逆走事故での過失割合、基本の考え方|請求できるものを弁護士が解説

更新:2024年09月10日 公開:2024年06月19日
慰謝料・損害賠償
逆走事故での過失割合、基本の考え方|請求できるものを弁護士が解説
逆走事故では、逆走した側の車両に大きな過失が認められる一方で、相手方の車両にも一定の過失が認められることがあります。

逆走事故に巻き込まれてしまったら、弁護士に相談して適正額の損害賠償の獲得を目指しましょう。

本記事では、逆走事故の過失割合や損害賠償請求について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、逆走事故とは

逆走事故のパターンには、主に以下の3つがあります。

① 典型的な逆走事故
典型的な逆走事故として、交通ルールによって定められた進行方法とは逆向きに走行したことにより発生する交通事故が挙げられます。
逆走車両が右側を走行することで、左側を走行している車両と衝突する事故などです。一般道と高速道路の両方で発生することがあります。

② 一方通行規制違反による逆走事故
一方通行規制に違反した逆走車両との衝突事故も逆走事故のパターンのうちの一つです。
一方通行規制違反車両が交差点に進入した際、交差道路を走行する車両と衝突する事故などが挙げられます。基本的には一般道において発生します。

③ センターラインオーバーによる逆走事故
センターラインを越えてしまった車両が、対向車線を走行する車両と衝突する交通事故です。センターラインを越えてしまう理由はいろいろあり、理由によって過失割合も異なってくる場合があります。基本的には一般道において発生します。

2、逆走事故の過失割合

逆走事故については、当然ながら逆走車両側に大きな過失が認められます。右側走行による典型的な逆走事故であれば、基本的には逆走車両側の一方的な過失と判断されることがほとんどです。
しかし、逆走事故であれば必ず、過失割合が10対0となるわけではありません。逆走事故の発生状況や、車両の種類等に応じて、過失割合が異なる点に注意しましょう。

  1. (1)過失割合とは

    「過失割合」とは、交通事故の当事者間において、どちらにどの程度の責任があるかを示した割合です。いずれか一方のみが悪い場合は10対0となりますが、両方の当事者に責任が認められる場合には、注意義務違反の程度に応じた過失割合が認定されます。

    交通事故の過失割合は、事故のパターンに応じた基本的な過失割合を前提に、修正要素を加味して決定するのが一般的です。

  2. (2)自動車同士の逆走事故の基本過失割合

    自動車同士の逆走事故の基本的な過失割合は、以下のとおりです。

    一方通行規制違反をした逆走車両が交差点に進入した場合 逆走車両:80%
    相手方車両:20%
    センターラインオーバーによる逆走事故の場合 逆走車両:100%
    相手方車両:0%

    一方通行規制違反をした逆走車両が交差点に進入した事故については、一方通行違反を犯した逆走車両に大きな過失が認められる一方で、相手方車両にも道路交通法上の安全運転義務違反が認められるため、基本的な過失割合は「8対2」とされています。

    これに対して、センターラインオーバーによる逆走事故については、相手方車両が回避行動をとることが困難である場合が多いため、基本的な過失割合は「10対0」とされています。

  3. (3)自動車と二輪車の逆走事故の基本過失割合

    自動車と二輪車(バイク)が衝突する逆走事故の基本過失割合は、以下のとおりです。

    一方通行規制違反をした逆走車両が交差点に進入した場合
    ※自動車が逆走した場合
    自動車(逆走):90%
    二輪車:10%
    一方通行規制違反をした逆走車両が交差点に進入した場合
    ※二輪車が逆走した場合
    二輪車(逆走):70%
    自動車:30%
    センターラインオーバーによる逆走事故の場合
    ※自動車が逆走した場合も、二輪車が逆走した場合も同様
    逆走車両:100%
    相手方車両:0%

    自動車と二輪車が交差点で衝突する逆走事故については、自動車同士の場合に比べて、自動車側の過失が加重され、二輪車側の過失が軽減されます。自動車と比較すると、二輪車は交通上の弱者であるためです。

    これに対して、センターラインオーバーによる逆走事故については、逆走をしたのが自動車でも二輪車でも、基本的な過失割合は「10対0」とされています。相手方車両にとって回避行動をとるのが困難であるということは、自動車でも二輪車でも変わりがないためです。

  4. (4)自動車と自転車の逆走事故の基本過失割合

    自動車と自転車が衝突する逆走事故の基本的な過失割合は、以下のとおりです。

    自転車が右側端を通行していた場合 自転車(逆走):20%
    自動車:80%
    一方通行規制違反をした逆走車両が交差点に進入した場合
    ※自動車が逆走した場合
    自動車(逆走):90%
    自転車:10%
    一方通行規制違反をした逆走車両が交差点に進入した場合
    ※自転車が逆走した場合
    自転車(逆走):50%
    自動車:50%
    センターラインオーバーによる逆走事故の場合
    ※自動車が逆走した場合
    自動車(逆走):100%
    自転車:0%
    センターラインオーバーによる逆走事故の場合
    ※自転車が逆走した場合
    自転車(逆走):50%
    自動車:50%

