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交通事故の過失割合に納得いかないとき、どうすれば修正されうるのか

更新日:2022年12月6日 慰謝料・損害賠償 示談交渉
不運にも交通事故に遭った場合、当事者である被害者の自分と加害者との「過失割合」について、加害者側の任意保険会社からの提案に納得いかないと感じるケースがあるかもしれません。自分が受け取れる賠償額が大きく変わるので、過失割合は非常に重要な意味を持ちます。相手方保険会社が提示した過失割合のまま示談してしまうと後から覆すことは難しくなります。

では、適切な過失割合はどのように決めるのでしょうか。そして、納得できないときには、どのように交渉を進めたらいいのでしょう。

本記事では、交通事故に遭って過失割合の判断に悩む方のため、弁護士が詳しくご説明します。

1、過失割合とは?

  1. (1)交通事故の過失割合とは?

    交通事故における過失割合とは、発生した交通事故に対する当事者それぞれの責任の割合のことです。

    交通事故は、わざと(故意に)起こすものではなく、どちらか一方または双方の不注意(過失)によって発生するものです。言い換えれば、この不注意、つまり過失こそが事故の原因ですから、その「過失の割合」に応じて事故の責任を負うことになります。

  2. (2)過失割合と過失相殺

    交通事故によって被害者に損害が生じた場合、加害者が賠償責任を負います。
    加害者の過失割合が100%ならば、被害者に生じた損害は、すべて加害者側の負担となります。

    たとえば、被害者が青信号で横断歩道を渡っている際に、加害者が赤信号を見落として突っ込んでしまったような場合は、被害者に落ち度はありません。
    つまり、加害者の過失が100%、被害者の過失は0ですから、被害者の損害(たとえば治療費や慰謝料など)をすべて加害者が負担する必要があります。

    しかし、交通事故において、「どちらかが100%の責任を負う」ことはむしろまれであって、被害者側にも、ある程度の過失があることが一般的です。
    特に車両同士の場合は、道路交通法の規則を守り、お互いに注意し合って走行する義務があります。停車中の車両に追突した場合や、センターラインオーバーなどの場合を除き、双方に過失が認められるケースが多くなります

    被害者側に過失がある場合でも、交通事故の損害を加害者がすべて負担しなければならないというのは公平ではありません。事故が発生した過失割合に応じて、損害を公平に分担する仕組み、それが「過失相殺」の制度です。

    具体的には、被害者に生じた損害額のうち、損害額に被害者の過失割合を乗じた部分は被害者自身の責任部分となります。したがって、その割合部分については、損害から減額処理を行います

  3. (3)事故において過失割合がなぜ重要なのか?

    では、過失割合によってどんな違いが出るのでしょうか。

    たとえば、被害者の損害が1000万円、加害者の過失割合90%、被害者の過失割合が10%だとします。この場合、1000万×10%=100万円は、被害者自身が責任を負うべき部分です。したがって、この部分を過失相殺として減額処理(1000万-100万)した結果、被害者は加害者から900万円を受け取ることになります。

    一方、加害者の過失割合が70%、被害者の過失割合が30%であれば、1000万円×30%=300万円は、被害者が負担しなければなりません。したがって、被害者は700万円しか受け取れないというわけです。
    前のケースと比較するとその差は実に200万円となり、当然、損害額が大きくなればなるほどこの差は広がってきます。

    このように、被害者が実際に受け取ることができる賠償金は、過失割合によって大きく影響を受けます。交通事故の示談においては、損害額だけでなく過失割合が重要なポイントとなるのです。

2、過失割合はどのように決まるのか?

  1. (1)過失割合の算出方法

    交通事故の過失割合は、過去のさまざまな実例をもとにはじき出された一定の基準に沿って決められています

    その基準を一覧表にしたものが、『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準[全訂5版]』 別冊判例タイムズ38号(東京地裁民事交通訴訟研究会編)です。保険会社、弁護士、裁判所など、交通事故実務に関わる人たちが必ず用いている基準です。

    この基準一覧表では、さまざまな事故類型を想定して、それぞれについて過失割合が設定されています。したがって、実際に交通事故が発生したときは、その事故状況が、この基準一覧表のどの類型に該当するかを探すことから始まります。

    該当する事故類型を見つけたら、その過失割合がベースとなり、そのうえで、実際の事故現場の細かい状況を加味して修正要素の有無を判断し、決定することになります。

  2. (2)過失割合はだれが決めるのか?

    交通事故の示談交渉の場合、当事者同士が話し合って過失割合を決定します。
    ただ、実際には、当事者同士が直接話し合いをするのは難しいため、当事者が加入する任意保険会社の担当者が当事者に代わって話し合いを進めています。その話し合いのベースになるのが、上記の基準一覧表です。

3、過失割合でなぜもめるのか?

