交通事故で鎖骨変形が生じたら? 後遺障害等級・慰謝料について解説
鎖骨変形が認められる場合には、申請をすることで後遺障害等級が認定される可能性があります。後遺障害等級認定を受けることによって、事故の加害者に対して「後遺障害慰謝料」の請求が可能です。
本コラムでは、鎖骨変形の症状や後遺障害等級の認定ポイント・慰謝料相場などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、交通事故で鎖骨変形が生じる原因は? どんな症状がある?
交通事故による被害で、鎖骨が変形してしまうこともあるでしょう。以下では、鎖骨変形が生じる原因や主な症状について解説していきます。
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(1)交通事故で鎖骨変形が生じる原因
交通事故による鎖骨変形の多くは、鎖骨骨折後の「変形治癒(変形癒合)」が原因です。変形治癒とは、骨折が治る過程で、正常な形とは異なる形で骨が癒合してしまうことを指します。
鎖骨はもともと、転倒や衝突などで肩や腕に強い衝撃を受けた際、折れてしまいやすい骨です。骨折後は、包帯やバンドなどで固定する保存療法、もしくは手術で固定する手術療法で治療しますが、曲がった状態で骨が癒合する変形治癒が生じることがあります。 -
(2)鎖骨変形が生じたときの主な症状
鎖骨変形が生じたときに現れる主な症状は、以下のとおりです。
- 外見上の変形
- 肩関節の可動域制限
- 痛みやしびれなどの神経障害
このように、見た目の変化だけではなく、腕の上げ下げが困難になる、慢性的な痛みが残る、といったおそれもあります。
鎖骨変形は日常生活に支障をきたすこともある後遺障害なので、適切な対応と評価が求められます。
2、鎖骨変形で認定される可能性がある後遺障害等級
交通事故によって鎖骨に変形が残った場合、後遺障害等級の認定を受けられる可能性があります。後遺障害等級とは、後遺障害の程度を1級から14級の等級で分類した制度です。数字が小さいほど、症状が重いことを指します。
後遺障害が認定されると、等級に応じた慰謝料などを請求可能です。ただし、申請さえすれば当然に適切な等級が認定されるわけではないため、客観的な資料や診断書をもとに適切に申請して認定を受ける必要があります。
以下では、鎖骨変形で認定される可能性のある後遺障害等級と、認定を受けるためのポイントを確認していきましょう。
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(1)鎖骨変形で認定される可能性のある後遺障害等級
鎖骨に関する後遺障害は、大きく「変形障害」「神経障害」「機能障害」の3つにわかれます。以下では、それぞれで認定される可能性のある後遺障害等級の内容について確認していきましょう。
① 変形障害
鎖骨の変形障害で認定される可能性のある後遺障害等級は、以下のとおりです。- 12級5号|鎖骨に著しい変形を残すもの
「著しい変形」とは、裸になった状態で明らかにわかる程度の変形を意味します。したがって、レントゲン写真でしか変形が確認できない状態だと、著しい変形には該当しません。
② 神経障害
鎖骨の神経障害で認定される可能性のある後遺障害等級は、以下のとおりです。- 12級13号|局部に頑固な神経症状を残すもの
- 14級9号|局部に神経症状を残すもの
治療後も痛み・しびれなどの神経症状が残った場合、それが医学的に証明又は説明できるものであれば、後遺障害等級認定の対象となります。神経症状が強く、持続的であるほど高い等級が認定されやすくなります。
③ 機能障害
鎖骨の機能障害で認定される可能性のある後遺障害等級は、以下のとおりです。- 8級6号|1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
- 10級10号|1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
- 12級6号|1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
鎖骨の骨折によって肩関節の可動域が制限されると、機能障害として後遺障害等級が認定される場合があります。等級は、ケガをしていない側の可動域と比べて、どの程度動かせるかによって決まります。
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(2)鎖骨変形で後遺障害等級認定を受けるポイント
鎖骨変形が生じていたとしても、適切に申請しなければ認定を受けられなかったり、低い等級で認定されたりするおそれがあります。
交通事故による鎖骨変形で、適切な後遺障害等級認定を受けるポイントは、以下の3つです。
① 鎖骨の変形がわかるように写真撮影をする
鎖骨変形が視認できるかどうかは、後遺障害等級の認定に直結する要素です。
左右の鎖骨を比較する写真や、変形部分をアップで撮影した写真などを提出することで、証明しやすくなります。
② 後遺障害診断書に変形があることを記載してもらう
診断書に「鎖骨に変形がある」と明確に記載してもらうことは、後遺障害等級認定を受けるうえで非常に重要です。
医師が変形を認識していない、または診断書に記載し忘れている場合、後遺障害等級の認定が困難になる可能性があります。自分で交渉することも可能ですが、弁護士であれば、法的な観点から鎖骨変形があることを記載できるか交渉ができます。