    自動車と自転車が衝突する逆走事故については、一方通行規制違反をした逆走車両が交差点に進入した場合とセンターラインオーバーによる場合のいずれについても、自転車側の過失が軽減されます。

    また、右側通行をするという典型的な逆走事故の場合であっても、自転車側の基本的な過失割合は20%とされています。これは、自転車が道路の右側端を通行することはまれなことではなく、車両側においても視認することが容易であるため、一般的な逆走事故とは同視できない面があるためです。

  5. (5)逆走事故の過失割合の修正要素

    これまでご紹介した逆走事故の過失割合は基本的なものであり、以下の要素が認められる場合には、基本的な過失割合を増減して修正される可能性があります。

    ① 一方通行規制違反をした逆走車両が交差点に進入した場合の事故における修正要素
    一方通行規制違反車両が交差点に進入した場合の事故においては、主に「著しい過失」や「重過失」が認められるかどうかで、過失割合の修正がなされるか否かが判断されます。

    例えば、このような事故類型における基本的な過失割合は、非逆走車・逆走車の双方ともが減速していることが前提となっています。そのため、一方の車両が減速していない場合は、「著しい過失」があるとして、減速していない車両に10%不利に過失割合の修正がなされる可能性があります

    (a)自動車同士の場合
    非逆走車 逆走車
    基本過失割合 20 80
    夜間 +5 -5
    非逆走車の著しい過失 +10 -10
    非逆走車の重過失 +20 -20
    逆走車の著しい過失 -10 +10
    逆走車の重過失 -20 +20

    (b)自動車対二輪車で、自動車が逆走した場合
    非逆走車(二輪車) 逆走車(自動車)
    基本過失割合 10 90
    非逆走車の著しい過失 +10 -10
    非逆走車の重過失 +20 -20
    逆走車の著しい過失 -10 +10
    逆走車の重過失 -20 +20

    (c)自動車対二輪車で、二輪車が逆走した場合
    非逆走車(自動車) 逆走車(二輪車)
    基本過失割合 30 70
    非逆走車の著しい過失 +10 -10
    非逆走車の重過失 +20 -20
    逆走車の著しい過失 -10 +10
    逆走車の重過失 -20 +20

    ② センターラインオーバーによる逆走事故の修正要素
    (a)自動車同士の場合
    センターラインオーバーによる逆走事故の場合も、「著しい過失」・「重過失」が認められるか否かは、過失割合の修正要素の一つとされています。

    また、センターラインオーバーは追越しの場合に生じることが多いところ、追越しに当たっては対向車の速度を正確に把握することが重要であり、他方で非逆走車に速度違反があると、その速度の把握に支障が出る場合があります。そのため、そのような場合、非逆走車の不利に一定程度の過失割合の修正がなされる場合があります。

    非逆走車 逆走車
    基本過失割合 0 100
    非逆走車の著しい過失 +10 -10
    非逆走車の重過失 +20 -20
    逆走車の著しい過失 -10 +10
    逆走車の重過失 -20 +20
    逆走車が追越し中で、かつ、非逆走車の15km以上の速度違反 +10 -10
    逆走車が追越し中で、かつ非逆走車の30km以上の速度違反 +20 -20
    逆走車の速度違反 -10~-20 +10~+20
    逆走車の追越し禁止場所での追越し -10 +10

    (b)自動車対二輪車で、自動車が逆走した場合
    主に非逆走車(二輪車)に前方不注視があった場合に過失割合の修正がなされることがあります。
    具体的には、非逆走車(二輪車)が逆走車(自動車)のセンターラインオーバーを発見した後、進路を左に変更したり、停止したりすることで事故の発生を回避することができる場合において、前方不注視があるなどしてこれができずに事故が生じてしまった場合、「前方不注視」があるとして、非逆走車(二輪車)の不利に過失割合の修正がなされることがあります。

    長時間の前方不注視がある場合など、その程度が大きい場合は、「著しい前方不注視」として、さらに過失割合が修正されることがあります

    非逆走車(二輪車) 逆走車(自動車)
    基本過失割合 0 100
    二輪車の前方不注視等 +5 -5
    二輪車の著しい前方不注視等 +15 -15
    二輪車のその他の重過失 +10 -10

    (c)自動車対二輪車で、二輪車が逆走した場合
    上記の(b)と同様に、非逆走車(自動車)に前方不注視があれば、非逆走車(自動車)に不利に過失割合の修正がなされることがあります。

    非逆走車(自動車) 逆走車(二輪車)
    基本の過失割合 0 100
    自動車の前方不注視等 +15 -15
    自動車の著しい前方不注視等 +30 -30
    自動車のその他の重過失 +10~20 -10~20

3、交通事故の加害者に請求できる損害賠償の種類

交通事故の被害者は、加害者に対してさまざまな項目の損害賠償を請求できます。請求可能な主な損害項目は、以下のとおりです。

  1. (1)治療費

    交通事故によるケガの治療費について、事故と相当因果関係が認められる範囲で、加害者に対してその賠償を請求することができます。医療機関や薬局等に対して支払った費用について、領収書を保管しておきましょう

