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交通事故の慰謝料は裁判所基準(弁護士基準)で請求すべき理由と方法

更新日:2022年11月15日 慰謝料・損害賠償
交通事故に遭い、ケガなどを負った場合は、慰謝料を受け取ることができます。

交通事故の慰謝料には、自賠責基準、任意保険基準、裁判所基準(弁護士基準)という3つの基準があり、どの基準を用いるかによって受け取れる慰謝料の金額が大きく変わる可能性があります。中でも、裁判所基準(弁護士基準)に基づいて算定された慰謝料が一番高額になるのが一般的です。

このコラムでは、3つの基準の違いと、なぜ裁判所基準(弁護士基準)の慰謝料が高額になるのかについて、弁護士が詳しく解説します。

1、裁判所基準(弁護士基準)って何?

交通事故に遭い、ケガをすると、病院に通って治療をしなければなりません。入院はもちろん、日常生活を送りつつ通院するだけでも大変なことですし、痛みを我慢しながら暮らすのは誰にとっても苦しいものです。また、残念ながらケガが完治せず、いわゆる後遺障害が残ることもあります。このように、ケガや通院せざるを得なくなったこと、後遺障害が残ってしまったことなどによる精神的苦痛について支払われるのが交通事故の慰謝料です

そして、交通事故の慰謝料を算出する基準には、自賠責基準・任意保険基準・裁判所基準(弁護士基準)という3つがあります。

原則として、自賠責基準がもっとも低く、裁判所基準がもっとも高くなります。それぞれの違いについて詳しく説明していきます。

  1. (1)自賠責基準

    自賠責基準とは、自賠責(自動車損害賠償責任保険)という制度によって定められた慰謝料の基準です。自賠責保険は、車の所有者が加入を義務付けられている強制加入保険制度です。

    計算の仕方としては画一的なものが多く、実際に治療に通った(入院した)日数や認定された後遺障害の等級などによって、明確な金額基準が設定されています。

    しかし、自賠責保険は、あくまで被害者に対する最低限の補償を目的とした制度であるため、算定される金額は、3つの基準の中でもっとも低くなるのが通常です。そのため、自賠責基準で算定した賠償金だけでは、十分な補償を受けられないのが一般的です。

  2. (2)任意保険基準

    任意保険基準とは、加害者が加入している任意保険会社が独自に定める基準です。
    自賠責保険との違いは、任意保険会社ごとによって慰謝料の算定基準が異なっており、計算方法などは公開されていないという点です。したがって、実際に交渉してみなければ、いくらになるかはわからないというのが任意保険基準の実体なのです。
    一般的には、自賠責基準に多少上乗せをした金額が任意保険基準の慰謝料相場とされており、次にご紹介する裁判所基準と比較すると、低額になります。

  3. (3)裁判所基準(弁護士基準)

    裁判所基準とは、過去の交通事故における裁判例などの集積から算出した金額が基準になります。

    なお、裁判所基準というと、必ず裁判をしないといけないような印象を受けるかもしれませんが、弁護士を代理人として選任さえしていれば、裁判をしなくても裁判所基準の慰謝料を請求し、これをベースに交渉することができます。弁護士基準とも呼ばれるのは、このためです。

    裁判所基準は基準額が公開されていますが、自賠責基準ほどしゃくし定規に定まっているわけではありません。言い換えれば、被害者の実態に合わせて適正な金額を算定するために、交渉の余地があるということです。
    弁護士に依頼したことによって、受け取る慰謝料の額が、自賠責保険基準の2倍、または、それ以上になるケースもあります

2、裁判所基準(弁護士基準)の算定基準とは

慰謝料の裁判所基準には、参考となる資料が複数あり、資料によって基準が異なります。具体的には、赤本、青本、黄本、緑本と呼ばれる4つの基準です。

  1. (1)赤本

    赤本とは、日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』のことを指します。表紙の色が赤であることから、赤本と呼ばれています。
    慰謝料の金額だけでなく、交通事故に関する過去の裁判例も掲載されていて、毎年発行されています。赤本に掲載されている慰謝料の基準額は、東京地裁の裁判基準として採用されていますが、東京以外の地域でも広く利用されており、裁判所基準の基本ともいえる本です

