交通事故における症状固定とは? 決め方や症状固定後の手続き

更新:2025年01月27日 公開:2025年01月27日
治療・症状固定
交通事故における症状固定とは? 決め方や症状固定後の手続き
交通事故によって怪我をしてしまったとき、怪我の部位や程度によっては治療を継続してもこれ以上症状の改善が見込めない状態になることがあります。このような状態を「症状固定」といいます。

症状固定のタイミングは、慰謝料や後遺障害等級認定などに影響を与えます。そのため、適切なタイミングで症状固定の判断をすることが大切です。

今回は、交通事故における症状固定の決め方や症状固定後の手続きについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、交通事故における症状固定とは?

交通事故における症状固定とはどのようなものなのでしょうか。以下では、症状固定に関する基本事項を説明します。

  1. (1)症状固定とは

    症状固定とは、交通事故による怪我が、これ以上治療を継続しても改善の見込みがない状態になることをいいます。

    怪我の程度によっては、治療を継続しても「完治」とはならず、痛み、しびれ、可動域の制限など何らかの後遺症が生じてしまうことがあります。このような状態になると「症状固定」と判断され、残存している症状については後遺障害等級認定の手続きを進めていくことになります。

  2. (2)症状固定はいつ、誰が決めるか

    症状固定は、怪我の治療を担当している医師が判断します。
    具体的な症状固定時期は、怪我の程度や治療の経過などから判断されますので、ケース・バイ・ケースです。

    そのため、医師と相談したうえで決めていくことになりますが、場合によっては、まだ強い痛みがあり、治療により徐々に緩和されている状況にもかかわらず、医師から「そろそろ症状固定ですね」と言われることもあり得ます。しかし、強い痛みがあるような場合は、その旨を医師に伝えることが大切です。症状固定は、後述する後遺障害等級認定などにおいて重要な要素となりますので、ご自身の怪我の状態や回復の程度は医師にしっかりと伝えるようにしましょう。

  3. (3)症状固定のタイミングが重要な理由

    症状固定は、交通事故の賠償金を決める際の重要な要素となります。
    損害の項目は症状固定前の「傷害部分」と、症状固定後の「後遺障害部分」に分かれています。
    たとえば、治療費、休業損害、慰謝料などの傷害部分の損害は、症状固定日までの治療状況や通院状況などを踏まえて計算されます。症状固定後に治療や治療のために仕事を休んだとしても、事故との因果関係は認められませんので、治療費や休業損害を請求することはできません。

    また、症状固定時期は、後遺障害等級認定の際に考慮される要素のひとつになりますので、症状固定が早すぎると、適正な後遺障害等級認定を受けられないリスクがあります。後遺障害等級は、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益の金額(「後遺障害部分」の損害)にも影響しますので、適正な後遺障害等級認定が受けられなければ、賠償金にも影響が生じてしまうため注意が必要です。

2、保険会社から症状固定を打診されたら、どうすればいい?

保険会社から症状固定を打診されたときはどのように対応すればよいのでしょうか。

  1. (1)治療費の打ち切りは症状固定ではない

    加害者側が任意保険に加入している場合、被害者が通院した際の治療費は、基本的に加害者側の保険会社が支払ってくれます。そのため、被害者自身が窓口で治療費を負担することなく、治療を行うことができます。

    しかし、治療期間がある程度長くなると、保険会社から「そろそろ治療費を打ち切ります」と打診されることがあります。このような治療費の打ち切りの打診を受けると、急いで医師から症状固定の診断を求めなければいけないと考えてしまうかもしれません。しかし、これはあくまでも加害者側の保険会社が支払っている治療費の支払いを打ち切るというもので、症状固定になったわけではありません。そのため、保険会社から治療費の打ち切りを打診されても、焦って症状固定の診断を求めないようにしましょう

  2. (2)医師と相談しながら治療を継続する

    保険会社から症状固定を打診されたとしても、症状固定の判断をするのは保険会社ではなく、あくまで治療を担当している医師ですので、保険会社からの打診には応じる必要はありません。まだ痛みやしびれなどが残っており、治療により効果が出ているのであれば医師にその旨を伝えて治療を継続するようにしましょう。

    なお、保険会社により治療費が打ち切られてしまった場合には、ご自身の健康保険に切り替えたうえで治療を継続することも可能です。できる限り負担にならない方法で治療を行っていきましょう。

  3. (3)保険会社から何度も連絡がくる、症状固定扱いにされた場合などは弁護士に相談する

    保険会社から何度も症状固定に関する連絡がくるような状況の場合、被害者としてもどのように対応すればよいかわからず困惑してしまいます。また、保険会社が医師に働きかけて症状固定扱いにするよう求めてくることもあります。

    このように被害者自身で対応するのが難しいと感じる場合は、すぐに弁護士に相談するようにしましょう。弁護士であれば、被害者の代理人として保険会社と交渉をすることができますので、被害者本人の負担を軽減することができます。また、医師の協力を得ながら治療の必要性を訴えていくことで、保険会社に治療費の支払いをしてもらいながら治療継続を求めていくことも可能です。

ご相談無料※
全国対応
電話で相談する
0120-49-5225
平日 9:30~21:00 | 土日祝 9:30~18:00
メールで相談する
※営業時間外はメールにてお問い合わせください。
弁護士費用特約を利用されてご依頼となった場合には、特約から1時間1万1千円(税込)の相談料を頂戴いたしますが、お客様のご負担はございません。

