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過失相殺とは何か? 過失相殺に納得がいかない場合の対処法とは

公開日:2023年5月8日 慰謝料・損害賠償 示談交渉
交通事故について双方の当事者に過失がある場合、「過失相殺」を行った上で損害賠償額が決定されます。
過失相殺については、交通事故の当事者間で揉めるケースが多いため、事前に弁護士へご相談ください。
今回は交通事故の損害賠償に関する過失相殺について、考え方・計算方法・注意点・裁判例などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、過失相殺とは?

過失相殺」とは、債務不履行または不法行為の損害賠償について、当事者の過失割合を考慮して金額を調整することをいいます(民法第418条、第722条第2項)。

交通事故について、主な責任が当事者の一方にあるとしても、もう一方にも一定の過失が認められる場合は、過失割合に応じて損害賠償額が減額されます(=過失相殺)。

過失割合は、示談交渉を経た当事者間の合意や、訴訟手続きを通じた和解や判決によって決まります。
相手方の任意保険会社が提示する過失割合は、決して確定的なものではなく、示談交渉や訴訟などを通じて争うことができる、ということには注意をする必要があります。

2、交通事故における過失相殺の計算方法

実際、過失割合が問題になった場合には、以下の手順で過失相殺を考えます。

  • ① 当事者の損害額を合算する
  • ② 過失割合を決定する
  • ③ 各当事者が負担すべき損害額を計算する


  1. (1)当事者の損害額を合算する

    まず、交通事故の両当事者が受けた損害額を合算します。

    (例)
    <Xが受けた損害>
    治療費:30万円
    入通院慰謝料:50万円
    車の修理費:90万円
    休業損害:30万円

    合計:200万円

    <Yが受けた損害>
    治療費:90万円
    入通院慰謝料:200万円
    車の修理費:100万円
    休業損害:100万円
    後遺障害慰謝料:110万円
    逸失利益:200万円

    合計:800万円
  2. (2)過失割合を決定する

    次に、交通事故の当事者間における過失割合を決定します。

    過失割合は、交通事故の客観的な状況に応じて決めます。事故の類型に応じた基本過失割合をベースに、具体的な事情を修正要素として反映した上で、最終的な過失割合が求められます。

    実際に過失割合を求める際には、「別冊判例タイムズ第38号」、「交通事故損害額算定基準(青本)」または「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(赤い本)」を参考にするのが一般的です。

    (例)
    信号機のない交差点において、XとYが同程度の速度で衝突した。Xの通行している道路には一時停止規制が設けられていた。

    →XとYの過失割合は8対2
    ※修正要素は考慮していない
  3. (3)各当事者が負担すべき損害額を計算する

    当事者が受けた損害の合計額に過失割合を乗じて、各当事者が負担すべき損害額を計算します。

    (例)
    Xの受けた損害は200万円、Yの受けた損害は800万円
    XとYの過失割合は8対2
    →Xの損害は、Xが160万円(=200万円×80%)、Yが40万円(=200万円×20%)負担する。
    Yの損害は、Xが640万円(=800万円×80%)、Yが160万円(=800万円×20%)負担する。

3、過失相殺に関する注意点

過失相殺の原則的な計算方法は上記のとおりですが、実際には事故に関する具体的な事情を考慮しなければなりません。

比較的問題になりやすい注意点として、以下の3点を解説します。

  • ① 事故の相手が高級車である場合の注意点
  • ② 子どもが被害者である場合の注意点
  • ③ 過失相殺と損益相殺の違い


  1. (1)事故の相手が高級車である場合の注意点

    交通事故の相手が高級車である場合、修理費用・代車費用・評価損などが高額となる傾向にあります。

    この場合、相手方の過失の方が大きい場合でも、ご自身の側がより高額な損害賠償を強いられる可能性がある点に注意が必要です。

    (例)
    • 物損事故
    • Xが実際に受けた損害は100万円、Y(高級車)が実際に受けた損害は1400万円
    • XとYの過失割合は2対8

    →Xの損害については、Xが20万円、Yが80万円負担する
    Yの損害については、Xが280万円、Yが1120万円
    →(Yの過失の方が大きいにもかかわらず)XがYに支払う額(280万円)の方が、XがYから受け取る額(80万円)より多い
  2. (2)子どもが被害者である場合の注意点

