交通事故の慰謝料はいつもらえる? 早く受け取るためにすべきこと

更新:2024年09月25日 公開:2024年07月24日
慰謝料・損害賠償
交通事故の慰謝料はいつもらえる? 早く受け取るためにすべきこと
交通事故の慰謝料を含む損害賠償金は、原則として、示談や訴訟などによって金額が決まってからでなければもらえません。

ただし、状況によっては早期に慰謝料などの一部を受け取れることもあります。早期にお金が必要な場合は、弁護士に相談してアドバイスを求めましょう。

本コラムでは、交通事故の慰謝料はいつもらえるのか、および慰謝料を早く受け取るための方法などについて、ベリーベスト法律事務所 交通事故専門チームの弁護士が解説します。

1、交通事故の慰謝料はいつもらえる?

交通事故の慰謝料は、加害者側との示談が成立した後に支払われます。示談が成立しなければ、訴訟などで慰謝料の金額が決まるまで待たなければなりません。

  1. (1)交通事故の慰謝料は、示談成立後に支払われる

    交通事故の慰謝料を含む損害賠償の金額は、加害者側との示談交渉によって決まります。したがって、慰謝料等の支払いは示談成立後に行われるのが原則です。

    示談交渉を開始するタイミングは、ケガなどの状況に応じて以下のとおりです。

    ① ケガをした場合
    ケガが完治したとき、症状固定の診断を受けたとき、または後遺障害の等級が確定したとき

    ② 死亡した場合
    準備が整ったとき
    ※四十九日法要終了後を目安とすることが多い


    示談交渉は、簡易な事案だと3か月程度で成立するケースが多いです。示談成立後、被害者側が指定した口座に示談金(保険金)が振り込まれます。

  2. (2)示談がまとまらない場合は、訴訟等の後に支払われる

    示談がまとまらないときは、交通事故ADRや訴訟などの手続きを通じて損害賠償額を決めることになります。慰謝料等の支払いも、これらの手続きが終了するまで待たなければなりません。

    特に訴訟は半年から1年以上に及ぶことが多く、慰謝料等を受け取るまでに長い時間がかかってしまう点に注意が必要です。

2、交通事故の慰謝料の支払いが遅くなるケース

以下のようなケースにおいては、交通事故の慰謝料の支払いが遅くなります。



  1. (1)示談交渉が決裂し、訴訟に発展した場合

    前述のとおり、交通事故の損害賠償請求訴訟には、半年から1年以上の期間がかかります。また、一審判決に対して控訴が提起された場合には、さらに半年程度の期間を要するのが一般的です。

    示談交渉が決裂して訴訟に発展した場合には、慰謝料等を受け取るタイミングが大幅に遅れることを覚悟しなければなりません

  2. (2)後遺障害が残った場合

    交通事故のケガが重傷である場合には、完治せずに後遺障害が残ってしまうことがあります。そのようなときは、被害者は加害者側に対し、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することができます。

    後遺障害慰謝料や逸失利益の請求額は、後遺障害の内容が確定してからでなければ決められません。したがって、後遺障害によるものを含めた損害賠償の示談交渉は、後遺障害申請の結果を待って始める必要があります。

    後遺障害の内容や状況にもよりますが、後遺障害等級認定に関する申請の結果が出るまでには、申請後数か月程度の期間を要するケースが多いです。その分、示談交渉を始めるタイミングが遅れるため、慰謝料等を受け取れるタイミングも遅くなってしまいます。

  3. (3)保険会社の対応が遅い場合

    加害者側の保険会社の対応が遅いために、示談交渉が進展しないケースもあります。

    このような場合には、弁護士を代理人として保険会社に連絡し、示談に関する検討を速やかに進めるように催促しましょう。

3、交通事故の慰謝料を早くもらえる方法は?

生活費などに充てるため、交通事故の慰謝料等を早くもらいたいと考える方もいらっしゃるでしょう。そのような場合、どうすればよいのでしょうか。

  1. (1)弁護士に相談する

    保険会社の対応が遅い場合には、弁護士を代理人に選任すれば交渉のスピードが速くなることがあります。

    しかし、その他の理由で示談交渉が遅れている場合には、弁護士に依頼しても慰謝料等をもらえるタイミングが早まるとは限りません。そのようなとき弁護士は、次の(2)から(6)の方法からあなたの状況に適した方法を提案する可能性が高いでしょう。

    弁護士より以下のような提案を受けたら、あなた自身も検討してみてください。

  2. (2)部分的に示談する

    ケガの治療が長引いている、後遺障害の内容が固まらないなどの理由で全面的な示談交渉ができない場合には、損害の一部に限った示談交渉を提案することも考えられます。

    ただし、加害者側が部分的な示談交渉に応じるとは限らない点にご注意ください。

  3. (3)被害者自身が加入している保険を利用する

    人身傷害保険など、被害者自身のケガなどを保障する保険に加入している場合には、その保険を利用するのがよいでしょう。原則として過失割合にかかわらず、保険約款で定められた保険金の支払いを受けられます。

    ただし、ご自身が加入している保険を利用すると、等級が上がって保険料の金額が増えてしまうことが多いので注意が必要です。

  4. (4)自賠責保険に請求をする

    自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は、交通事故の被害者に対して最低限の補償を提供する保険です。自動車の運転者は、必ず自賠責保険に加入しなければなりません。