③ 鎖骨変形以外の症状も忘れないようにする
鎖骨変形そのものだけでなく、痛みやしびれ・肩の動きの悪さなどの症状も後遺障害等級認定の対象となります。
併発している症状があれば、忘れずに記録して主張・立証していくことで、適正な等級が認定されやすくなるでしょう。
3、鎖骨変形で慰謝料請求する場合の相場は? ほかに請求できるお金
交通事故によって鎖骨変形などの後遺障害が残った場合、その損害に対する慰謝料を請求できます。また、症状によっては慰謝料以外の損害賠償を請求できる場合もあります。
以下では、後遺障害慰謝料の相場と、慰謝料以外に請求できる損害賠償について詳しく見ていきましょう。
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(1)鎖骨変形の後遺障害慰謝料の相場
慰謝料の算定基準には、「自賠責保険基準」「任意保険基準」「裁判所基準(弁護士基準)」の3つがあります。一般的に、自賠責基準はもっとも低額で、裁判所基準がもっとも高額な基準です。
任意保険基準は保険会社によって算定方法が異なるため、ここでは自賠責保険基準と裁判所基準の慰謝料相場を紹介します。鎖骨変形で認定されうる等級の後遺障害慰謝料の相場は、以下のとおりです。後遺障害等級 自賠責保険基準の慰謝料 裁判所基準の慰謝料 8級 331万円 830万円 10級 190万円 550万円 12級 94万円 290万円 14級 32万円 110万円 弁護士に依頼すると、裁判所基準で後遺障害慰謝料を算定できるため、請求額を増額できる可能性が高くなります。
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(2)鎖骨変形で慰謝料以外に請求できるお金
後遺障害が残った場合、実際にかかった治療費や慰謝料だけではなく、「後遺障害逸失利益」も請求できる可能性があります。後遺障害逸失利益とは、後遺障害によって労働能力が低下した際に、将来的に失われるとされる収入を補償するものです。
ただし、鎖骨の変形障害だけでは仕事への影響が少なく、逸失利益が認められないケースも多いでしょう。そのため、神経障害や機能障害によって仕事に支障が出ていることを、具体的に主張・立証していくことがポイントです。
鎖骨変形で逸失利益を主張する際は、交通事故問題に詳しい弁護士への相談も検討してみてください。
4、交通事故で後遺障害が残ったら弁護士に相談を
鎖骨変形などの後遺障害が残った場合は、交通事故問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談することで得られる主なメリットは、以下の3つです。
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(1)適正な後遺障害等級認定を受けられる可能性が高くなる
弁護士に相談すると、適正な後遺障害等級認定を受けられる可能性が高まります。
後遺障害等級は、症状があったとしても必ず認定されるわけではありません。どのような証拠を提出するか、診断書にどう記載されているかなどによって認定結果が左右されます。
弁護士は法律知識や過去の認定実例をもとに、どのような資料を提出すべきかを具体的にアドバイスできます。後遺障害認定の申請をスムーズに進めたい場合にも、弁護士への相談は有効です。 -
(2)保険会社との交渉をすべて任せられる
弁護士に依頼することで、加害者側の保険会社との交渉をすべて任せられます。
交通事故の被害者が自ら保険会社と交渉すると、精神的な負担が大きくなりがちです。また、法律の知識がなければ、提示された条件が本当に妥当なものかを判断するのは困難でしょう。
弁護士は代理で交渉を行えるため、自分ひとりで直接やり取りする必要がなくなります。これによって、交渉によるストレスや不利な条件での合意を回避できるでしょう。 -
(3)慰謝料を増額できる可能性がある
弁護士に依頼すると、受け取れる慰謝料が増える可能性があります。
保険会社が提示する慰謝料は、「任意保険基準」と呼ばれる基準で算定されます。一方、弁護士が介入して示談交渉を行う場合は、基準額が高く、被害者に有利な「裁判所基準」が適用されるため、慰謝料が増額されることが一般的です。
特に後遺障害等級認定を受けた場合は、同じ等級であっても算定基準によって後遺障害慰謝料の金額に大きな差が生じます。被害の程度に応じた適正な慰謝料を受け取りたい場合には、弁護士へ相談することがおすすめです。
5、まとめ
交通事故によって鎖骨が変形してしまった場合、その変形は後遺障害として認定される可能性があります。
後遺障害等級が認定されれば、後遺障害慰謝料の請求が可能です。しかし、後遺障害等級の認定を受けるには、証拠となる資料をそろえて申請する必要があります。
「認定が受けられない」「低い等級が認定される」などのリスクを避けるためにも、できるだけ早い段階で弁護士に相談しましょう。弁護士であれば、後遺障害等級認定のサポートだけでなく、保険会社との代理交渉も可能です。
鎖骨変形による後遺障害等級認定や示談交渉で悩んだら、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所 交通事故専門チームの弁護士にご相談ください。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