  1. (1)過失割合についてもめる要因

    次のような要因があることから、過失割合でもめるケースが生じてしまうと考えられます。過失割合についてもめると、解決までに時間がかかり、被害者としては損害賠償金を受け取るのが遅れてしまいます。

    ① 警察は過失割合に関与しない
    交通事故が起きて、警察に一報すると、交通事故事件として受理されます。この時点でよく見られる誤解は、警察が過失割合を決めてくれる、というものです。

    結論から言うと、警察は過失割合を決めることはありません

    警察が判断するのは、加害者に過失があったかどうか、それが重過失といえるかどうか、といった程度の大まかなものです。警察としては、加害者に過失さえあれば刑事事件として立件できるため、それで十分なのです。

    9対1、7対3といった過失割合を決める必要があるのは、損害賠償金の計算のときだけですので、警察はそこには立ち入りません。

    このように、交通事故の示談交渉では、過失割合を警察ではなく当事者間で決める点が、もめやすい原因のひとつといえるでしょう。

    ② 過失割合で慰謝料・治療費などの支払額が大きく変わる
    交通事故の損害は、車両の修理費用、治療費、慰謝料など多岐にわたります。
    人身事故の場合は、損害額を合計すると数千万に上ることもあります。この損害額すべてについて、過失割合に応じた過失相殺がなされます。

    加害者側の任意保険会社の立場からすると、被害者の過失が大きくなればなるほど自社の支払いが減っていく仕組みです。そのため、双方が過失割合で譲らず、もめてしまうことがあるのです。

    ③ 加害者と被害者の事故状況に関する説明が違う
    当事者によって、事故の状況についての説明が異なるときがあります。実況見分調書でも、加害者の主張をもとにして作ったものと、被害者の主張で作ったものとでは、全く違うものが出来上がることもあります。

    このように、事故状況そのものについて、お互いの認識が違うと、過失割合についてもめる可能性が高くなります。

    ④ 任意保険会社の担当者の理解がずれている
    示談の過程では、任意保険会社の担当者が事故状況から過失割合を提示します。この担当者の理解がずれていると、過失割合でもめることになります。

    任意保険会社の担当者によって経験も違い、提示された過失割合が相場からかなりずれていることも、実際よくあることです

  2. (2)過失割合でもめがちな交通事故の類型

    実は、過失割合についてもめやすい交通事故の類型があります。以下のような場合には、過失割合についてもめる可能性が高くなります。

    ① 事故状況がわかる証拠がない
    事故状況がわかる「客観的証拠」がない場合には、過失割合についてもめる可能性が高くなります。
    防犯カメラやドライブレコーダーなどの映像が、代表的な客観的証拠となります。こうした証拠で事故状況がはっきりと映し出されていれば、それをもとにして過失割合を決めていくことができます。

    特に、事故状況そのものについて、当事者間で食い違いが大きいときには、客観的証拠の有無がその後の展開を分けるといっても過言ではありません。しかし、客観的証拠がない場合は、事故状況の主張についてお互い譲ることなく過失割合でもめてしまう可能性がやはり高いといえます。

    ② 損害額が大きい
    被害者に生じた損害の額が大きい場合は、過失割合でもめる可能性が高まります。

    軽微な事故であれば、賠償額も比較的小さく済む場合が多く、過失割合についてもお互いに譲歩して折り合いがつくケースが多くなります。

    しかし、たとえば損害額が数千万円になると、過失割合が1割違うだけでも損害額が数百万円も違ってくることになります。そうなると、過失割合についてもお互いに譲ることなく徹底抗戦が続く可能性が高くなるのです。

    ③ 駐車場内の交通事故
    駐車場は自動車と人が多数行き来する場所なので、交通事故が起きやすいといえます。
    駐車場にはいろいろな大きさ、形の自動車があるため、事故の発生パターンも多様です。
    ところが、交通事故実務で過失割合の判断に用いられる基準一覧表には、駐車場内の事故のパターンがわずか5つしかありません。

    しかし、駐車場内で起きるすべての事故が、わずか5つのパターンに分類できるはずはなく、この類型に当てはまらない場合には、いわば、基準がない状態に陥ってしまいます。そのため、駐車場内での事故は過失割合でもめるケースがよく見られます

4、過失割合に納得できない場合の争い方

  1. (1)加害者が事実と違う主張をしてくるときの対処法

    加害者が事実と異なる主張を行うこともあります。

    たとえば、一時停止せず、急に飛び出したために衝突したにもかかわらず、加害者側からは一時停止をしてゆっくりと進行してきたと主張されて、あぜんとなるようなケースもあります。

    一時停止の有無は過失割合に影響する大事な事実ですから、お互いの主張が異なると話が進みません。このような場合は、目撃者の証言も含めた、客観的証拠を早く見つけ出すことが大事です。客観的証拠をできるだけ集め、被害者側の主張を固めていく必要があります。

  2. (2)任意保険会社の提示に納得いかないときの対処法

    交通事故の過失割合は、先ほど述べました実務担当者が用いる基準一覧表を使って判断されます。

    しかし、被害者が任意保険会社と示談交渉を行う際に、必ずしも適切な過失割合が提示されるとは限りません。任意保険会社は保険金の支払いが仕事とはいえ、自社の負担額を低く抑えるのも任務のひとつだからです。

    被害者側に法律や過失に関する知識がないことを前提に、正しい基準よりも加害者に有利な過失割合を説明する可能性もあります。加害者側の任意保険会社の提示に納得がいかない場合は、基準一覧表の中の、どの類型に基づいて主張しているのか、それを把握することが第一歩となります。

