電動キックボード乗車中に車と接触! 損害賠償請求はできる?
ただし、電動キックボードの事故は過失割合について揉めやすい特徴があるため、弁護士を代理人として示談交渉に臨むのがおすすめです。
今回は、電動キックボードによる交通事故について、解決の流れ・損害賠償の項目・過失割合に関する特有の問題点などを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、電動キックボードで事故に遭った場合における解決の流れ
電動キックボードに乗車している最中に交通事故に遭った場合、法律上問題となるのは、通常の交通事故と同様に不法行為(民法第709条)に基づく損害賠償です。
そのため、電動キックボードでの交通事故についても、基本的には通常の交通事故と同様に、相手方に損害賠償を請求する権利が生じます。
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(1)ケガが完治した場合における解決の流れ
電動キックボードの乗車中に交通事故に遭った場合、通常の交通事故と同様に、まずは以下の対応を取ります。
- 警察に連絡する
- 相手方の連絡先を聞く(損害賠償に関する連絡を取るため)
- 病院に行って治療を受ける
この後の流れは、ケガが完治するか、後遺症が残るかによって異なります。
ケガが完治した場合、その段階で加害者側との示談交渉ができるようになります。
多くの場合、加害者は任意保険に加入しているため、示談交渉の相手は任意保険会社となる可能性が高いです。加害者側の任意保険会社が保険金の減額を狙い、不当な示談条件を提示してくる可能性もありますので、弁護士を代理人として示談交渉に臨むのがよいでしょう。無事に示談が成立すれば、任意保険会社と和解合意書を締結して、その内容に従って保険金が支払われますが、もし示談が不成立となった場合には、訴訟を通じて引き続き損害賠償を請求することになります。
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(2)後遺症が残った場合における解決の流れ
ケガが完治せず後遺症が残ってしまった場合は、示談交渉を開始する前に「後遺障害等級」の認定を受けます。
後遺障害等級とは、後遺症の部位、症状及び程度などに応じて認定される等級です。等級によって、加害者側に請求できる後遺障害慰謝料や逸失利益の金額が大きく変わるため、適正な後遺障害等級の認定を受けることが非常に重要です。
後遺障害等級認定の申請は、自賠責保険会社を通じて行います。
加害者側の任意保険会社に任せることを事前認定、被害者自らが申請を行うことを被害者請求といいます。
加害者側の任意保険会社に任せることもできますが、被害者自ら申請を行う被害者請求のほうが有利に手続きを進められる可能性は高いので、弁護士のサポートを受けながら被害者請求により後遺障害等級認定を申請することをおすすめします。認定を受けたら、先ほど解説した完治したあとの流れと同様、示談交渉や損害賠償の請求を行います。
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(3)相手方が任意保険に加入していない場合は?
交通事故の相手方が任意保険に加入していない場合、相手方本人と示談交渉を行わなければなりません。しかし、相手方に法律の知識がなく、損害賠償の相場がわからないケースもあるため、示談交渉が難航する可能性があります。
そのため、弁護士にサポートを依頼し、訴訟を起こすことも視野に入れて損害賠償請求を行いましょう。
2、電動キックボードの事故で請求できる損害賠償の項目
電動キックボードの乗車中に交通事故に遭い、電動キックボードが壊れ、さらにご自身もケガをした場合、相手方に対して、以下の損害賠償を請求することが可能です。
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(1)物的損害(物損)に関する損害賠償の項目
電動キックボードが壊れたことについては、物的損害(物損)として修理費を請求できます。また、破損が著しく修理が不可能な場合には、事故当時の電動キックボードの評価額で損害賠償を請求することができます。
なお、仮に電動キックボードを買い替えるとしても、新品と中古品では価格が異なるため、買い替え代金の全額を賠償請求できるということではない点にご注意ください。
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(2)人身損害に関する損害賠償の項目
ご自身がケガをした場合、人身損害として以下の損害賠償を請求できます。
医療費
診察料、手術費用、薬剤費用、装具費用など、ケガの治療にかかった金額を加害者へ請求することが可能です。
入院中の日用品購入費用
1日あたり、自賠責保険の基準で1100円、弁護士基準で参考にされる損害賠償額算定基準(赤い本)では1500円とされています。
付き添い費用
入院や通院時に付き添いが必要となった場合、近親者であれば一定の金額、職業付添人であれば原則として実費の請求が可能です。
通院交通費
診察や治療で通院する際にかかった、電車やバス、ガソリン代などの交通費を、通院日数分請求できます。
休業損害
