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ライプニッツ係数とは|交通事故の損害賠償(逸失利益)計算方法

公開日:2024年3月25日 後遺障害 慰謝料・損害賠償
交通事故が原因で後遺障害が生じた・死亡に至ったなどの場合には、交通事故がなければ将来得られるはずであった収入に相当する損害(=逸失利益)の賠償を請求することが可能です。

逸失利益の金額を算定する際には、ライプニッツ係数という数値を用います。しかしながら、ライプニッツ係数とはどのようなものであるのか、よくわからないという方も多いでしょう。

本コラムでは、ライプニッツ係数の概要や計算方法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、ライプニッツ係数とは将来の損害賠償金を算出する数値

ライプニッツ係数とは、逸失利益を算出する際に利用する数値です。

  1. (1)逸失利益とは

    逸失利益とは、交通事故がなければ本来得られたはずの将来の収入のことです

    交通事故が原因で後遺障害が生じたり、死亡に至ったりした場合には、労働能力の一部または全部が制限されるため、将来の収入の減少という損害が発生します。
    このような損害を「逸失利益」と言い、交通事故と因果関係が認められる範囲で、相手方に対して賠償を請求することができます。

  2. (2)ライプニッツ係数とは

    ライプニッツ係数とは、逸失利益を計算する際に、中間利息控除を行うために利用する数値です。

    交通事故の賠償金は、基本的には一括で支払われます。しかし、将来支払われるはずの収入は、本来であれば、毎月の給料日に支払われるものです。
    お金は運用することで利益を生みます。そのため、将来払われるべき収入額を、先に一括で受領した場合、運用利益分のもらいすぎが生じてしまいます。この運用利益を、中間利息といいます。

    損害の公平な分担という観点からは、交通事故をきっかけに被害者に利益が生じるのは望ましくないと考えられます。そのため、もらいすぎになる中間利息の控除を行う必要があります。もらいすぎになる中間利息の控除を行うに際して使用する係数を、ライプニッツ係数と言います

    具体的には、仮に基礎収入額500万円、労働能力喪失率100%、労働能力喪失期間10年であるとした場合、単純に500万円に10年間を乗じて5000万円を逸失利益として受け取ると、本来当該時点で、一括で5000万円をもらうことはできなかったわけですから、その5000万円から生じる運用利益分のもらいすぎが生じてしまいます。
    運用利益は、基本的には年3%で計算します。10年間分の運用利益も含んで総額が5000万円になるように調整する必要があります。この調整に用いるのが、ライプニッツ係数です。労働能力喪失期間である10年を単純に乗じるのではなく、中間利息を控除した場合の金額を計算することができる、10年に相当するライプニッツ係数を乗じることで、調整することができます。10年に相当するライプニッツ係数は8.5302ですので、500万円×8.5302=4265万1000円を一括で受け取れば、年3%の10年間分の運用利益と合わせて5000万円となる、妥当な逸失利益となります。

  3. (3)ライプニッツ係数とホフマン係数の違い

    ライプニッツ係数と似た用語に、ホフマン係数というものがあります。

    ライプニッツ係数とホフマン係数は、どちらも中間利息控除を行う際に利用される数値であることが共通点です。
    しかし、ライプニッツ係数は、中間利息控除の際に「複利」での運用を前提として控除を行うのに対して、ホフマン係数は、「単利」での運用を前提として控除を行うという違いがあります。

    • 複利……元本だけでなく利息に対しても利息を付ける方法
    • 単利……元本に対してだけ利息を付ける方法


    なお、現在の交通事故の賠償実務では、中間利息控除はライプニッツ係数を用いるのが一般的です

2、ライプニッツ係数の計算方法とシミュレーション

実際に、どのような方法で逸失利益を計算するのか、具体的な例を知りたいという方もいるでしょう。ここからは、ライプニッツ係数を用いた逸失利益の計算方法を説明します。

  1. (1)ライプニッツ係数を用いた「後遺障害逸失利益」の計算方法

    後遺障害逸失利益は、以下のような計算方法により計算します。

    後遺障害逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数


    ① 基礎収入
    基礎収入とは、逸失利益の計算の基礎になる収入のことです。基本的には、事故前1年間の収入が基準となりますが、被害者の属性や職業などによって、基礎収入の内容が異なります。

