後遺障害等級3級の認定基準と慰謝料額は? 主な症状と請求可能なお金
少しでも回復することに希望をかけ、必死にリハビリを行っているにもかかわらず、症状固定と判断されてしまったことで気落ちし、保険会社からの提示をそのまま受け入れてしまいそうになっている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、症状に応じた適切な後遺障害等級の認定を受けることによって、適切な慰謝料を含む損害賠償金を受け取ることができます。リハビリや日常をサポートするための費用を適切に支払ってもらえるのです。
本コラムでは、後遺障害等級3級の認定基準や主な症状、請求できる損害賠償の種類や金額などを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、後遺障害等級3級の認定基準・主な症状
交通事故によってどのような後遺症が残った場合、後遺障害等級3級に認定されるのでしょうか。後遺障害等級3級の認定基準と、主な症状の内容をまとめました。
(参考:「後遺障害等級表」(国土交通省))
-
(1)失明・視力の著しい低下
片方の眼を失明し、もう一方の眼の視力が0.06以下になった場合には、後遺障害等級3級に該当します。
3級1号 一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの なお、認定のために行われる視力の測定は、原則として万国式試視力表が用いられ、メガネなどの矯正を行った状態で測定することになります。
-
(2)咀嚼機能または言語機能の喪失
咀嚼機能・言語機能のどちらか一方を喪失した場合には、後遺障害等級3級に該当します。ただし、両方を喪失した場合には、後遺障害等級1級2号が該当するので注意が必要です。
3級2号 咀嚼又は言語の機能を廃したもの 「咀嚼」の機能とは、食べ物をかみ砕く機能のことです。咀嚼機能を「廃した」とは、流動食以外は摂取できない状態をいいます。
「言語」の機能とは、子音を発音する機能のことです。言語機能を「廃した」とは、以下の4種類の語音のうち、3種類以上が発音できない状態をいいます。
口唇音 ま行、ば行、ぱ行、わ行、ふ 歯舌音 ざ行、た行、だ行、な行、ら行、さ行、しゅ、じゅ、し 口蓋音 か行、が行、や行、ぎゅ、にゅ、ひ、ん 喉頭音 は行 -
(3)就労不能
交通事故の後遺症により、一生涯にわたって仕事ができなくなった場合には、後遺障害等級3級に該当します。
3級3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 3級4号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し」た場合にあたるのは、高次脳機能障害、脊髄損傷、外傷性てんかん、平衡機能障害など、脳や神経の機能にダメージを受けたケースです。なお、身体性機能障害やまひについては、運動障害の範囲によって認定される等級が異なるため、申請する際には注意が必要でしょう。
「胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し」た場合にあたるのは、たとえば呼吸器の障害であれば動脈血酸素分圧50Torr以下か、50Torrを超え60Torr以下のケースなど、脳や神経以外の臓器の機能にダメージを受けた状態が該当します。さらに、「終身労務に服することができないもの」に該当するのは、動脈血酸素分圧が50Torr以下で随時介護の必要もない場合や、動脈血酸素分圧が50Torrを超え60Torr以下で動脈血炭素ガス分圧が限界値範囲にないもので、かつ随時介護の必要もない場合です。
いずれにしても、交通事故によって身体のどこかにダメージを受けた結果、常時または随時の介護までは必要としなくても、まったく働けなくなってしまった場合には後遺障害等級3級が認定されます。等級表に該当しない後遺障害であっても、各等級の障害に相当する障害は、当該等級に認定されるためです(相当(準用))。
-
(4)両手指の全切断
両手のすべての指について、母指を指節間関節以上、その他の指を近位指節間関節以上で切断してしまった場合は、後遺障害等級3級に該当します。足指の欠損は該当しないので注意が必要です。
3級5号 両手の手指の全部を失ったもの ただし、交通事故による負傷の多くは1か所だけであるとは限りません。複数の箇所が後遺障害となってしまった場合は、原則、最も重い後遺障害が該当する等級に認定されます。他方で、後遺障害等級5級以上にあたる後遺障害が複数ある場合は、重い障害の等級を3級繰り上げされた等級が認定されるというルールがあることを知っておきましょう。
2、交通事故の加害者に請求できる主な損害賠償の種類
交通事故の被害者は、加害者からさまざまな項目の損害賠償を受ける権利があります。
後遺障害等級3級に該当する場合、慰謝料・逸失利益に加えて、治療費や休業損害なども高額となる可能性が高いので、弁護士を通じて適正額による請求を行ってください。
-
(1)治療費等
交通事故によるケガを治療するための通院・入院・器具の購入などにかかった費用は、実費全額が損害賠償の対象です。
(例)
- 通院治療費
- 入院費
- 手術費用
- 通院交通費
- 装具、器具購入費
- リハビリ代 など
-
(2)休業損害
交通事故のケガを治療するために仕事を休む必要が生じた場合、休業期間に得られなかった賃金(=休業損害)の賠償を請求できます。
休業損害の計算式は、以下のとおりです。休業損害=1日当たりの基礎収入×休業日数
※休業日数として認められるのは、症状固定までの休業のみ1日当たりの基礎収入としては、被害者の仕事に応じて以下の数値を採用します。
<1日当たりの基礎収入>- 会社員の場合:事故前3か月の給与合計額÷90日
- 自営業者の場合:(事故前年の年間収入-固定経費以外の経費)÷365日
- 専業主婦の場合:賃金センサスの女性労働者の全年齢平均給与額÷365日
たとえば、交通事故の被害者が会社員で、事故前3か月の給与合計額が90万円、療養のために300日間の休業を経て症状固定の診断が行われたとします。
この場合、休業損害は300万円です。休業損害
=90万円÷90日×300日
=300万円自営業の場合、所得に波があることなどから、個人の方が根拠の主張を行ったとしても、保険会社が適切な休業損害の請求を拒むケースがあります。弁護士に依頼することで、合理的に根拠の主張が行えるため、適切な休業損害を受け取れる可能性を高めることができます。
-
(3)慰謝料
交通事故のケガや後遺症が原因で被った精神的損害については、加害者に対して慰謝料を請求できます。
後遺症が残った場合、「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」という2種類の慰謝料を請求可能です。① 入通院慰謝料
交通事故により負ったケガが原因で、入院・通院を強いられたことに伴う精神的損害の賠償金です。
② 後遺障害慰謝料
交通事故のケガが完治せず、後遺症が残ったことに伴う苦痛に関する賠償金です。後遺障害等級3級に該当する場合、特に後遺障害慰謝料は1990万円と高額になります(弁護士基準)。
-
(4)逸失利益
交通事故により後遺症が残った場合、労働能力が失われるため、将来にわたって得られなくなった収入(=逸失利益)の賠償を請求できます。
逸失利益の計算式は、以下のとおりです。逸失利益=1年当たりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数(参考:「就労可能年数とライプニッツ係数表」(国土交通省))
後遺障害等級3級に該当する場合、まったく働けなくなると考えられるため、労働能力喪失率は「100%」です。
たとえば、症状固定時点で40歳(就労可能年数:27年)、1年当たりの基礎収入(年収)が500万円だったとします。この場合、後遺障害等級3級の逸失利益は9100万円以上ときわめて高額になります。
逸失利益
=500万円×100%×18.327
=9163万5000円なお、逸失利益は交通事故の慰謝料請求において争いが起こりやすい項目です。特に、未就労の若年層、高齢者など家事を専業に担い就労していなかった方、主婦だったがパートに出ていた方が被害にあったケースでは、適切な逸失利益を受けられるかどうかについて、確認する必要があるでしょう。
3、弁護士に依頼すれば、損害賠償が増額される可能性あり
交通事故の損害賠償額は、保険会社が提示する金額があまりにも少ないと感じられるケースが少なくないようです。多くのケースで、弁護士を代理人として示談交渉や訴訟に臨むことで、かなりの増額が認められる可能性があります。
特に後遺障害等級3級に該当する場合、各損害が高額になるため、請求の仕方や詳細の出し方によって損害賠償の総額が大きく変化するものです。まずは提示された金額が適切かどうか、弁護士にご相談ください。
本項では、弁護士に依頼すべき理由について解説します。
-
(1)弁護士基準に基づく請求による増額
弁護士は、被害者に生じた客観的な損害額を算出する「弁護士基準(裁判所基準)」に基づき、加害者側に対して適正額の損害賠償を請求します。
加害者側の任意保険会社が提示する「自賠責保険基準」や「任意保険基準」に基づく保険金額に比べると、弁護士基準に基づく請求が認められれば大幅な損害賠償の増額が期待できます。
(例)後遺障害等級3級の後遺障害慰謝料
自賠責保険基準:861万円(被扶養者がいる場合は1005万円)
弁護士基準:1990万円
→1129万円(or 985万円)の増額 -
(2)賠償を拒否された損害の認定による増額
加害者側の任意保険会社は、交通事故との間に因果関係がないことなどを主張して、一部の損害項目につき保険金の支払いを拒否するケースがあります。また、後遺障害逸失利益を算出する際、実情にそぐわない基準で計算しているケースは少なくありません。
弁護士にご依頼いただければ、必要に応じて訴訟を提起して、被害者に生じた客観的な損害を立証し、任意保険会社が支払いを拒否する損害項目についても賠償金の獲得を目指します。
-
(3)併合等級による増額
交通事故による複数の後遺症がある場合、各後遺症の等級に応じて、最終的に認定される後遺障害等級が繰り上がる可能性があります。
これを「併合等級」といいます。併合等級表
1級~5級 6級~8級 9級~13級 14級 1級~5級 最も重い等級+3級 - - - 6級~8級 最も重い等級+2級 最も重い等級+2級 - - 9級~13級 最も重い等級+1級 最も重い等級+1級 最も重い等級+1級 - 14級 最も重い等級 最も重い等級 最も重い等級 14級 弁護士にご依頼いただければ、併合等級についても漏れなく主張し、最大限の損害賠償を獲得できるようにサポートいたします。
(例)加害者側の任意保険会社は後遺障害等級5級を主張していたところ、追加で主張した7級相当の後遺障害が認められ、併合等級3級が認定された場合の後遺障害慰謝料
5級(自賠責保険基準):618万円
3級(弁護士基準):1990万円
→1372万円の増額
4、後遺障害等級3級に関係する裁判例
後遺障害等級3級に相当する後遺症を巡って、損害賠償責任が争われた裁判例を2つ紹介します。
-
(1)定期金賠償を認めた判例
4歳の子どもが道路を横断中に、大型貨物車に衝突されて高次脳機能障害が残り、後遺障害等級3級3号に認定されていた事案です。被害者側は逸失利益を特定の期間、定期金として支払うよう求めていましたが、加害者側はその要望を拒んでいたものです。
最高裁は、高次脳機能障害が後遺障害等級3級3号に該当することを前提として、18歳から67歳までの49年間にわたる逸失利益につき、毎月定期金により支払うことを肯定しました。逸失利益の損害賠償は一括払いが原則ですが、定期金賠償を認めた点が画期的とされています(平成30年(受)第1856号/最高裁令和2年7月9日判決)。
-
(2)後遺障害等級などについて争いがあった裁判例
小学生が住宅地の道路横断中に交通事故に遭い、高次脳機能障害などの後遺症を負った事案です。後遺障害等級は3級3号に該当する旨の認定を受けていたものの、加害者側は後遺障害等級9級10号程度であると主張し、それを基準とした損害賠償金額を主張していました。
東京地裁は、被害者の後遺症が後遺障害等級3級3号に該当することを認定したうえで、逸失利益約7181万円、将来付き添い介護費約2614万円、後遺障害慰謝料1990万円など、総額1億1035万円あまりの損害賠償を命じました(平成26年(ワ)第5935号/東京地裁平成29年3月16日判決)。
5、まとめ
後遺障害等級3級に該当する場合、後遺障害慰謝料・逸失利益などをはじめとして、かなり大きな金額の損害賠償が認められる可能性があります。弁護士にご依頼のうえ、適切な損害賠償を得るべきです。
ベリーベスト法律事務所は、交通事故被害者の方からのご相談を随時受け付けております。
交通事故による重い後遺症にお悩みの方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所にご相談ください。交通事故専門チームの後遺障害等級認定や損害賠償請求に強い弁護士や、医療コーディネーターが協力して、あなたの被害が適切に認められた賠償金を得られるよう力を尽くします。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。