    子どもが被害者の場合、「事理弁識能力」が備わっていれば過失相殺を認め得るというのが判例の立場です(最高裁昭和39年6月24日判決)。
    事理弁識能力(損害の発生を避けるのに必要な注意をする能力)は、おおむね5~6歳程度以上であれば認められる傾向にあります。

    子どもに事理弁識能力が認められない場合は、子ども自身の過失を考慮して過失相殺を行うことはできません
    ただし、子どもと身分上・生活関係上一体をなす者(親など)の過失が認められる場合には、その過失を考慮して過失相殺を行うことができます(最高裁昭和42年6月27日判決)。

  3. (3)過失相殺と損益相殺の違い

    過失相殺に似た言葉として「損益相殺」がありますが、過失相殺とは全く異なるものである点にご注意ください。

    損益相殺とは、損害の穴埋めとしてすでに受け取った金銭がある場合に、その金額を損害賠償から控除することをいいます。

    交通事故の損害賠償に関しては、以下のような金銭が損益相殺の対象となります。

    • 自賠責保険金
    • 政府保障事業のてん補金
    • 自分が加入している自動車保険から受け取った人身傷害保険金
    • 医療費等の健康保険負担分
    • 労災保険給付
    など

4、最近の過失相殺に関する裁判例を紹介

交通事故の損害賠償請求に関して、過失相殺が問題となった近時の裁判例を二つ紹介します。

  • ① 横浜地裁平成30年12月26日判決
  • ② 名古屋地裁平成28年12月21日判決


  1. (1)横浜地裁平成30年12月26日判決

    Xは第1車線の先頭、Yは第2車線の先頭で、それぞれ信号待ちをしていました。

    Xは、信号が赤色から青色に切り替わる直前に発信し、それにやや遅れて、Yが発進しました。Xは交差点を過ぎたあたりで、合図をせずに第2車線へ変更しました。これに対してYが立腹し、クラクションを鳴らし続けて前方のX車両との車間距離を詰めたところ、Xがほぼ停止に近い速度まで急減速したことによって追突事故が発生しました。

    横浜地裁は、X・Yの双方が相手の運転行為に立腹するあまり、故意に道路交通法違反を犯した結果として事故が発生したことを認定しました。

    その上で、事故の発端はXが合図をせずに車線変更をしたことにあり、さらにXが意図的に急減速したことが事故の直接的な原因になっていることを考慮し、XとYの過失割合を6対4と判示しました。

  2. (2)名古屋地裁平成28年12月21日判決

    エホバの証人の信者であったXは、Yとの交通事故によって重傷を負った際に輸血を拒否し、その後急性硬膜外血種によって死亡しました。

    名古屋地裁は、Xが輸血を拒否せず通常どおり手術が行われた場合、Xは死亡しなかった可能性があるとして、輸血拒否の事実がX死亡に因果的寄与を及ぼしていることを指摘しました。
    その上で、損害の公平な分担の観点から、輸血拒否の事実につき3割の過失相殺を認め、Yに対して命ずる損害賠償の金額を減額しました。
    なお、Xには、事故態様及び速度違反1割、シートベルト不装着1割の過失も認められ、XとYの過失割合は5対5と判示されました。

    本件は、交通事故当時の段階だけでなく、その後のケガの治療段階における被害者側の過失を認定し、当該過失の損害に対する因果的寄与を考慮して過失相殺を行った点が注目されます。

5、過失割合のことがわからない、納得できない場合は弁護士にご相談を

交通事故の示談交渉において、相手方の保険会社が出してきた過失割合に納得できない場合は、弁護士へのご相談をおすすめいたします

弁護士にご依頼いただければ、事故の客観的な状況から適切な過失割合を求め、それに従った適正な損害賠償を受けられるようにサポートいたします。
示談交渉や訴訟の手続きについても、一括して弁護士にお任せいただけますので、被害者ご本人の負担は大幅に軽減されます。

弁護士へのご依頼により、当初の提示額より多くの示談金を得られたというケースは非常に多いです。交通事故の損害賠償請求は、ぜひ弁護士にお任せください。

6、まとめ

交通事故の損害賠償請求においては、加害者及び被害者双方の過失割合を考慮した上で過失相殺が行われます。

過失割合は損害賠償の金額に大きく影響するため、交通事故の当事者間で揉めるケースが非常に多いです。相手方から提示された過失割合に納得できない場合は、弁護士へのご相談をおすすめいたします。

ベリーベスト法律事務所は、交通事故に関するご相談を随時受け付けております。正しい過失割合に基づく適正な損害賠償を受けたい方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

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