手・腕(手首)の後遺障害
手首の構造と治療法
手首は、8つの骨(豆状骨、三角骨、月状骨、舟状骨、大菱形骨、小菱形骨、有頭骨、有鉤骨)で形成される手根骨と橈骨、尺骨で構成されており、周囲の筋肉や腱が手首を動かす役割を担っています。
交通事故による手首の怪我の多くは、骨折です。治療法としては、手術をしない非観血的治療法(メスを使わず、手で骨を元の位置に戻す方法。柔道整復術や徒手整復術等)によるものと観血的治療法(メスを使い手術を行って治療する方法)があります。どちらの治療法を行ったとしても、治療後、1ヶ月から2ヶ月ほど幹部をギプスで固定して、骨の癒合を待ちます。
手首の後遺障害等級認定
手首の怪我を負った場合に認められうる後遺障害は、手首に可動域制限(機能障害)が生じている場合や、痛みが残っている場合です。
可動域制限(機能障害)が生じている場合
獲得すべき後遺障害等級は、8級6号(1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの)、10級10号(1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの)、12級6号(1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの)です。
「関節の用を廃した」とは、障害の残った方の手関節が、健康な方の手関節に比べ、可動域が10%以下になった場合や手首に人工関節を挿入置換しその可動域が2分の1以下に制限されている場合を言います。
「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは、障害の残った方の手関節が、健康な方の手関節に比べ、可動域が2分の1以下に制限される場合や手首に人工関節を挿入置換した場合のうち、可動域が2分の1を超える場合を言います。
「関節の機能に障害を残すもの」とは、障害の残った方の手関節が、健康な方の手関節に比べ、可動域が4分の3以下に制限されることを言います。
上記の基準を、手関節の正常値とされる可動域と比較した場合、以下のようになります。
背屈 | 掌屈 | 合計 | |
---|---|---|---|
正常値 | 70° | 90° | 160° |
8級6号 | 10° | 10° | 20° |
10級10号 | 35° | 45° | 80° |
12級6号 | 55° | 70° | 125° |
- 可動域の測定は、5°刻みで行います。健康な方の手首の可動域の数値によっては、その10%や2分の1、4分の3の数値に端数が生じる場合がありますが、このときは5の倍数に切り上げます。
- 「背屈」とは、手首を手の甲の方に曲げる運動をいいます。
- 「掌屈」とは、手首を掌の方に曲げる運動をいいます。
- 手首の可動域を測定する際は、まず、手首を伸ばして前腕から指先までが一直線になるようにします。そして、前腕から指先までが一直線になっている状態を基準(0°)として、手首がどれだけ曲がるかを背屈、掌屈に分けて測定します。
痛みが残っている場合
獲得すべき後遺障害等級は、14級9号(局部に神経症状が残っているもの)又は12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)です。
手首の後遺障害慰謝料の目安
等級 | 自賠責基準 | 裁判基準 |
---|---|---|
8級6号 | 324万円 | 830万円 |
10級10号 | 187万円 | 550万円 |
12級6号 | 93万円 | 290万円 |
12級13号 | 93万円 | 290万円 |
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
後遺障害等級認定獲得のためのポイント
可動域制限が生じている場合
①器質的損傷が画像上(CTやXP、MRI等)認められること
可動域制限が生じていても、画像上、骨折等の損傷が認められない場合には、事故による怪我との因果関係を否定されてしまいます。
②可動域の測定を正確に行うこと
後遺障害等級認定は、書面審査です。後遺障害診断書上の可動域として、上記の基準に照らし、1°でも可動域が大きく記載されてしまうと、後遺障害等級認定は得られません。
痛みが残っている場合
- 器質的損傷が画像上(CTやXP、MRI等)認められること
- 痛みが生じることが医学的に説明可能であること
専門医である整形外科医であっても、後遺障害等級認定に詳しい方はほとんどおられません。主治医の指示に従って長期にわたって通院・リハビリを続けた結果、可動域がわずかに基準値より大きくなり、可動域制限による後遺障害等級が認定されないこともあります。いつ症状固定とするか、手術を行う必要性があるにしても症状固定前にするか後にするか、適切な方針決定と戦略がなければ、最善の結果を得ることはできません。
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