後遺障害慰謝料とは? 適正な慰謝料獲得のための5つのポイントを解説
後遺障害等級認定を受けると後遺障害慰謝料の請求が可能です。ただし、等級によって慰謝料の金額が異なりますので、適正な後遺障害等級認定を受けることが重要です。そのほかにも適正な慰謝料の支払いを受けるために押さえておくべきポイントがありますので、しっかりと理解しておきましょう。
今回は、後遺障害慰謝料の概要と適正な後遺障害慰謝料を獲得するための5つのポイントについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、後遺障害慰謝料とは
後遺障害慰謝料とはどのようなものなのでしょうか。以下では、後遺障害慰謝料の概要、3つの認定基準、後遺障害慰謝料の相場について説明します。
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(1)後遺障害慰謝料とは
後遺障害慰謝料とは、交通事故により怪我を負い、後遺障害が生じてしまったときに支払われる慰謝料です。後遺障害が生じた被害者は、日常生活や仕事で思うように行動することができなくなり、多大な精神的苦痛を被ります。そこで、後遺障害慰謝料として、被害者に生じた後遺障害の内容や程度に応じた金額が賠償されることになります。
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(2)後遺障害慰謝料の3つの算定基準
後遺障害慰謝料を計算する際に用いられる算定基準には、以下の3つの基準があります。
- 自賠責保険基準:自賠責保険が慰謝料の金額を計算する際に用いる基準
- 任意保険基準:任意保険会社が慰謝料の金額を計算する際に用いる基準
- 裁判所基準(弁護士基準):弁護士が示談交渉をする際や裁判で慰謝料の金額を計算する際に用いる基準
後遺障害慰謝料の金額は、3つの基準のうちどの基準を用いるかによって金額が大きく変わります。一般的には、自賠責保険基準≦任意保険基準<裁判所基準の順で後遺障害慰謝料の金額が大きくなりますので、被害者としては裁判所基準で後遺障害慰謝料を計算するのがもっとも有利といえるでしょう。
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(3)後遺障害慰謝料の相場
自賠責保険基準および裁判所基準での後遺障害慰謝料の相場は、以下のようになっています。
等級 後遺障害慰謝料の金額 自賠責保険基準 裁判所基準(弁護士基準) 別表第1 1級 1650万円 2800万円 2級 1203万円 2370万円 別表第2 1級 1150万円 2800万円 2級 998万円 2370万円 3級 861万円 1990万円 4級 737万円 1670万円 5級 618万円 1400万円 6級 512万円 1180万円 7級 419万円 1000万円 8級 331万円 830万円 9級 249万円 690万円 10級 190万円 550万円 11級 136万円 420万円 12級 94万円 290万円 13級 57万円 180万円 14級 32万円 110万円
2、後遺障害慰謝料の請求には「後遺障害等級認定」が重要
後遺障害慰謝料を請求するには、その前提として、後遺障害等級認定を受けることが重要です。以下では、後遺障害等級認定の概要とその重要性について説明します。
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(1)後遺障害等級認定とは
交通事故によって怪我をした場合、病院で治療をおこないますが、怪我の内容や程度によって、治療を継続しても完治せず、これ以上の症状の改善を見込めない状態になることがあります。このような状態のことを「症状固定」といいます。
症状固定時に残存する後遺障害については、損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所に申請をすることで、症状に応じた後遺障害等級認定を受けることが可能です。
後遺障害等級には、1級から14級までの等級が定められており、それぞれの症状に応じた細かい認定基準が存在しています。 -
(2)後遺障害等級認定が重要な理由
後遺障害等級認定を受けることで、被害者は、「後遺障害慰謝料」と「後遺障害逸失利益」という損害を請求できるようになります。後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益は、交通事故の損害の中でも大きな割合を占めるものになりますので、後遺障害等級認定の有無によって、被害者に支払われる賠償額は大きく異なってきます。
また、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益は、認定された後遺障害等級に応じて金額が左右されますので、適正な賠償額を請求するには、症状に応じた適正な等級認定を受けることが重要です。
このように、後遺障害等級認定は、適正な賠償金の支払いを受けるために非常に重要なものといえます。
3、後遺障害等級認定を申請する方法
後遺障害等級認定は、どのような方法で申請するのでしょうか。以下では、後遺障害等級認定の申請方法と後遺障害慰謝料が支払われるタイミングについて説明します。
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(1)後遺障害等級認定の2つの申請方法
後遺障害等級認定の申請方法には、「事前認定」と「被害者請求」という2種類の申請方法があります。
① 事前認定
事前認定とは、後遺障害等級認定の申請を加害者が加入する任意保険会社を通しておこなう方法です。
事前認定を選択すれば、後遺障害等級認定の申請手続きに関してすべて保険会社に任せることができますので、被害者の負担はほとんどありません。
しかし、加害者が加入している任意保険会社は、被害者に対して慰謝料などの支払いをしなければならない立場になります。そのため、後遺障害等級認定に有利になるような資料や証拠などを積極的に集めてくれることは期待できないでしょう。
② 被害者請求
被害者請求とは、後遺障害等級認定の申請を被害者自身でおこなう方法です。
被害者請求は、事前認定と異なり被害者自身ですべての手続きをおこなわなければならないため、負担が大きいというデメリットがあります。他方、被害者自身が、提出する書類の収集や選別をおこなうことができますので、後遺障害等級認定に有利になるような証拠を提出することが可能です。それにより、適正な後遺障害等級認定が受けられる可能性が高くなるでしょう。
少しでも有利な後遺障害等級認定を受けたいなら、事前認定ではなく被害者請求により後遺障害等級認定の申請をおこなうのがおすすめです。 -
(2)後遺障害慰謝料が支払われるタイミング
後遺障害慰謝料が支払われるタイミングは、後遺障害等級認定の申請方法によって異なります。
事前認定の場合、後遺障害慰謝料が支払われるのは、加害者側の任意保険会社と示談が成立した後のタイミングです。
これに対して、被害者請求の場合、後遺障害等級認定を受けたタイミングで自賠責保険会社から後遺障害慰謝料の支払いを受けることができます。加害者側の任意保険会社との示談成立前に、後遺障害慰謝料の支払いを受けられますので、この点でも被害者請求のほうが優れているといえるでしょう。
4、適正な後遺障害慰謝料を獲得するための5つのポイント
適正な後遺障害慰謝料を獲得するためには、以下の5つのポイントを押さえておくことが大切です。
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(1)事故直後から適切な頻度で定期的に通院する
交通事故の被害に遭ったときは、事故直後から病院に通院することが大切です。事故から時間がたってから通院を開始すると、事故と怪我との因果関係を否定されてしまうおそれがあるからです。
また、通院を開始した後も医師の指示に従って適切な頻度で定期的に通院するようにしましょう。通院間隔が空いてしまったり、途中で中断してしまったりすると、治療の必要性がなかったとして、後遺障害等級認定にあたって不利な要素になってしまいます。そのため、事故直後から適切な頻度で定期的に通院することが重要です。 -
(2)症状固定時期は医師の判断に従う
怪我の治療を続けていると、加害者側の保険会社から治療費支払いの打ち切りを打診されることがあります。しかし、症状固定時期を判断するのは、保険会社ではなく治療を担当する医師ですので、医師の判断に従って治療の終了時期を判断するようにしてください。
保険会社に言われるがまま早期に治療を終了してしまうと、後遺障害等級認定にあたって不利になることがありますので注意が必要です。 -
(3)後遺障害診断書を正しく記載してもらう
後遺障害等級認定の手続きは、基本的には書面審査になります。したがって、申請手続きで提出する書類の内容が重要であり、その中でも特に重視されるのが「後遺障害診断書」です。
後遺障害診断書は、治療を担当した医師に記載してもらう書類になりますが、医師であっても後遺障害診断書の作成に精通しているとは限りませんので、記載漏れや誤記などがあるケースも少なくありません。
被害者自身でも後遺障害診断書の記載内容をしっかりとチェックし、不足がある場合には医師に対して修正や訂正を求めるようにしましょう。 -
(4)被害者請求で後遺障害申請をする
前述のとおり、後遺障害等級認定の申請方法には、事前認定と被害者請求の2つがあります。
申請時に提出する書類が同じであれば、どちらの方法であっても結論は変わりません。しかし、事前認定では加害者側の保険会社が被害者に有利となる証拠を積極的に集めてくれることは期待できません。そのため、適正な後遺障害等級認定を受けるためには被害者請求の方法でおこなうのがおすすめです。 -
(5)結果に不満があるときは異議申し立てをする
後遺障害等級認定の結果に不満があるときは、異議申し立てをおこなうことができます。
当初の認定結果やその理由を検討し、追加で必要な資料を提出することで、より有利な等級認定が受けられる可能性もあります。ただし、異議申し立てをすれば必ず後遺障害等級が変更されるというわけではありませんので、弁護士に相談をしながら手続きを進めていくとよいでしょう。
5、後遺障害慰謝料の請求を弁護士に依頼するべき理由
後遺障害慰謝料の請求をお考えの方は、弁護士に依頼するのがおすすめです。
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(1)適正な後遺障害等級認定が受けられる
後遺障害等級は、症状ごとに細かい認定基準が定められていますので、適正な後遺障害等級認定を受けるには、知識や経験が不可欠となります。
弁護士なら、治療段階から後遺障害等級認定のサポートをすることができますので、適正な後遺障害等級認定が受けられる可能性が高くなります。また、被害者請求の方法で後遺障害等級認定の申請をする際にもサポートできますので、被害者自身の負担はほとんどありません。 -
(2)保険会社とのやり取りを任せられる
交通事故の被害に遭った場合、加害者側の保険会社とのやり取りが必要になります。
しかし、被害者と保険会社の担当者とでは、経験や情報量に圧倒的な格差がありますので、被害者自身では対等に交渉をおこなうのが困難だといえます。被害者自身の交渉では、不利な条件であることに気付かずに示談に応じてしまうリスクもありますので、保険会社とのやり取りは弁護士に任せたほうがよいでしょう。
弁護士に依頼すれば、保険会社との交渉をすべて弁護士に任せることができますので、有利に交渉を進めることが可能です。 -
(3)後遺障害慰謝料を増額できる可能性がある
前述のとおり、後遺障害慰謝料の算定基準には、以下の3つの基準があります。
- 自賠責保険基準
- 任意保険基準
- 裁判所基準(弁護士基準)
後遺障害慰謝料の金額がもっとも高額になる基準は、裁判所基準ですが、裁判所基準を使用して示談交渉をするには弁護士への依頼が不可欠です。被害者自身で示談交渉をしても、裁判所基準で計算した後遺障害慰謝料の金額にまで増額することはできませんので、慰謝料の増額を希望する場合には、弁護士への依頼を検討するとよいでしょう。
6、まとめ
交通事故で後遺障害が生じてしまったときは、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を請求することができます。しかし、そのためには後遺障害等級認定の手続きにおいて、適正な後遺障害等級認定を受けることが重要です。適正な後遺障害等級認定を受けるには、弁護士のアドバイスやサポートが必要になりますので、まずはベリーベスト法律事務所にご相談ください。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。