交通事故に巻き込まれ脳損傷を負った…後遺障害等級の認定基準は?

更新:2024年06月12日 公開:2021年04月22日
後遺障害
交通事故に巻き込まれ脳損傷を負った…後遺障害等級の認定基準は?
交通事故で脳損傷を負った場合、脳や体全体に後遺障害が残ってしまうケースがあります。
その場合、弁護士に相談することによって、加害者や任意保険会社から受け取ることができる慰謝料などの金額が増額される可能性がありますので、お早めに弁護士にご相談ください。
この記事では、交通事故を原因とする脳損傷が引き起こす症状や後遺障害、損害賠償などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
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1、脳損傷には大きく分けて2種類ある

脳損傷と呼ばれる傷害には、大きく分けて「局所性脳損傷」と「びまん性軸索損傷」の二つがあります。

(1)局所性脳損傷

局所性脳損傷は、脳のうち特定の部位に強い力が働くことによって、当該部位に損傷が発生してしまう傷害です。
脳挫傷のほか、脳出血を原因とする急性硬膜外血種、急性硬膜下血種、さらには外傷性くも膜下出血を引き起こすおそれがあります。

(2)びまん性軸索損傷

びまん性軸索損傷は、強い衝撃が加わることによって脳全体が揺さぶられ、脳内の神経細胞が損傷してしまう傷害です。重症の場合は高次脳機能障害、遷延性意識障害を引き起こす可能性があります。

2、脳損傷によって引き起こされる傷害とは?

脳損傷によって引き起こされる症状の内容は、おおむね以下のとおりです。

(1)脳挫傷

「脳挫傷」は、脳の組織が損傷・出血する局所性脳損傷をいいます。脳挫傷による出血を原因として、さらに他の症状を引き起こすケースもあります。

(2)急性硬膜外血種

脳は内側から軟膜・くも膜・硬膜という3層の髄膜で包まれているところ、1番外側の硬膜と頭蓋骨の間で出血が起こり、血がたまってしまうのが「急性硬膜外血種」です。急性硬膜外血種も、局所性脳損傷の一種です。

(3)急性硬膜下血種

「急性硬膜下血種」は、急性硬膜外血種とは異なり、くも膜と硬膜の間で出血が起こり、血がたまってしまう局所性脳損傷をいいます。

(4)外傷性くも膜下出血

「外傷性くも膜下出血」は、くも膜の内側で出血が起こってしまう局所性脳損傷をいいます。

(5)高次脳機能障害

「高次脳機能障害」とは、脳損傷を原因として高次の脳機能に障害が残ってしまい、日常生活などに支障をきたしてしまうことをいいます。

高次脳機能障害は、後遺障害として残存してしまうことが多く、その場合には症状の程度に応じて後遺障害等級が認定されます。詳しい認定基準については次の項目で解説します。

(6)遷延性意識障害

「遷延性意識障害」は、いわゆる「植物状態」と表現される状態です。医学的には、以下の6要件を満たす場合を遷延性意識障害と定義しています。

  1. 自力移動不能
  2. 自力摂食不能
  3. ふん便失禁状態
  4. 意味のある発語不能
  5. 簡単な指示に従う以上の意思疎通不能
  6. 眼球の追視不能、または認識不能

遷延性意識障害は、常に介護を必要とする重篤な後遺障害であり、多くの場合後遺障害1級が認定されます。

3、脳損傷の場合の後遺障害等級の認定基準は?

脳損傷によって後遺障害が残ってしまった場合、加害者・任意保険会社に対して慰謝料を請求するためには、原則として、後遺障害等級認定を受ける必要があります。
以下では、後遺障害等級の概要と、脳損傷のケースにおける後遺障害等級の認定基準を詳しく解説します。

(1)後遺障害等級の認定には「症状固定」となっていることが前提

後遺障害等級の認定を受けるためには、治療を継続した結果「症状固定」の段階に到達することが前提となっています。
症状固定とは、これ以上治療を継続しても症状が改善しないと医学的に判断される状態をいいます。

医師により症状固定の診断が下されたら、その旨を自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書(以下単に「後遺障害診断書」といいます)に記載してもらいます。
そのうえで、加害者が加入している自賠責保険会社に対して、症状固定その他の事項が記載された後遺障害診断書を含む申請書類一式を提出して、後遺障害等級の認定を申請することになります。

(2)認定される等級によって慰謝料・逸失利益の金額が変わる

交通事故における損害賠償実務上、後遺障害に関する慰謝料と逸失利益の金額は、認定された後遺障害等級によって、だいたいの目安を決めることができます。

そのため、後遺障害等級認定において、実際に発生している後遺障害を適切に認定してもらうことは、被害者が十分な損害賠償を受けるためにきわめて重要なのです。

(3)脳損傷時に認定される後遺障害等級の一覧

神経系統の機能又は精神の障害は、大きく「器質性障害」と「非器質性精神障害」の2種類に分類されます。

器質性障害とは、脳に物理的な損傷がある場合に生じる後遺障害で、さらに「高次脳機能障害」と「身体的機能障害(まひ)」の二つに分かれます。

これに対して非器質性精神障害とは、脳に物理的な損傷がない場合に生じる後遺障害で、異常な精神状態が発生している状態をいいます。各後遺障害の症状に対応する後遺障害等級の一覧は、以下のとおりです。