  2. (2)入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料

    交通事故によるケガ・後遺症・死亡については、精神的損害に相当する額の慰謝料を請求できます。入通院慰謝料(ケガについての慰謝料)は、入院および通院の期間に応じて目安額が決まります。

    後遺障害慰謝料は損害保険料率算出機構が認定する後遺障害等級、死亡慰謝料は被害者の家庭における立場によって目安額が決まります。後遺障害慰謝料と死亡慰謝料は、数百万円から数千万円に及ぶことが少なくありません。

  3. (3)逸失利益

    交通事故の後遺症によって被害者の労働能力が失われ、または被害者が死亡した場合には、将来得られなくなった収入(=逸失利益)の損害賠償を請求できます。

    逸失利益の金額は、以下の式によって計算します。逸失利益が数千万円から数億円に及ぶケースもあります。

    • 後遺障害逸失利益=基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
    • 死亡逸失利益=基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

    • ※基礎収入額:原則として事故前の年収の実額。ただし、主婦(主夫)の場合は、基本的には賃金センサスに基づく女性労働者の全年齢平均給与額を用います。
    • ※労働能力喪失期間:原則として症状固定時から67歳までの年数。もっとも、症状固定時の年齢が67歳を超える場合は、平均余命の2分の1の期間を、また、平均余命の2分の1の期間が症状固定時から67歳までの年数より長くなる場合も、原則として平均余命の2分の1を労働能力喪失期間とします。なお、後遺症の程度が軽微なときは、通常よりも短縮されることがあります。
    • ※生活費控除率:基本的には、一家の支柱で被扶養者が1人であれば40%、被扶養者2人以上の場合は30%、女性(主婦、独身、幼児を含む)であれば30%、男性(独身、幼児等を含む)であれば50%とされています。


    後遺障害等級 労働能力喪失率
    1級 100%
    2級 100%
    3級 100%
    4級 92%
    5級 79%
    6級 67%
    7級 56%
    8級 45%
    9級 35%
    10級 27%
    11級 20%
    12級 14%
    13級 9%
    14級 5%
  4. (4)介護費用

    交通事故によって被害者が要介護状態になった場合は、相当因果関係が認められる範囲内で、将来にわたる介護費用の損害賠償を請求できます。
    介護費用も数千万円以上となることがあり、慰謝料や逸失利益と並んで高額になりやすい損害項目のひとつです。

  5. (5)その他の人的損害

    上記のほか、被害者がケガなどに関して被った以下の損害につき、加害者に対して賠償を請求できます。

    • 通院交通費
    • 装具、器具の購入費
    • 付添費用
    • 入院雑費
    • 休業損害
    など
  6. (6)物的損害

    交通事故で車両が破損した場合には、以下の物的損害につき、加害者に対して賠償を請求できます。

    • 修理費
    • 車両時価額
    • 代車費用
    • レッカー代
    • 評価損
    • 買替諸費用
    • 休車損害(営業車等の場合)
    など

4、交通事故の損害賠償請求を弁護士に依頼すべき理由

交通事故の損害賠償請求は、主に以下の理由から弁護士に依頼することをおすすめします。

・弁護士基準に基づいて請求できる
一般的に、慰謝料の算定方法について、弁護士基準(=裁判において算定されるべき慰謝料額を算出する基準)、自賠責保険基準(=自賠責保険の保険金額を算出する基準)、任意保険基準(=加害者側の任意保険会社が独自に定めた基準)の3つが挙げられます。

このうち最も高額になりやすいのは、やはり弁護士基準です。
弁護士に依頼すれば、弁護士基準に基づいて慰謝料の金額を交渉することができるため、一般的に最終的な損害賠償額が高額になる傾向があります。

・過失割合を正しく判断・主張できる
上記のとおり、過失割合は、基本的な過失割合を前提に、さまざまな事情を加味して決定されます。
弁護士に依頼をすれば、実際の事故の状況を分析した上で、適正な過失割合による損害賠償を請求することができます。

・後遺障害等級認定のサポートを受けられる
後遺障害慰謝料や逸失利益の金額を大きく左右する後遺障害等級の認定手続きについても、弁護士に依頼すればサポートを受けられます。

・労力やストレスが軽減される
弁護士に示談交渉や法的手続きへの対応を一任すれば、被害者の労力やストレスは大幅に軽減されます。

5、まとめ

逆走事故の過失割合は10対0とは限らず、実際の事故の状況によって変化します。適正な過失割合に基づく損害賠償を請求するには、弁護士に示談交渉などを依頼しましょう。

ベリーベスト法律事務所は、交通事故の損害賠償請求に関するご相談を随時受け付けております。逆走事故に巻き込まれてしまった方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

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この記事の監修者
外口 孝久
外口 孝久
プロフィール
外口 孝久
プロフィール
ベリーベスト法律事務所
パートナー弁護士
所属 : 第一東京弁護士会
弁護士会登録番号 : 49321

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

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