    たとえ損害額が確定していない状況であっても、交通事故の被害者は、加害者が加入している自賠責保険会社に対して、すでに発生している分の費用があれば請求できます。

    ただし、すでに発生している治療費や休業損害等を請求する場合、被害者側が資料を集め、自ら請求しなければなりません。必要書類や実際に発生している損害があることを立証する資料が不足している場合は支払ってもらえないので注意が必要です。

    なお、弁護士に対応を依頼しているなか、弁護士から提案を受けて自賠責保険に一部支払いを求めることになった場合であれば、弁護士側が準備を進めるケースが多いでしょう。

  5. (5)自賠責保険の仮渡金を請求する

    自賠責保険には「仮渡金」の制度が設けられています。

    仮渡金は、被害者に対して支払われるべき自賠責保険金の一部です。ケガなどの状況に応じて、下表の金額の仮渡金を受け取ることができます。

    状況 仮渡金
    ① 死亡した場合 290万円
    ② 以下のいずれかの傷害を受けた場合
    • 脊髄損傷を伴う脊柱の骨折
    • 合併症を有する上腕または前腕の骨折
    • 大腿または下腿の骨折
    • 腹膜炎を併発した内臓の破裂
    • 14日以上の入院と30日以上の治療を要する傷害
    40万円
    ③ 以下のいずれかの傷害を受けた場合(②に当たるものを除く)
    • 脊柱の骨折
    • 上腕または前腕の骨折
    • 内臓の破裂
    • 入院と30日以上の治療を要する傷害
    • 14日以上の入院を要する傷害
    20万円
    ④ 11日以上の治療を要する傷害を受けた場合(②または③に当たるものを除く) 5万円

    仮渡金の請求も、加害者側の自賠責保険会社に対して行います。弁護士に依頼中であれば、弁護士と相談して進めるべきでしょう。

  6. (6)任意保険の内払金を請求する

    任意保険にも、保険金の一部を先払いする「内払金」の制度が設けられていることがあります。内払金の請求は、加害者側の任意保険会社に対して行います。

    ただし、内払金の制度はすべての任意保険に設けられているとは限りません。また、被害者が受け取れる内払金の額も、任意保険の内容によって異なります。
    内払金を請求できるかどうかについては、加害者側の任意保険会社に確認しましょう

  7. (7)相手方保険会社が提示する金額を受け入れる

    早く慰謝料等の支払いを受けたい場合には、金額面で妥協し、相手方保険会社が提案する金額で示談を成立させてしまうことがひとつの手となりえます。早期に示談が完了すれば、それだけ早く慰謝料等の支払いを受けられる可能性が高まるためです。

    ただし、この方法は、相手方が支払うべき医療費などの賠償金や適切な慰謝料の受け取りをあきらめることになりかねず、将来的に後悔してしまう可能性が高い方法といえます。

    個人での交渉に限界を感じたら、弁護士に相談してください

4、交通事故に遭ったら早めに弁護士へ相談すべき理由

交通事故に遭ったら、損害賠償請求について早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。

交通事故被害について弁護士に相談することの主なメリットは、以下のとおりです。



  1. (1)示談交渉や法的手続きへの対応を一任できる

    弁護士に依頼すれば、示談交渉や訴訟など、損害賠償請求に必要となる手続きの対応を一任できます。相手方保険会社からの連絡をあなたが受ける必要はなくなります。

    過失割合など状況についての争いがあるときはもちろんのこと、治療費打ち切りや休業損害の提示などに問題がある場合も、適切な結論に至れるよう弁護士が対策を講じます。

    弁護士に対応を任せることで、被害者の手間やストレスは軽減され、治療や生活の立て直しに専念できるようになります。

  2. (2)慰謝料等の増額が期待できる

    加害者側の保険会社が提示する額は、適正な損害賠償額よりも大幅に少ないと感じるかもしれません。それは、損害賠償金を計算する際に用いられる基準が、自賠責保険と保険会社、裁判所や弁護士で異なるためです。

    弁護士は、被害者の客観的な損害額を算定する「裁判所基準(弁護士基準)」に基づき、適正額の損害賠償を請求します。保険会社は、個人で裁判所基準での請求をしたとしても認めないことが多いですが、弁護士からの請求だと対応するケースが多いです。

    そのため、弁護士が法的な根拠に基づき、適正額の支払いを請求することにより、慰謝料を含む損害賠償金の増額が期待できます。

5、まとめ

交通事故の慰謝料等を受け取れるタイミングは、示談や訴訟などによって損害賠償の内容が決まった後です。
ただし、自賠責保険や任意保険の制度などを利用すれば、早期に慰謝料等の一部を受け取れることもあります。目先の金額のために適切な損害賠償を受けることをあきらめて妥協した金額で示談を成立させてしまう前に、弁護士に相談してください。

ベリーベスト法律事務所では、交通事故についての知見が豊富な弁護士を中心とした交通事故専門チームがご相談を随時受け付けております。早めに慰謝料等を受け取りたい、適正額の損害賠償を請求したいとお考えであれば、お気軽にご相談ください。

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この記事の監修者
外口 孝久
外口 孝久
プロフィール
外口 孝久
プロフィール
ベリーベスト法律事務所
パートナー弁護士
所属 : 第一東京弁護士会
弁護士会登録番号 : 49321

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

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