  2. (2)青本

    青本とは、日弁連交通事故相談センターが発行している『交通事故損害額算定基準』のことです。こちらは、表紙の色が青いことから青本と呼ばれています。赤本と同じくさまざまな損害賠償額の算定方法が記載されており、定期的に発行されています。

  3. (3)緑本・黄本

    赤本、青本以外には、一部の地域に特化した緑本、黄本もあります。

    緑本とは、大阪弁護士会交通事故委員会が発行する『交通事故損害賠償額算定のしおり』のことです。大阪の裁判所では、この緑本の基準が採用されています。
    黄本とは、日弁連交通事故相談センター愛知県支部が発行する『交通事故損害賠償算定基準』を指し、緑本同様に地域限定の慰謝料基準として用いられています。

    このように、一言で裁判所基準(弁護士基準)といっても、4つ種類がありますが、現状では赤本がもっともスタンダードと考えてよいでしょう

3、裁判所基準(弁護士基準)だと慰謝料が増額する理由

  1. (1)基準によって大きな違いがある

    自賠責保険は強制加入保険で、交通事故被害者救済のための最低限の補償を目的としたものです。そのため、被害者の実際の損害を全て補償するというものではなく、あくまで最低限の補償しか受けられません。

    任意保険基準は、保険会社が自由に決めているものです。任意保険会社は、営利企業であるため、できるだけ低い金額で示談することを目指します。そのため、任意保険会社は、自賠責基準よりは少し高い金額ではあるものの、裁判所基準よりもはるかに低い金額を提示するということも少なくありません。

    このように、どの基準を用いるかによって、慰謝料の金額は大きく変わってきます。

  2. (2)実際にどの程度の違いがあるのか

    では、実際に3つの基準でどれくらいの金額の違いが出てくるのでしょうか。

    交通事故によるケガと一言でいっても、数日で治るような軽傷の場合もあれば、骨折を伴うような重症の場合もあります。慰謝料は、ケガをしたことによる肉体的・精神的苦痛を慰謝するものなので、一般的にはケガが重いほうが金額も上がる仕組みになっています。

    では、どの程度の違いが生じるのか、具体的な例を元に確認してみましょう。

    まず、ケガをしたことそのものについて支払われる慰謝料(傷害慰謝料)は、原則には入通院の期間を基礎としてそれぞれの算定基準をもとに算出されます。


    自賠責保険基準

    原則、以下の計算式で算出されます。
    「実治療日数×2」または「治療期間(事故に遭ってから治療を終えるまでの日数)」のうち少ない方×4300円


    裁判所基準(弁護士基準)

    裁判所基準では、原則として以下の算定表を基に入通院慰謝料が計算されます。

    ● 他覚所見があるケガをしている場合→入通院慰謝料 別表1

    「裁判所基準(いわゆる赤い本):原則」(単位:万円)

    ● むち打ちなど軽症で他覚所見がない怪我の場合→入通院慰謝料 別表2

    「裁判所基準(いわゆる赤い本):むち打ち症等で他覚所見がない場合」(単位:万円)

    算定表を見ただけでは、実際にどれぐらい異なるのかをイメージしづらいと思いますので、事例を紹介します。本ケースでの裁判所基準は赤本をベースとします。
    任意保険基準については、一例としてご参照ください。

    ①  むち打ち症のみなど軽傷のケースにおける通院慰謝料例
    足を捻挫し、事故当日から30日間で治療は終了。30日の間に計10回通院した場合。

    自賠責基準:8万6000円
    任意保険基準:12万3000円
    裁判所基準:19万円前後

    ② やや重いケガを負ったケースにおける通院慰謝料例
    右鎖骨を折り、入院はせず事故当日から8か月間で治療は終了。8か月の間に、40回通院した場合。

    自賠責基準:34万4000円
    任意保険基準:75万円
    裁判所基準:132万円前後

    このように、どの基準で交渉を進めるのかによって大きな違いが生じるため、3つの基準のどれを採用するかが非常に重要なのです

4、覚えておきたい交通事故における慰謝料の種類

ここまで、慰謝料の基準について解説しました。次に、交通事故事案における慰謝料の種類について説明していきたいと思います。交通事故の慰謝料の種類は、原則として3つの種類にわかれています。ケガの状況などによって、請求できる慰謝料が異なることも理解しておくことが大切です

