家族が死亡事故に遭った場合はどうすればいい? 弁護士が解説
悲しみのあまり、加害者側とやり取りするのが苦痛だと感じる方もいらっしゃるかと思います。その場合は、弁護士にご依頼いただければ、加害者側との示談交渉を一括して代行いたしますので、ぜひ一度ご相談ください。
今回は、交通死亡事故の損害賠償請求に関して、弁護士による示談交渉の流れ・弁護士に依頼するメリット・相談前の事前準備などを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、弁護士に依頼した場合の示談交渉の流れ
一般に、四十九日の法要が行われる時期が過ぎた頃に、加害者側との示談交渉が始まります。 加害者が加入している任意保険会社から連絡を受けた場合には、お早めに弁護士までご相談ください。
まずは、弁護士を通じて交通事故の示談交渉を行う場合の流れを、時系列に沿って解説します。
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(1)任意保険会社から示談に関する連絡を受ける
加害者が任意保険に加入している場合、加害者側の任意保険会社が被害者に対して、示談交渉に関して連絡してくるのが一般的です。
死亡事故の場合、四十九日の法要が行われる時期が過ぎると、加害者側の任意保険会社から連絡が来る頃合いになります。
遅くとも、加害者側の任意保険会社から連絡を受けた直後のタイミングで、今後の示談交渉の方針等を弁護士にご相談ください。
なお、加害者側の任意保険会社から連絡が来ない場合や、加害者が任意保険に加入していない場合には、被害者から加害者側に連絡することになります。
その場合も、弁護士を通じて連絡するのがスムーズです。事前に弁護士までご相談ください。 -
(2)互いに条件を提示し合い、和解の可能性を模索する
示談交渉では、被害者側と加害者側が金銭的な条件を提示し合い、その間の乖離を埋めながら、和解の可能性を探ります。
被害者側としては、後述するように、客観的な損害賠償基準である「裁判所基準」に基づき、発生した損害の賠償を漏れなく請求すべきです。
そのうえで、示談を早期に妥結することを重視する場合には、一定の譲歩を行うことも考えられます。 -
(3)和解に合意すれば、示談書を作成・締結する
示談交渉がうまくまとまり、被害者と加害者が和解内容に合意すれば、合意内容を記載した示談書を作成して、双方が調印を行います。
締結された示談書に基づき、後日加害者側の任意保険会社から被害者に対して、示談金が支払われます。
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(4)和解に合意できなければ、調停・ADR・訴訟に移行する
被害者側・加害者側の条件提示に大きな乖離がある場合、示談交渉が不調に終わる可能性もあります。
その場合は、以下のいずれかの手続きによって解決を図ることになります。民事調停
簡易裁判所にて、調停委員が被害者・加害者の主張を公平に聴き取り、相互間の調整を試みて和解成立を目指す手続きです。裁判官の提示する調停案に双方が同意すれば、調停成立となります。
裁判外紛争解決手続(ADR)
裁判所以外の第三者機関が、被害者・加害者間の調整を試みて和解を目指す手続きです。
示談成立には原則として双方の同意が必要ですが、審査によって第三者機関に結論を示してもらうこともできます。
一部の任意保険会社は、審査結果を尊重することになっているため、訴訟に至らず早期の紛争解決が期待できます。
訴訟
裁判所において、被害者・加害者(任意保険会社)の双方が、損害賠償責任の有無・金額について主張立証を行い、責任や損害額を確定させる法的手続きです。
最終的には裁判所が判決によって結論を示しますが、途中で和解が成立する場合もあります。
2、示談交渉を弁護士に依頼するメリット
任意保険会社との示談交渉を進めるにあたっては、以下のメリットがあるため、弁護士に依頼することがおすすめです。
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(1)裁判所基準に基づき、適正な損害賠償を請求できる
加害者側の任意保険会社は、被害者に生じた客観的な損害額よりも、低い示談金額を提示してくる可能性があります。
支払う保険金を少なく抑えるため、独自の「任意保険基準」に基づき示談金額を算定しているからです。
一方で、弁護士を代理人として示談交渉に臨んだ場合には、裁判例に沿って客観的な損害額を算定する「裁判所基準」に基づき、適正な額の損害賠償を請求できます。
裁判所基準に基づく賠償額は、任意保険基準の倍額近くに及ぶケースもあるため、弁護士を通じた示談交渉を強くおすすめいたします。
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(2)示談交渉に伴う時間的・精神的負担が減少する
弁護士にご依頼いただければ、加害者側との示談交渉を一括して代行いたします。
交通事故のことを思い出してしまうため、示談交渉をご自身で行うのは苦痛だという方も少なくありません。