①器質性障害

(i)高次脳機能障害
後遺障害の症状 後遺障害等級
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 1級
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 2級
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 3級
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 5級
神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 7級
神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 9級
(ii)身体的機能障害(まひ)
後遺障害の症状 後遺障害等級
高度の四肢麻痺
中等度の四肢麻痺で、常時介護が必要な状態
高度の片麻痺で、常時介護が必要な状態
1級
高度の片麻痺
中等度の四肢麻痺で、随時介護が必要な状態
2級
中等度の四肢麻痺 3級
軽度の四肢麻痺
中等度の片麻痺
高度の単麻痺
5級
軽度の片麻痺
中等度の単麻痺
7級
軽度の単麻痺 9級
運動性、支持性、巧緻性、速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺 12級

②非器質性精神障害

後遺障害の症状 後遺障害等級
非器質性精神障害のため、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 9級
非器質性精神障害のため、通常の労務に服することはできるが、多少の障害を残すもの 12級
非器質性精神障害のため、通常の労務に服することはできるが、軽微な障害を残すもの 14級
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4、脳損傷で後遺障害を負った場合に請求できる損害賠償について

交通事故により脳損傷を負い、その結果後遺障害が残ってしまったケースでは、被害者は加害者や任意保険会社に対して、さまざまな項目の損害賠償・保険金の支払いを請求できます。

以下では慰謝料の点を中心に、後遺障害に関して加害者側に請求できる損害賠償の内容を解説します。

(1)後遺障害があるケースでは「逸失利益」「慰謝料」が重要

交通事故で後遺障害を負ったケースでは、一例として以下の項目の損害賠償・保険金の支払いを請求できます。

  1. 治療費
  2. 通院交通費
  3. 入院雑費
  4. 付き添い看護費
  5. 休業損害
  6. 傷害(入通院)慰謝料
  7. 後遺障害逸失利益
  8. 後遺障害慰謝料

後遺障害があるケースでは、上記の中でも、「後遺障害逸失利益」と「後遺障害慰謝料」の金額が特に高額になります。

後遺障害逸失利益は、後遺障害により体が動かなくなったり、脳に障害を負ったりしたことによる労働能力の喪失に関して、将来の収入を補塡(ほてん)する性質を有しています。

後遺障害慰謝料は、後遺障害を負ったことによる精神的損害を補塡(ほてん)する性質を有しています。

後遺障害逸失利益と後遺障害慰謝料の金額は、認定された後遺障害等級によって左右されるので、正しい後遺障害等級認定が重要になります。

(2)慰謝料計算の三つの基準|自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準

特に後遺障害慰謝料の計算に当たっては、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準という三つの基準が存在することが特徴です。それぞれの基準の概要は以下のとおりです。

①自賠責基準

自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)から支払われる後遺障害慰謝料の金額を算出する基準です。

②任意保険基準

被害者が弁護士を伴わない示談交渉のケースで、任意保険会社が提示してくる後遺障害慰謝料の金額を算出する基準です。

③弁護士基準

裁判例をもとにした、被害者が本来得られる後遺障害慰謝料の金額を算出する基準です。被害者が弁護士を伴って任意保険会社と示談交渉を行う場合、弁護士基準によって算出された後遺障害慰謝料を受け取れる可能性が高いでしょう。

(3)示談交渉は弁護士同席で行うのがおすすめ|被害者に有利な弁護士基準が適用

上記三つの基準のうち、被害者にもっとも有利な基準であるのが弁護士基準です。以下の表のとおり、弁護士基準で計算すると、自賠責基準に比べて、非常に高額の後遺障害慰謝料が認められます。 また、任意保険基準は非公表ですが、弁護士基準の6割前後と考えられています。

後遺障害等級 自賠責基準(カッコ内は要介護の場合 弁護士基準
1級 1150万円(1650万円) 2800万円
2級 998万円(1203万円) 2370万円
3級 861万円 1990万円
4級 737万円 1670万円
5級 618万円 1400万円
6級 512万円 1180万円
7級 419万円 1000万円
8級 331万円 830万円
9級 249万円 690万円
10級 190万円 550万円
11級 136万円 420万円
12級 94万円 290万円
13級 57万円 180万円
14級 32万円 110万円

弁護士基準による後遺障害慰謝料の支払いを受けるためには、弁護士に示談交渉を依頼することがもっともスムーズです。適切な後遺障害慰謝料の支払いを受けたい場合は、弁護士に依頼すると良いでしょう。

5、交通事故の被害者が弁護士に相談すべき理由

交通事故で脳損傷を負った場合、適切な損害賠償・保険金の支払いを受けるために、弁護士に相談することをおすすめいたします。

前述のように、弁護士に示談交渉を依頼すれば、被害者に有利な弁護士基準による後遺障害慰謝料の支払いを受けられる可能性が高まります。また、交通事故の被害者にとっては、医学的な観点を踏まえて後遺障害の立証をすることや、交通事故のプロである任意保険会社と示談交渉を行うことは大きな負担です。

この点、ベリーベスト法律事務所の弁護士は、交通事故を専門に取り扱う経験を生かして、交通事故の後遺障害にお悩みの方は、ぜひベリーベスト法律事務所の弁護士にご相談ください。

6、まとめ

交通事故で脳損傷を負った場合、完治せずに高次脳機能障害や身体のまひなどが残ってしまう場合があります。

後遺障害が残ってしまった場合、任意保険会社との示談交渉を弁護士に依頼することで、より高額の後遺障害慰謝料などを得られる可能性が高まります。

交通事故に遭ってしまった場合、お一人で悩むことなく、お早めにベリーベスト法律事務所にご相談ください。

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