    • 会社員……事故前年の源泉徴収票記載の総支給額
    • 自営業……事故前年の確定申告書記載の所得金額
    • 専業主婦(専業主夫)……賃金センサス女性全年齢平均賃金
    • 子ども、学生……賃金センサス男女別全年齢平均賃金


    ② 労働能力喪失率
    後遺障害が残存した場合には、後遺障害等級認定の手続きにより1級から14級までの等級が認定されます。労働能力喪失率は、認定された後遺障害等級に応じて、以下のように定められています。


    ③ 労働能力喪失期間
    労働能力喪失期間とは、後遺障害が原因で労働能力の全部または一部が制限される期間です。労働能力喪失期間は、原則として、症状固定時から67歳までの期間ですが、症状固定時の被害者の年齢によって以下のような例外もあります。

    • 18歳未満の子ども……18歳から67歳までの期間
    • 大学生……大学卒業時から67歳までの期間
    • 67歳を超える高齢者……平均余命の2分の1
    • 67歳を迎えるまでの期間が短い人……「症状固定時から67歳までの期間」と「平均余命の2分の1」のうち、いずれか長い方


    ④ ライプニッツ係数
    後遺障害逸失利益の計算で用いられるライプニッツ係数は、労働能力喪失期間に応じて、以下のように定められています。

  2. (2)ライプニッツ係数を用いた「死亡逸失利益」の計算方法

    死亡逸失利益は、以下のような計算方法により計算します。

    死亡逸失利益=基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対するライプニッツ係数


    ① 基礎収入
    基礎収入は、後遺障害逸失利益の考え方と同様に、事故前1年間の収入が基準です。そして、被害者の属性や職業などにより、内容が異なります。

    • 会社員……事故前年の源泉徴収票記載の総支給額
    • 自営業……事故前年の確定申告書記載の所得金額
    • 専業主婦(専業主夫)……賃金センサス女性全年齢平均賃金
    • 子ども、学生……賃金センサス男女別全年齢平均賃金


    ② 生活費控除率
    生活費控除率とは、死亡により将来の生活費が発生しないため、その生活費を控除するための割合です。

    被害者が死亡した場合、将来の収入を喪失するという損害が発生する一方、本来負担すべきであった生活費の支出を免れるという利益が生じます。そのため、損害の公平な分担という観点から、支出を免れることによる利益分を控除して逸失利益を算定する必要があります。もっとも、具体的にどの程度生活費を支出することになるのかを厳密に算定することは基本的には不可能です。そのため、一般的には、下記の「生活費控除率」を用いて算定することになります。

    生活費控除率は、被害者の立場の違いに応じて、以下のように定められています。

    • 一家の支柱(被扶養者1人)……40%
    • 一家の支柱(被扶養者2人以上)……30%
    • 女性(主婦、独身、幼児などを含む)……30%
    • 男性(独身、幼児などを含む)……50%


    ③ 就労可能年数に対するライプニッツ係数
    就労可能年数に対するライプニッツ係数は、後遺障害逸失利益の考え方と同様です。

  3. (3)シミュレーション1│37歳で後遺障害が残った場合

    年収500万円の会社員の方について、37歳で後遺障害等級12級の後遺障害が残った場合の後遺障害逸失利益は、以下のように計算します。

    • 基礎収入……500万円
    • 労働能力喪失率……14%(後遺障害等級12級)
    • 労働能力喪失期間……30年
    • 労働能力喪失期間(30年)に対するライプニッツ係数……19.6004

    後遺障害逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

    上記の計算式に当てはめると、後遺障害逸失利益は500万円×14%×19.6004=1372万0280円となる。
  4. (4)シミュレーション2│40歳で交通事故で亡くなった場合

    年収600万円の会社員男性(既婚・扶養家族2人)について、40歳で交通事故により死亡した場合の死亡逸失利益は、以下のように計算します。なお、年金に対する逸失利益を別途請求できる可能性もあります。

    • 基礎収入……600万円
    • 生活費控除率……30%
    • 就労可能年数……27年
    • 就労可能年数(27年)に対するライプニッツ係数……18.3270

    死亡逸失利益=基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対するライプニッツ係数

    上記の計算式に当てはめると、死亡逸失利益は600万円×(1-0.3)×18.3270=7697万3400円となる。

3、民法改正とライプニッツ係数│損害賠償金額が増額される?