    具体的に、どの基準を根拠に過失割合を主張しているのか、加害者側の任意保険会社に示すように求めてみましょう

  3. (3)過失割合に納得できないときの手続き

    過失割合が決まらなければ、示談を進めることができません。
    しかし、納得のいかないままに加害者側の任意保険会社の提示に応じてしまうと、後悔する可能性があります。過失割合に疑問を感じたときは、安易にイエスを言わず、次のような手段を検討しましょう。

    ① 民事訴訟を提起する
    加害者との主張が全く折り合わず、示談の可能性がないと感じたら、裁判所に民事訴訟を提起することが考えられます。訴訟では、裁判所が当事者双方の主張と提出した証拠を見て、「過失割合」や「損害賠償額」について判断します。

    裁判のメリットは、裁判所という中立で公平な第三者に適切な判断をしてもらえる点です。

    過失割合だけでなく、それぞれの損害についても認定してもらえるので、納得が得られる可能性が高いでしょう。判決が確定すれば、加害者はその判決内容に従い、速やかに賠償金を支払わなければなりません。

    ただし、訴訟手続きには法的な知識や判断が必要です。また、裁判では証拠が重視されますので、自分に有利な証拠を集める事前の準備が重要となります。

    また、訴訟を進めるうえで最大のデメリットともいえるのが、「時間」です。短くても1年から2年程度かかることは覚悟しておいた方がよいでしょう。

    ② ADR(仲裁)を申し立てる
    相手保険会社の主張に納得がいかなくても、裁判まで進めることに抵抗を感じる人も多いかもしれません。

    そのような場合に利用されるのが、ADRと呼ばれる手続きです。ADRとは、法的な紛争について、当事者間で話がまとまらないときに、裁判外で行われる紛争解決手続きのことです。

    日本にはさまざまなADR機関がありますが、交通事故に関する紛争を取り扱う機関としては、次の2つが知られています。いずれも全国の数か所に設置されており、交通事故の当事者であれば、無料で利用することができます。

    ● 公益財団法人交通事故紛争処理センター
    公益財団法人 交通事故紛争処理センターは、「紛セ」と呼ばれる交通事故紛争の代表的なADR機関です。
    被害者と加害者側の間に立って、法律相談、和解斡旋、および審査の手続きを行うものです。手続き費用は無料です。

    ● 公益財団法人日弁連交通事故相談センター
    日本弁護士連合会が主催する交通事故に関する紛争の処理機関です。
    交通事故紛争処理センターと同様に、和解斡旋や審査手続きを行っています。
    また、弁護士による無料面接相談が頻繁に行われている点が特徴です。相談内容は、損害賠償額の計算、過失の割合など交通事故の全般にわたります。示談の前に問い合わせてみる価値があるでしょう。


    いずれのADR機関も、あくまで中立的な立場から事故を判断しますので、被害者の立場に寄り添った判断が出るとは限りません。被害者としては、自分に有利な証拠を自分で収集して提出する必要があります。

    ADR機関で話がまとまらない場合や、納得のいく審査が得られないときは、訴訟手続きに進むことになります。

    ③ 弁護士に相談・依頼する
    交通事故の解決手段の中で、どれを選択するとしても、ある程度は被害者自身で主張や立証を進める必要があります。すべての手続きを1人で進めることは大変です。

    特に過失割合の主張立証は、専門性が高く簡単ではありません。過失割合でもめてしまったときは、被害者の立場に寄り添って代理人として活動してくれる弁護士に相談・依頼することがおすすめします

    そのような弁護士に依頼すれば、裁判はもちろん、ADRであっても、被害者の立場に立ち、できるだけ有利になる主張立証が行われ、望ましい結果に近づける可能性が高まります。

    また、通常の示談手続きを進める場合でも、弁護士に依頼すれば、相手方保険会社とのやり取りをすべて代理します。加害者側の保険会社との交渉ストレスから解放される点も小さくないメリットといえます。

    ④ 損保会社に苦情を申し立てる
    紛争の処理とは話は変わりますが、相手方保険会社の担当者の対応があまりにも不誠実だと感じた場合は、担当者を変えてもらうように主張しても構いません。対応に変化がない場合、または、保険会社に直接苦情を伝えづらいというときは、「そんぽADRセンター」を利用するのもおすすめです。

    そんぽADRは、損害保険会社との間でトラブルが起きたときに、利用費用は無料で相談できる解決機関です。損害保険会社への苦情も受け付けています。

5、まとめ

交通事故の示談で鍵を握るのが過失割合です。過失割合ひとつで、賠償額が大きく変わってくるからです。

最大限の賠償を受けるため、そして、迅速な解決のため、過失割合について疑問や不満がある場合は、交通事故に経験豊富な弁護士にご相談することをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所では、交通事故における紛争についても経験豊富な弁護士が多数在籍しています。交通事故の過失割合と一言でいっても、その被害状況は人によって全く異なります。個々のご事情に寄り添い、お話をうかがいます。どうぞ気軽にご相談ください。

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