弁護士に一任いただければ、時間的・精神的なご負担が大きく軽減されるかと思います。 -
(3)調停・ADR・訴訟に発展した場合も安心
示談交渉が不調に終わり、調停・ADR・訴訟に発展した場合でも、弁護士が代理人に就いていれば安心です。
弁護士は、調停委員・第三者機関・裁判所などに対して、被害者側に有利な事情を説得的に主張し、できる限り有利な解決を得られるように尽力いたします。
経験豊富な弁護士にお任せいただければ、複雑な手続きに戸惑うことがなく、スムーズに対応できる点も大きなメリットです。
3、交通死亡事故において、加害者側に請求できる損害賠償の主な項目
交通事故の被害者が死亡した場合、遺族は加害者側に対して、以下の項目について、損害賠償を請求できます。
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(1)治療費等
死亡前に治療費や入院費などがかかった場合、その実額の損害賠償を請求できます。領収証などを保管しておき、漏れなく請求しましょう。
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(2)葬儀関連費用
死亡した被害者の葬儀に関連して支出する費用も、交通事故と相当因果関係を有するものとして、損害賠償の対象となります。
ただし、葬儀関連費用すべてが損害賠償の対象となるわけではなく、使途によって取扱いが異なる点に注意が必要です。
損害賠償の対象となる葬儀関連費用
- 葬儀費用そのもの
- 墓碑建立費
- 仏壇、仏具の購入費
- 遺体処理費
- 遺体運送費 など
損害賠償の対象とならない葬儀関連費用
- 弔問客接待費
- 香典返しの費用 など
裁判所基準によると、葬儀関連費用の損害賠償額は、基本的に150万円が上限とされています。
ただし、特別の事情がある場合には、それよりも高額の葬儀関連費用の賠償が認められる可能性もないわけではありません。 -
(3)死亡逸失利益
「逸失利益」とは、事故で亡くなったことにより、事故から本来の寿命までに得られなくなった収入を意味します。
交通死亡事故では、以下の式によって計算される逸失利益が、損害賠償の対象となります。
逸失利益
=1年当たりの基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数1年当たりの基礎収入は、原則として事故直前の年収の実額です。
ただし、専業主婦や兼業主婦で、収入がない又は少ない場合には、賃金センサスに基づく平均データを用いて逸失利益を請求することが認められます。就労可能年数に対応するライプニッツ係数は、以下の係数表によって確認できます。
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(4)死亡慰謝料
交通事故で被害者が死亡した時には、死亡した本人と遺族のそれぞれが、加害者に対する慰謝料請求権を得ます(民法第709条、第710条、第711条。本人の慰謝料請求権は遺族が相続します)。
裁判所基準では、被害者の家庭内の立場に応じて、本人と遺族の慰謝料総額を以下のとおり定めています。
家庭内の立場 慰謝料総額 一家の支柱 2700万円~3100万円 一家の支柱に準ずる立場(配偶者など) 2400万円~2700万円 その他 2000万円~2500万円
4、交通事故被害を弁護士に相談するための事前準備
交通事故被害を弁護士にご相談いただく際には、以下の事前準備を整えていただくと、弁護士がスムーズに対応に着手できます。
迅速・円滑に損害賠償請求を行うため、可能な範囲で準備しましょう。
交通事故関連の資料をまとめておく
以下に挙げるような交通事故関連の資料があれば、事前にまとめておきましょう。
- 交通事故証明書
- ドライブレコーダーの映像
- 治療に関する記録
- 実況見分調書の写し
- 交通事故当時の状況を記したメモ
- 加害者や任意保険会社の連絡先
- 任意保険会社からの連絡書面 など
事故に関する疑問点などを整理しておく
弁護士の側からも能動的にアドバイスいたしますが、何か疑問点がある場合には、質問内容をまとめておくと、ご相談の際に聞きもらしをなくせます。
弁護士の指示に従って、必要書類等を準備する
印鑑や身分証明書など、ご依頼時に必要となる物品・書類を、弁護士の指示に従ってご用意ください。
5、まとめ
ご家族が交通事故でお亡くなりになった場合、弁護士を通じて加害者側と示談交渉を行うことで、適正額の損害賠償を請求できます。 加害者側から示談交渉に関する連絡を受けた際には、信頼できる弁護士へ対応をご依頼ください。
ベリーベスト法律事務所は、交通事故被害に遭った被害者や、そのご家族をサポートするため、損害賠償請求の手続きを一括して代行いたします。 明確な弁護士費用・わかりやすいご説明により、どなたでも安心してご相談いただけます。
ご自身やご家族が交通事故の被害者となった場合には、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています