後遺障害等級2級の認定基準と主な症状は? 請求できる慰謝料額の相場
交通事故前の日常を取り戻すべく必死に治療やリハビリを行っていたにもかかわらず、かかっている病院から「これ以上の回復は望めない」と言われたり、保険会社から「症状固定としてください」などと言われたりしたら、非常に大きなショックを受けることは間違いないでしょう。今後のご本人やご家族のためにも、適正な後遺障害等級を得て、実質に即した損害賠償を得るべきと考えます。
弁護士にご相談いただければ、後遺障害等級認定(後遺障害認定)や損害賠償請求の手続きをサポートするだけでなく、最も高額な算定基準に基づいた請求が可能です。本コラムでは、後遺障害等級2級の認定基準や主な症状、請求できる損害賠償の種類や金額などを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、後遺障害等級2級の認定基準と主な症状
交通事故の後遺症のうち、後遺障害等級2級が認定されるのは、具体的にどのような症状がある場合なのでしょうか。
後遺障害等級2級の認定基準と、主な症状の内容をまとめました。
(参考:「後遺障害等級表」(国土交通省))
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(1)随時介護を要するもの
後遺障害等級2級の中でも、以下2つの後遺障害は「要介護」のカテゴリーに分類されています。
要介護2級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 要介護2級2号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し」た場合にあたるのは、脳や神経の機能にダメージを受けたケースです。具体的な症状としては、高次脳機能障害をはじめとした脳障害によって運動障害や失認失語などがあるとき、麻痺による運動機能障害が残っているとき、認知症や情意の障害、発作性意識障害が多発するなど精神に著しい障害が残っているケースがこれに該当します。
「胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し」た場合にあたるのは、脳や神経以外の臓器の機能にダメージを受けたケースです。具体的には、呼吸器に障害が残り動脈血酸素分圧が50Torr以下となったときや、高度の呼吸困難が認められたときなどが該当します。
また、複数の障害が残ってしまったときは、総合的な評価が行われ、「相当(準用)」ルールによって等級が認定されます。いずれにしても、交通事故によって身体のどこかにダメージを受けた結果、「随時介護を要する」状態になった場合に、後遺障害等級は要介護2級が認定される可能性が高いでしょう。
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(2)失明・視力の著しい低下
片方の眼を失明し、もう一方の眼の視力が0.02以下になった場合、または両眼視力が0.02以下になった場合には、後遺障害等級2級に該当します。
2級1号 一眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの 2級2号 両眼の視力が0.02以下になったもの
失明にあたる状態とは、眼球を失ったケースや光の明暗がまったくわからない、もしくは辛うじて認識できる程度を指します。なお、視力の測定は原則、眼鏡やコンタクトレンズ等による矯正を行ったうえで測定された結果で等級が認定されます(実質的に矯正ができない場合のみ裸眼で測定)。
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(3)両手・両足の切断
両腕(両上肢)を手関節以上で失った場合、両脚(両下肢)を足関節以上で失った場合には、後遺障害等級2級に該当します。
2級3号 両上肢を手関節以上で失ったもの 2級4号 両下肢を足関節以上で失ったもの
手間接とは、手首の関節を指します。足関節は、いわゆる足首から先を失ったケースで、足指のみなどの場合は該当しません。なお、両腕をひじ関節以上で失った場合は後遺障害等級1級3号、両脚をひざ関節以上で失った場合は後遺障害等級1級5号にあたります。
2、交通事故の加害者に請求できる主な損害賠償の種類
交通事故の被害に遭った方は、加害者に対して多様な項目の損害賠償を請求する権利があります。
後遺障害等級2級に該当する場合、介護費用・慰謝料・逸失利益を中心として、極めて高額の損害賠償が認められる可能性が高いので、弁護士を通じて漏れのないように損害賠償請求を行ってください。
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(1)治療費等
交通事故のケガを治療するため、入院・通院・治療器具の購入に費用を要した場合には、その全額につき損害賠償を請求できます。
(例)- 通院治療費
- 入院費
- 手術費用
- 通院交通費
- 装具、器具購入費 など
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(2)介護費用
交通事故の後遺症により要介護状態となった場合、将来分を含めた介護費用を一括で請求できます。
介護費用の計算式は、以下のとおりです。介護費用=日額×365×介護年数に対応するライプニッツ係数- ※日額=近親者が介護する場合は8000円前後、職業介護者が介護する場合は合理的な実費
- ※介護年数=要介護になった時点からの平均余命
(参考:「就労可能年数とライプニッツ係数表」(国土交通省))
たとえば交通事故の被害者が男性であり、事故時点(要介護となった時点)での平均余命が35年(46歳半ば)だったというケースの場合、近親者が介護を担当すると仮定すれば、介護費用の金額は6274万円余り受け取れると考えられます。
介護費用
=8000円×365×21.487
=6274万2040円算定の基準となるライプニッツ係数によって、受け取れる介護費用は大きく変わります。保険会社が提示する金額が本当に適切なのか、確認すべきポイントのひとつです。
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(3)慰謝料
交通事故によって被害者が受ける精神的な損害は、慰謝料として加害者に賠償を請求できます。
後遺症が残った場合、加害者に請求できる慰謝料は「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」の2種類です。
① 入通院慰謝料
交通事故でケガをして、入院・通院を強いられたことにより被った精神的損害の賠償金です。
② 後遺障害慰謝料
交通事故のケガが完治せず、後遺症が残ったことにより、将来にわたって受ける精神的損害の賠償金です。特に後遺症があるケースでは、後遺障害慰謝料がきわめて高額になりますが、用いられた算定基準によって受け取れる金額が大きく変わります。たとえば、後遺障害等級2級に該当する場合、弁護士基準(後述)に基づく後遺障害慰謝料の目安は、被害者本人分で2370万円となります。
介護の必要がある場合には、近親者の慰謝料が加わり3000万円を超える慰謝料が認められることもあります。 -
(4)逸失利益
交通事故の後遺症が原因で労働能力を喪失した場合、将来にわたって失われた収入(=逸失利益)の損害賠償を請求できます。
逸失利益の計算式は、以下のとおりです。逸失利益=1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数(参考:「就労可能年数とライプニッツ係数表」(国土交通省))
後遺障害等級2級に該当する場合、すべての労働能力が失われたと考えられるため、労働能力喪失率は原則「100%」です。
たとえば、交通事故に遭った時点で46歳(就労可能年数:21年)、1年あたりの基礎収入(年収)が500万円だったケースの場合、後遺障害等級2級の逸失利益は7700万円以上と非常に高い金額となります。
逸失利益
=500万円×100%×15.415
=7707万5000円逸失利益を計算する際、会社員であれば大きな誤差は出ないケースがほとんどです。しかし、自営業者のケースや、兼業主婦や子ども、高齢者など、事故前の状況によって算定基準が変わるため、受け取れる金額が大きく変わることがあります。明細を提示され疑問に感じたときは、示談書に同意する前に弁護士に相談しましょう。
3、弁護士に依頼すると損害賠償の増額が期待できる
交通事故の損害賠償は、弁護士を通じて請求を行うことによって増額となる可能性があります。
特に、後遺障害等級2級に該当するような重い後遺症がある場合、請求の仕方によって獲得額が大きく変わる可能性がありますので、弁護士へのご依頼をおすすめします。
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(1)弁護士基準に基づく請求による増額
弁護士に依頼する最大のメリットは、「弁護士基準(裁判所基準)」に基づく損害賠償請求ができる点です。
