2の場合、過失相殺によって慰謝料などが8割に減る
交通事故の被害者は、加害者に対して慰謝料を請求できます。慰謝料とは、肉体的・精神的苦痛に関する損害賠償金のことで、以下の3種類に分けることが可能です。
交通事故の慰謝料の種類 概要 入通院慰謝料 交通事故のけがによって入院や通院を強いられたことに伴う肉体的・精神的苦痛の賠償金 後遺障害慰謝料 けがの後遺障害に伴う肉体的・精神的苦痛の賠償金 死亡慰謝料 交通事故で亡くなったことに伴い本人が受けた肉体的・精神的苦痛の賠償金、および遺族が受けた精神的苦痛の賠償金 過失割合が8対2(=被害者側の過失が2割)の場合、被害者が加害者に対して請求できる慰謝料の額は、被害者側の過失ゼロの場合の金額の8割に減ってしまいます。
たとえば、本来であれば100万円の入通院慰謝料を請求できるケースでも、過失割合が8対2であれば80万円を請求できるにとどまります。 -
(3)過失相殺は慰謝料以外にも適用される|主な損害項目を紹介
過失相殺は、後述する慰謝料以外の損害賠償についても幅広く適用されます。過失割合が少しでも変わると、損害賠償の総額に大きな変化が生じるため、適切に過失割合を定めることが大切です。
一例として、被害者は加害者に対して慰謝料以外に以下の損害賠償を請求できます。損害賠償の項目 概要 治療費 けがの治療や検査を受けるため、医療機関や薬局に対して支払った費用 通院交通費 けがの治療を受けるための通院に要した交通費 装具・器具購入費 けがの治療やリハビリのために購入した装具や器具の費用
(例)義歯、義手、義足、眼鏡、車いす、コルセット、サポーターなど介護費用 要介護状態となった場合に、将来の介護にかかる費用 入院雑費 入院中に、日用品などを購入するための費用 葬儀費用 被害者が亡くなった場合の葬儀費用 休業損害 けがの影響で仕事を休んだ場合に減少した収入
※有給休暇を取得した場合も、休業損害の賠償を請求できます。逸失利益 後遺障害や死亡によって労働能力が失われたために、将来にわたって減少した収入
2、過失割合が8対2になる交通事故の具体例
交通事故に巻き込まれた際、過失割合が8対2になる具体例を紹介します。もっとも、紹介例はあくまで目安であり、事故の状況によっては、適切な過失割合が変わることもある点にご留意ください。
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(1)自動車同士の事故
自動車同士の事故では、以下のようなケースで過失割合が基本的に8対2となります。
A車の過失が8割、B車の過失が2割
- 信号機のある交差点で、赤信号で直進したA車と、黄信号で直進したB車が衝突した。
- 信号機のない同幅員の交差点で、右から減速せずに進入したA車と、左から減速して進入したB車が衝突した。
- 信号機のない交差点で、右折するA車と、直進するB車が衝突した。
- 信号機のない交差点で、狭い道路から減速せずに直進したA車と、広い道路から減速して直進したB車が衝突した。
- 信号機のない交差点で、一時停止規制を無視して直進したA車と、一時停止規制のないB車が衝突した。
- 優先道路でない道路を直進したA車と、優先道路から右折したB車が衝突した。
- 道路外から進入したA車と、道路を直進中のB車が衝突した。
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(2)自動車とバイク(二輪車)の事故
自動車とバイク(二輪車)の事故では、自動車同士の事故に比べて、自動車側の過失が重くなります。たとえば、以下のようなケースで過失割合が基本的に8対2となります。
A車の過失が8割、B車の過失が2割
- 信号機のない交差点で、一時停止規制を無視して減速せず直進したA車(バイク)と、一時停止規制のない道路を減速して出てきたB車(自動車)が衝突した。
- 信号機のある交差点で、赤信号で進入したA車(バイク)と、青信号で交差点に進入して赤信号で右折したB車(自動車)が衝突した。
- 信号機のある交差点で、赤信号で直進したA車(自動車)と、黄信号で右折進入して赤信号で右折したB車(バイク)が衝突した。
- A車(バイク)が、追越禁止場所で前を走る直進中のB車(自動車)を追い越した際に衝突した。
- A車(自動車)が、前方で正当な理由なく急ブレーキをかけたB車(バイク)と衝突した。
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(3)自動車と自転車の事故
自動車と自転車の事故では、自動車とバイク(二輪車)の事故よりもさらに自動車側の過失が重くなります。たとえば、以下のようなケースで過失割合が基本的に8対2となります。
A車の過失が8割、B車の過失が2割
- 信号機のある交差点で、赤信号で直進したA車(自転車)と青信号で直進したB車(自動車)が衝突した。
- 信号機のある交差点で、黄信号で直進したA車(自動車)と、青信号で進入して黄信号で右折したB車(自転車)が衝突した。
- 信号機のある交差点で、黄信号で右折したA車(自動車)と、黄信号で直進したB車(自転車)が衝突した。
- 信号機のある交差点で、赤信号で直進したA車(自転車)と、右折の青矢印信号で右折したB車(自動車)が衝突した。
- 一時停止規制を無視して直進してきたA車(自動車)と、左から右折してきたB車(自転車)が衝突した。
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(4)自動車と歩行者の事故
自動車と歩行車の事故では、自動車と自転車の事故よりもさらに自動車側の過失が重くなります。たとえば、以下のようなケースで過失割合が基本的に8対2となります。
自動車の過失が8割、歩行者の過失が2割
- 信号機のある横断歩道で、赤信号で進入した自動車と、赤信号で横断開始した歩行者が衝突した。
- 信号機のある横断歩道で、青信号で進入した自動車と、青信号で横断開始して途中で赤になった歩行者が衝突した。
- 信号機のある横断歩道で、黄信号で右左折した自動車と、黄信号で横断開始した歩行者が衝突した。
- 道路を直進する自動車と、横断歩道や交差点付近ではない場所で道路を横断した歩行者が衝突した。
- 歩行者が、自動車の真後ろを横断しようとして、後退する自動車と衝突した。
3、保険会社が提示する過失割合に納得できないときの対処法
加害者側の保険会社は、被害者側に不利な過失割合を提示してくることがあります。その場合は、以下の方法で対処しましょう。
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(1)事故状況に関する証拠を集める
いきなり過失割合の変更を求めても、反論を受けてしまう可能性があります。そのため、まずは事故状況に関する客観的な証拠を確保することが大切です。弁護士のサポートを受けながら、以下のような証拠をできる限り集めましょう。
- ドライブレコーダーの映像
- 事故現場の写真、防犯カメラ映像
- 警察官が作成する実況見分調書
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(2)過失割合の変更を求める
事故状況について保険会社側の認識が誤っているようであれば、集めた証拠を提示しつつ過失割合の変更を求めましょう。
過失割合の変更を主張する方法としては、以下の2つが考えられます。弁護士と相談しながら、適切な戦略を立てて保険会社との交渉を進めましょう。① 基本過失割合の変更を求める
保険会社が主張する事故類型が誤っていることを指摘します。
たとえば、保険会社側は被害者が黄信号で交差点へ侵入したと主張しているとします。もしドライブレコーダーの映像から、被害者側の信号が青であったことが分かれば、基本的に過失割合の変更を求めることができます。
② 過失割合の修正要素を主張する
交通事故に関する細かい事情を考慮して、過失割合を修正するよう求めます。
たとえば、交通事故が発生した時間帯や速度違反などを修正要素として主張できることがあります。 -
(3)片側賠償を主張する
過失割合が8対2の場合、本来であれば被害者側も、加害者側に生じた損害の2割を賠償しなければなりません。
ただし被害者は、自分の損害について8割にとどまる賠償を受け入れる代わりに、加害者の損害に関する賠償責任を免除するよう求めることもできます(=片側賠償)。
示談交渉が難航する際は、この片側賠償の提案が有力な解決策になり得ます。弁護士と相談しながら、片側賠償を求めるかどうかを適切に判断しましょう。
4、過失相殺による慰謝料減額に納得できないときは、弁護士へ相談を
加害者側から納得できない過失割合や慰謝料額を提示されたときは、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士へ依頼することの主なメリットは以下のとおりです。
- 事故状況に関する必要な証拠を提示でき、証拠の集め方もアドバイスできる
- 保険会社に対し、法的な視点から適切な過失割合を主張できる
- 慰謝料などの損害賠償を増額できる可能性がある
- 保険会社との示談交渉や、示談が決裂した場合の裁判手続きを代行できる
なお、一度保険会社から提示された過失割合を受け入れてしまうと、後日修正はできなくなる可能性が高いでしょう。そのため、適正額の損害賠償を受けるためにも、早い段階から弁護士にご相談ください。
5、まとめ
交通事故の過失割合が8対2とされた場合、被害者が受けられる慰謝料などの損害賠償は、被害者側の過失割合がゼロのときと比べて8割に減ってしまいます。
加害者側が提示する過失割合や損害賠償額に納得できないときは、弁護士のサポートを受けながら修正や増額を求めましょう。ベリーベスト法律事務所は、交通事故被害者のご相談を随時受け付けています。お早めにご相談ください。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。