民法改正により、ライプニッツ係数の数値も変更されています。3章では、民法改正によるライプニッツ係数への影響を説明します。

  1. (1)中間利息控除率が5%から3%に変更

    民法改正により、令和2年4月1日から法定利率が5%から3%に引き下げられることになりました。また、新たに中間利息控除に関する規定が設けられ、中間利息控除をする際の利率は、法定利率により計算することが明記されました(民法417条の2)。

    改正民法による法定利率は固定利率ではなく、変動利率制が採用されていますので、3年ごとに利率の見直しが行われます。令和5年時点の法定利率は3%ですが、令和8年4月1日以降の法定利率は未確定です。

  2. (2)交通事故の損害賠償に与える影響

    民法改正による法定利率の変更により、交通事故の損害賠償には、逸失利益の額の増加や遅延損害金の額の減少といった影響が生じます。

    ① 逸失利益の額の増加
    法定利率の変更によって中間利息控除の利率も下がるため、控除する中間利息の額が少なくなります。それに伴い、被害者に支払われる逸失利益の額が増加します。
    法定利率の変更は、逸失利益の面では被害者にとってメリットがある状態です

    ② 遅延損害金の額の減少
    遅延損害金とは、賠償金の支払いが遅れることで生じる利息です。交通事故の事案を訴訟で解決する場合、事故発生日から賠償金の支払日までの期間について、遅延損害金を請求することができます。

    遅延損害金の利率は、法定利率を踏まえて計算するため、法定利率が引き下げられると、遅延損害金の利率も引き下げられることになります。そうすると、遅延損害金の額が減少します。

    ただし逸失利益が支払われる事案では、逸失利益の増加幅の方が遅延損害金の減少幅よりも大きい場合が多いため、全体的にみれば、被害者にとって有利に働くといえるでしょう。

4、交通事故被害に対する弁護士のサポート内容

交通事故の被害者に対して、弁護士はさまざまなサポートを行うことができます。交通事故の被害にあったときは、弁護士に相談することがおすすめです。

  1. (1)複雑な賠償金額の計算も一任できる

    交通事故の被害に遭った場合には、休業損害、慰謝料、逸失利益などの賠償額の計算をしなければなりません。

    このような賠償額の計算は、被害者の属性や職業などに応じて計算方法が異なるために、交通事故事案に関する知識や経験がなければ、正確に計算することは難しいといえます。

    弁護士に依頼をすれば、複雑な賠償金額の計算を一任できますので、計算事務の負担を軽減することが可能です

  2. (2)弁護士基準の慰謝料請求ができる

    慰謝料の算定基準には、以下の自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準の3種類があります。
    このうち、被害者にもっとも有利な算定基準は弁護士基準ですが、それを利用して示談交渉を行うには、弁護士への依頼が不可欠です

    少しでも慰謝料額を増額したいという場合には、弁護士に依頼するとよいでしょう。

  3. (3)ベリーベストなら交通事故専門チームと医療コーディネーターが連携してサポート

    交通事故が原因の怪我が完治せず、後遺障害が生じるケースでは、後遺障害等級認定の申請が必要となります。

    後遺障害等級認定の申請は基本的に書面審査となるため、適正な等級認定を受けるには、後遺障害診断書の内容や検査結果などの精査が重要です。

    ベリーベスト法律事務所では、治療中の段階から交通事故専門チームと医療コーディネーターが連携してサポートいたしますので、適正な後遺障害等級認定を受けられる可能性が高くなります。

5、まとめ

後遺障害事案や死亡事案では、逸失利益という将来得られるはずの収入を請求することができます。

逸失利益の計算は被害者の属性や職業に応じて異なり、複雑な計算になっていますので、正確な金額を算定するためには、弁護士への相談が必要です。

ベリーベスト法律事務所では、豊富な実績とノウハウを有する交通事故専門チームが対応いたしますので、安心してお任せください。また、初回相談料は60分無料です。
交通事故の被害にお悩みの方は、まずはベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

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