被害者が自分で加害者側の任意保険会社との示談交渉に臨むと、任意保険会社は「自賠責保険基準」や「任意保険基準」に基づき、客観的な損害額に遠く及ばない低額の保険金を提示してくるでしょう。
これに対して弁護士基準は、被害者に生じた客観的な損害額を算出する公正な基準です。
弁護士にご依頼いただければ、任意保険会社の不合理な主張を拒否して、弁護士基準に基づく公正な損害賠償の獲得を目指します。(例)
後遺障害等級2級の後遺障害慰謝料
① 要介護の場合
自賠責保険基準:1203万円(被扶養者がいる場合は1373万円)
弁護士基準:2370万円 ※被害者本人の慰謝料のみ
→1167万円(or 997万円)の増額
② 要介護でない場合
自賠責保険基準:998万円(被扶養者がいる場合は1168万円)
弁護士基準:2370万円 ※被害者本人の慰謝料のみ
→1372万円(or 1202万円)の増額 -
(2)保険会社が賠償を拒否する損害の認定による増額
加害者側の保険会社は、高額に及ぶことが多い介護費用や家屋の改造費などの損害項目につき、保険金の支払いを拒否するのはよくあるケースです。
弁護士にご依頼いただければ、被害者に生じた客観的な損害の全額につき、毅然とした態度で損害賠償請求を行います。その結果、損害賠償の総額が大幅に増額する可能性があります。
(例)
加害者側の任意保険会社が、介護費用の支払いを一切拒否した場合
事故時点で46歳半ば(平均余命35年)、1年あたりの基礎収入(年収)が500万円
→介護費用6274万2040円の獲得(増額)
4、後遺障害等級2級に関係する裁判例
後遺障害等級2級に相当する後遺症を巡って、損害賠償責任が争われた裁判例を2つ紹介します。
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(1)将来介護費用について争った裁判例
63歳の男性が、交通事故により外傷性くも膜下出血や頭蓋骨開放性陥没骨折などの重篤な傷害を負い、後遺障害等級2級1号に認定されていた事案です。訴訟内で、加害者側は随時介護を前提とした介護費として日額7000円のみで算出した将来介護費を提示しました。
さいたま地裁は実情に即した将来介護費用を改めて提示し、介護者である妻が67歳になるまでは日額8000円、それ以降、被害者の平均余命までの期間の職業付添人による介護費を日額1万8000円とするのが相当であると認定し、将来介護費約5828万円、逸失利益約4586万円、症状固定後の治療費約145万円、後遺障害慰謝料2500万円などを認定しています(平成29年(ワ)第1641号/さいたま地裁平成31年3月19日判決)。
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(2)後遺障害逸失利益や介護費などで争いがあった裁判例
事故発生時アルバイトに就業していた女性(中卒)が、交通事故によって高次脳機能障害等を負い、後遺障害等級認定の異議申立てを経て後遺障害別等級表・別表第1第2級1号が認定されていた事案です。後遺障害慰謝料や介護費、後遺障害逸失利益などについて争いがありました。
加害者側は、併合第6級にすぎないと主張したうえで、介護費の支払いを拒み、事故前のアルバイト収入(年収60万円程度)若しくは事故当時の全世代の中卒女性の平均賃金を基準にた後遺障害逸失利益を算定すべきと主張していましたが、裁判所は、自賠責の認定通りであると判断し、後遺障害慰謝料や介護費用についての請求を認めました。さらに、後遺障害逸失利益についても、学歴を考慮しない全世代の女性平均賃金で算出した金額を支払うよう命じています(平成27年(ワ)第1038号/千葉地裁松戸支部令和元年7月26日判決)。
5、まとめ
後遺障害等級2級に該当する場合、後遺障害慰謝料・逸失利益・介護費用などをはじめとして、非常に高額の損害賠償が認められる可能性があります。被害者に生じた客観的な損害につき、漏れなく賠償を請求するためには、弁護士を代理人に選任して対応するのがおすすめです。
ベリーベスト法律事務所では、交通事故の損害賠償請求についての知見が豊富な弁護士が、医療コーディネーターとタッグを組み、事故の状況や損害の内容・金額などを細かく分析し、最大限の損害賠償を獲得できるようにサポートすることが可能です。実際の示談交渉や訴訟手続きを通じた請求についても、弁護士が全面的に代行しますので、お客さまに大きなご負担をおかけすることはございません。
交通事故に遭って重い後遺症が残ってしまった方は、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。