  1. (1)3つの慰謝料

    ● 入通院(傷害)慰謝料
    人がケガをした場合に生じる肉体的・精神的苦痛に対して請求できる慰謝料です。入通院慰謝料は、ケガの重さや入通院の期間、実際に治療を行った日数などを基礎として算定されます。基本的には、ケガが重く、治療期間が長いほど金額が上がり、被害者の年齢や立場などは原則関係ありません。

    ● 後遺障害慰謝料
    事故でケガをした場合、治療を継続しても必ずしも治るとは限りません。十分な治療をしても、機能障害や神経症状などの後遺症をもたらすケースがあるでしょうこういった場合の肉体的・精神的な苦痛に対して支払われるのが、後遺障害慰謝料です

    後遺障害は、1級から14級までに等級が区分されています。
    後遺障害慰謝料も、被害者の年齢や立場によって変わることはなく、後遺障害の重さによって判断され、重さに比例して慰謝料額は高くなります。

    ● 死亡慰謝料
    事故によって被害者が死亡してしまった場合、死亡慰謝料が支払われます。死亡慰謝料の場合は、被害者の立場によって基準金額に差が設けられています。
    たとえば、裁判所基準で用いられる赤本で算定した場合は、次の金額が基準となります。

    一家の支柱:2800万円
    母親・配偶者:2500万円
    その他:2000万円~2500万円

  2. (2)慰謝料以外にも請求できるものがある

    交通事故でケガをした場合は慰謝料を請求できますが、慰謝料は示談金(損害賠償金)の一部です。示談金として支払われるものは、慰謝料以外にも複数あります。たとえば、仕事を休んだ場合の休業損害や治療費、通院にかかった交通費、通院に付添いが必要だった場合の付添費、後遺障害が残った場合の逸失利益なども請求できる可能性があります。

    ご自身のケースで、どこまで請求ができるのかを確認、検討するために弁護士に相談してみるとよいでしょう。

  3. (3)利用したい「弁護士費用特約」

    交通事故の示談交渉を被害者自身で進めていくことはとても大変なことです。とはいえ、弁護士に依頼をするのには費用がかかるため、二の足を踏む方も少なくないでしょう。
    そのようなときは、ご自身が加入している保険に「弁護士費用特約」がついていないかを確認してみてください。弁護士費用特約とは、弁護士に依頼した場合の弁護士費用を一定額まで保険会社が補償してくれるというサービスです。
    弁護士費用特約がついている場合は、ご自身の負担なく弁護士に依頼できるケースが大半ですので、弁護士への依頼を積極的に検討するべきでしょう

    弁護士費用特約がついてない場合は、費用をご自身で支払うことになりますが、弁護士費用を差し引いたとしても、弁護士に依頼したほうが受け取れる示談金が増えるケースも多いです。ご自身の自動車保険に弁護士費用特約がついていなかったとしても、無料相談などを利用して、慰謝料の増額が見込めるのかなどを相談してみるのも一案でしょう。

5、まとめ

今回は、交通事故の慰謝料算定における3つの基準とそれぞれの特徴、違いについて解説しました。

裁判所基準がもっとも賠償額が高くなる可能性が高く、被害者としては、ぜひとも裁判所基準で交渉をしたいところです。しかし、ご自身で保険会社に対して裁判所基準で慰謝料を請求しても、保険会社が応じることはほぼありません。あくまで、裁判を起こした場合か、弁護士を代理人に選任した場合に限って裁判所基準での交渉に応じてくるのが通常です

ベリーベスト法律事務所では、交通事故による慰謝料請求や交渉の経験を豊富に持つ弁護士が複数在籍しており、日々被害者の方のために調査や交渉を行っています。ご相談が早ければ早いほど、弁護士がお役に立てる範囲も広がります。
事故に遭ってしまったときは、不安を抱える前に、まずはご連絡、ご相談ください。

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