ケガの治療のために仕事を休んだことによって、得られなかった収入や賃金を請求できます。
入通院慰謝料
事故によるケガが原因で入院や通院を強いられ、精神的苦痛を与えられたことに対し、損害賠償を請求できます。
後遺症慰謝料
治療を受けても、首の痛みやしびれなどの後遺症が残ってしまった場合、慰謝料を請求することが可能です。
後遺症による逸失利益
交通事故に遭い、後遺症が残ったことで事故前と同様に労働することができなくなった場合、本来得られていたはずの収入を請求することができます。
3、電動キックボードの事故特有の過失割合に関する問題点
電動キックボードの乗車中に発生した交通事故は、基本的に通常の交通事故と同様の手続きで解決を目指します。
しかし、特に過失割合に関しては、電動キックボードに特有の問題点があることに注意が必要です。近い将来に施行される改正道路交通法の内容を踏まえつつ、加害者側との示談交渉に向けて適切な主張構成を組み立てましょう。
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(1)電動キックボードは位置づけが不明確|過失割合で揉めやすい
現在の道路交通法では、電動式モーターの定格出力が0.60キロワット以下の電動キックボードは原動機付自転車に該当しているため、バイクと同様の扱いを受けるということになります(令和4年10月現在)。なお、0.60キロワットを超える場合は、その出力に応じて、道路交通法上の普通自動二輪車などに該当します。
しかし、電動キックボードは位置づけがまだ不明確のため、自動車と事故を起こした際に過失割合をどのようにすべきか、当事者間や相手が加入している保険会社と揉める可能性が高いといえます。
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(2)電動キックボード側の過失割合が加算される可能性がある行為
先ほど解説したように、現在の道路交通法上、電動キックボードはバイクと同様の扱いを受けることになります。そのため、電動キックボードを運転している側に以下のような違法行為が認められる場合には、過失割合が加算される可能性があります。
- 法定速度(現行法では時速30km/h)を超過していた
- 二段階右折を怠った
- 第一通行帯(一番左の車線)の左側を走行していなかった
- 二人乗りをしていた
- 酒気を帯びて運転をしていた など
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(3)改正法により電動キックボードの規制が緩和|過失割合への影響は?
令和4年4月に国会で成立した改正道路交通法では、電動キックボードは「特定小型原動機付自転車」と位置づけられました。
改正法は未施行(令和5年1月現在)ですが、令和6年4月までには施行される予定となっています。特定小型原動機付自転車に該当するのは、原動機付自転車のうち、以下の要件を満たす電動キックボードです。
- 電動であること(電動機の定格出力が0.60キロワット以下であること)
- 最高速度20km/h以下であること
- 長さ190cm以下、幅60cm以下であること
- 必要な保安部品が装着されていること
現行法における「原動機付自転車」から、改正法における「特定小型原動機付自転車」へ移行すると、電動キックボードの運転・利用者に対する規制が以下のとおり変化します。
原動機付自転車(現行法) 特定小型原動機付自転車(改正法) 免許証の要否 原動機付自転車の運転免許が必要 不要 ヘルメットの着用 義務 努力義務 走行場所 車道のみ 車道・自転車道・歩道
(自転車通行可の歩道に限る)速度制限 30km/h 20km/h(歩道は時速6km) 年齢制限 運転免許に準ずる 16歳以上
ただし、改正法による電動キックボードの取り扱いの変化が、電動キックボードによる交通事故の過失割合にどのような影響を与えるかは未知数です。
実際には、電動キックボード側の交通違反の有無や、相手方との危険性のバランスなどを考慮して、起きた事故それぞれに過失割合が判断されるものと思われます。
4、電動キックボードで交通事故に遭った場合は弁護士にご相談を
電動キックボードの乗車中に交通事故に遭ってしまったら、お早めに弁護士へ相談することをおすすめします。弁護士を代理人として示談交渉に臨むことで、加害者側の主張に惑わされることなく、適正額の損害賠償を請求できます。
電動キックボードの事故で、揉めやすい過失割合の論点についても、弁護士が事故状況を丁寧に分析したうえで、依頼者に有利な形で解決できるようにサポートします。
万が一、示談交渉が決裂して、損害賠償請求訴訟に発展した場合でも、弁護士に対応を一任できるため安心です。
電動キックボードの交通事故については、お早めに弁護士までご相談ください。
5、まとめ
電動キックボードによる交通事故は、基本的に通常の交通事故と同様の流れで解決を目指します。しかし、過失割合を中心に特有の争点が存在するため、事故に遭った際には弁護士へのご依頼をおすすめします。
電動キックボードの運転中に交通事故に遭い、加害者に対して損害賠償を請求したい方は、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。