手・腕(手指)の後遺障害
手指の症状と治療法
まず、手指の構造についてですが、5本の指すべてに中手骨1本があり、母指(親指)を除いた4本の指に指骨が各3本あります。母指(親指)の指骨は2本です。
したがって、母指(親指)を除いた4本の指は、中手骨1本+指骨3本(それぞれ掌から見て順に基節骨・中節骨・末節骨と呼ばれます。)で構成され、母指(親指)は、中手骨1本+指骨2本(基節骨・末節骨です)で構成されていることになります。なお、指骨は3本×4指+2本=14本あることになります。
関節で考えると、母指(親指)を除いた4本の指には、基節骨と中手骨との間に一つ(これを中手指節関節と言います。MPと書くこともあります)、そして3本の指骨の間に二つ(基節骨と中節骨の間を近位指節間関節=PIP、中節骨と末節骨との間を遠位指節間関節=DIPと言います)あります。
母指(親指)には基節骨と中手骨との間に一つ(中指節関節=MP)、そして2本の指骨である基節骨と末節骨間に一つ(指節間関節=IP)あります。
手指の後遺障害としては、「欠損又は機能障害」があります。
手指の後遺障害等級認定
手指の欠損障害について
手指の欠損障害の後遺障害慰謝料の目安
等級 | 症状 | 自賠責基準 | 裁判基準 |
---|---|---|---|
3級5号 | 両手の手指の全部を失ったもの | 829万円 | 1990万円 |
6級8号 | 1手の5の手指又は親指を含み4の手指を失ったもの | 498万円 | 1180万円 |
7級6号 | 1手の親指を含み3の手指を失ったもの又は親指以外の4の手指を失ったもの | 409万円 | 1000万円 |
8級3号 | 1手の親指を含み2の手指を失ったもの又は親指以外の3の手指を失ったもの | 324万円 | 830万円 |
9級12号 | 1手の親指又は親指以外の2の手指を失ったもの | 245万円 | 690万円 |
11級8号 | 1手の人差し指、中指又は薬指を失ったもの | 135万円 | 420万円 |
12級9号 | 1手の小指を失ったもの | 93万円 | 290万円 |
13級7号 | 1手の親指の指骨の一部を失ったもの | 57万円 | 180万円 |
14級6号 | 1手の親指以外の手指の指骨の一部を失ったもの | 32万円 | 110万円 |
自賠責保険の後遺障害等級認定で準拠している労災保険の認定基準上、下記の点が規定されています。
「手指を失ったもの」とは、母指は指節間関節、その他の手指は近位指節間関節以上を 失ったものとされています。具体的には次の場合が該当します。
- (a)手指を中手骨または基節骨で切断したもの
- (b)近位指節間関節(母指の場合は、指節間関節)で、基節骨と中節骨とを離断したもの
「指骨の一部を失ったもの」とは、1指骨の一部を失っている(遊離骨片の状態を含みます) ことがエックス線写真等により確認できるものをいいます。
手指の機能障害について
手指の機能障害の後遺障害慰謝料の目安
等級 | 症状 | 自賠責基準 | 裁判基準 |
---|---|---|---|
4級6号 | 両手の手指の全部の用を廃したもの | 712万円 | 1670万円 |
7級7号 | 1手の5の手指又は親指を含み4の手指の用を廃したもの | 498万円 | 1180万円 |
7級6号 | 1手の親指を含み3の手指を失ったもの又は親指以外の4の手指を失ったもの | 409万円 | 1000万円 |
8級4号 | 1手の親指を含み3の手指の用を廃したもの又は親指以外の4の手指の用を廃したもの | 324万円 | 830万円 |
9級13号 | 1手の親指を含み2の手指の用を廃したもの又は親指以外の3の手指の用を廃したもの | 245万円 | 690万円 |
10級7号 | 1手の親指又は親指以外の2の手指の用を廃したもの | 187万円 | 550万円 |
12級10号 | 1手の人差し指、中指又は薬指の用を廃したもの | 93万円 | 290万円 |
13級6号 | 1手の小指の用を廃したもの | 57万円 | 180万円 |
14級7号 | 1手の親指以外の手指の指骨の一部を失ったもの | 32万円 | 110万円 |
自賠責保険の後遺障害等級認定で準拠している労災保険の認定基準上、下記の点が規定されています。
「手指の用を廃したもの」とは、手指の末節骨の半分以上を失い、または中手指節間関節もしくは近位指節間関節(母指の場合は指節間関節)に著しい運動障害を残すものとされています。具体的には、次の場合が該当します。
- (a)手指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの
- (b)中手指節間関節または近位指節間関節(母指の場合は指節間関節)の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの
- (c)母指については、橈側外転または掌側外転のいずれかが健側の1/2以下に制限されているものも、「著しい運動障害を残すもの」として取り扱います。
- (d)手指の末節の指腹部および側部の深部感覚および表在感覚が完全に脱失したものも、「手指の用を廃したもの」として取り扱います。
「指骨の一部を失ったもの」とは、1指骨の一部を失っている(遊離骨片の状態を含みます)ことがエックス線写真等により確認できるものをいいます。
- (a)遠位指節間関節が強直したもの
- (b)屈伸筋の損傷等の原因が明らかなものであって、自動で屈伸ができないものまたはこれに近い状態にあるもの
「こんなに痛いのに、辛いのに…」なぜ後遺障害等級認定がされないのか?まずは、落ち着いてください。客観的・外形的所見はありますか?その所見は、年齢変性によるものですか、外傷性のものですか? 後遺障害等級認定の審査を行う自賠責の調査事務所は、客観的な医学的所見である画像所見を重視します。
「交通事故に遭う前には、こんな怪我はなかったのに…」なぜ非該当なのか? 残存した全ての症状が、後遺障害等級認定の対象になるわけではありません。
受傷形態(衝突の衝撃など)はどうでしたか?手指痛等の症状は、治療経過や症状推移からして、受傷直後から症状固定日まで一貫して継続していますか?整形外科での十分な治療実績はありますか?自分の症状が医学的に説明可能なものかは、被害者側が説明していく必要があります。
後遺障害等級認定獲得のためのポイント
①手指の欠損状況や可動域制限が客観的に分かる資料の収集
欠損状況を撮影した写真や可動域制限が記載されている診断書等です。
②症状が事故後から症状固定まで一貫して続いていること
事故後、一定期間経過して生じる症状については、疑念を抱かれてしまいます。
③整形外科への実通院日数の多さ
手指の機能障害については、自覚症状を主治医に伝え,半年間を目安にしっかり治療に専念できているか。
④過不足のない後遺障害診断書が完成していること
後遺障害等級認定は書面審査が基本。単に作成すればいいわけではありません。
以上のポイントは最低限の注意事項で、各人の状況によっては、不利な事情をカバーする医療的証拠等も提出する必要があります。適切な後遺障害等級認定を獲得するためには、治療方針も含めて事前の分析と準備が不可欠なのです。
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