3、症状固定後の手続き|後遺障害等級認定の申請方法

医師から症状固定と判断された後は、後遺障害等級認定の申請を行う必要があります。以下では、後遺障害等級認定の申請方法について説明します。

  1. (1)後遺障害等級認定とは

    後遺障害等級認定とは、事故による怪我で生じた後遺症の程度を専門の審査機関により認定してもらう手続きをいいます。後遺障害等級には、第1級から第14級まであり、数字が少ないほど重い後遺障害となります。

    後遺障害等級認定の手続きにより、後遺障害等級が認定されると後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を請求することができます。これらの損害項目は、認定された後遺障害等級に応じて金額が変動しますので、適切な賠償金の支払いを受けるには、適正な後遺障害等級認定を受けることが重要になります。

  2. (2)後遺障害等級申請の方法

    後遺障害等級申請の方法には、事前認定と被害者請求の2種類の方法があります。以下では、それぞれの方法について説明します。

    ① 事前認定
    事前認定とは、後遺障害等級申請に必要となる書類の収集や作成、提出などのすべての手続きを加害者側の保険会社に任せる方法です。

    事前認定の方法を選択すれば被害者側にはほとんど負担なく後遺障害等級申請の手続きを進められるというメリットがあります。しかし、加害者側の保険会社は、事故による賠償金の支払いをしなければならない立場にありますので、被害者が有利な等級で認定されるために積極的に行動してくれるとは限らない点に注意が必要です。

    ② 被害者請求
    被害者請求とは、後遺障害等級申請に必要となる書類の収集や作成、提出をすべて被害者自身で行う方法です。

    事前認定に比べて被害者の負担が大きくはなりますが、被害者自身で提出する書類の選別ができるため透明性が高く、納得いく資料をそろえて提出することで適正な後遺障害等級認定が受けられる可能性が高くなります。

    提出する資料が同じであれば事前認定でも被害者請求でも結論は変わりません。しかし事前認定では、加害者側の保険会社がどのような書類を提出したのかはわかりませんので、適正な後遺障害等級認定を受けるためには、被害者請求の方法を選択するのがおすすめです。

4、症状固定や後遺障害等級に関するお悩みを弁護士に相談するメリット

症状固定や後遺障害等級に関してお悩みの方は、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談する具体的なメリットは以下の通りです。

  1. (1)保険会社による治療費の打ち切りや症状固定に対抗できる

    保険会社から治療費の打ち切りや症状固定の打診をされると、被害者自身ではどのように対応すればよいかわからず、誤った対応をしてしまうリスクがあります。

    弁護士であれば、保険会社からの治療費の打ち切りや症状固定に対して、法的観点から主張していくことができますので、そのようなリスクを回避できる可能性が高まります。弁護士が対応することで、保険会社に対して治療費の支払いの継続を認めさせたり、状況に応じて症状固定時期を遅らせたりすることもできますので、ご自身で対応するのが難しいと感じるときは、すぐに弁護士に相談するようにしてください。

  2. (2)後遺障害等級認定のサポートができる

    前述の通り、後遺障害等級申請の方法には、事前認定と被害者請求の2つの方法がありますが、適正な後遺障害等級認定を受けるには、被害者請求の方法を選択するのがおすすめです。

    被害者請求は、すべての手続きを被害者自身で行わなければならないといった負担がありますが、弁護士に依頼をすれば、ほぼすべての手続きを弁護士に任せることができますので、事前認定と比べてもそれほど負担に差はありません。また弁護士は、治療段階から適正な後遺障害等級認定が受けられるようサポートできますので、有利な等級認定が受けられる可能性が高まります

  3. (3)損害賠償の増額が期待できる

    交通事故の慰謝料の算定基準には、以下の3つの基準があります。

    • 自賠責保険基準
    • 任意保険基準
    • 裁判所基準(弁護士基準)

    3つのうち、どの基準を用いて慰謝料を計算するかによって、金額は大きく異なります。一般的には、自賠責保険基準≦任意保険基準<裁判所基準の順で慰謝料の金額は大きくなります。

    ただし、裁判所基準を利用して保険会社と交渉することができるのは、弁護士に示談交渉を依頼した場合に限られます。すなわち、弁護士に示談交渉を依頼することで、慰謝料額を増額できる可能性があるということです。

    保険会社から提示された慰謝料額に納得できないときは、弁護士に依頼することで慰謝料を増額できる可能性がありますので、示談をする前に一度弁護士に相談することをおすすめします。

5、まとめ

症状固定のタイミングは医師が判断するもので、保険会社が決めるものではありません。そのため、保険会社から症状固定をするように求められたとしても、それに応じるのではなく、まずは、医師と相談をしながら治療の効果が期待できなくなるまで治療を継続していくようにしましょう。

また、症状固定後は後遺障害等級認定の手続きが必要になります。適正な後遺障害等級認定を受けるには、専門家である弁護士のサポートが必要になりますので、早めに弁護士に相談することをおすすめします

症状固定や後遺障害に関するお悩みは、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

ご相談無料※
全国対応
電話で相談する
0120-49-5225
平日 9:30~21:00 | 土日祝 9:30~18:00
メールで相談する
※営業時間外はメールにてお問い合わせください。
弁護士費用特約を利用されてご依頼となった場合には、特約から1時間1万1千円(税込)の相談料を頂戴いたしますが、お客様のご負担はございません。
この記事の監修者
外口 孝久
外口 孝久
プロフィール
外口 孝久
プロフィール
ベリーベスト法律事務所
パートナー弁護士
所属 : 第一東京弁護士会
弁護士会登録番号 : 49321

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

同じカテゴリの記事

同じカテゴリ一覧へ戻る 交通事故コラム一覧へ戻る
メールで相談 24時間受付 電話で無料相談 平日9:30~21:00 土日祝9:30~18:00