【重傷者向け】交通事故で請求できる損害賠償金の種類や流れ
交通事故による被害を受けてしまったら、加害者に対して賠償金を請求できる可能性があります。怪我の程度によって請求できる項目や金額が異なってきますので、損害賠償請求についてしっかりと理解しておくことが大切です。
本コラムでは、交通事故の重傷者に向けて、交通事故で請求できる損害賠償金の種類や流れについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、交通事故における損害賠償金の基礎知識
まずは、交通事故に遭ってしまったときに知っておくべき損害賠償金の基礎知識について説明します。
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(1)交通事故の損害賠償金とは
交通事故の被害に遭った方は、怪我の治療をするための治療費負担や仕事を休んだことによる減収、事故による精神的苦痛を被るなどさまざまな損害が生じます。
このような損害は、事故の原因となった加害者に対して、民法709条の不法行為を根拠として損害賠償金を請求することができます。加害者が任意保険に加入している場合には、保険会社に請求するのが一般的です。
交通事故の損害賠償金というと慰謝料をイメージする方も多いですが、慰謝料以外にも治療費、休業損害、逸失利益などさまざまな損害項目があります。これらについては、第2章で詳しく説明します。
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(2)交通事故の賠償金請求には時効がある
交通事故の賠償金請求を一定の期間内に行わなければ、相手方に請求する権利を失ってしまいます。
交通事故により怪我をしたことに関する損害賠償請求の時効期間は5年または20年です。また、交通事故により物が壊れたことに関する損害賠償請求の時効期間は3年または20年です。
なお、時効が20年となる場合は、加害者不明といった事情が関与するケースである点にご留意ください。大切な権利を失うことのないようにするためにも、時効期間内に加害者への賠償請求を行いましょう。
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(3)賠償金を決めるときは交通事故の状況や怪我の程度
交通事故において、実際に被害者に生じた損害のほかに、交通事故の状況や怪我の程度も賠償金を決める要素になります。
交通事故の状況とは、一般的に「過失割合」と呼ばれるものであり、被害者にも交通事故の原因がある場合には、過失相殺により過失割合に応じた金額が賠償額から控除されます。
また、怪我の程度によって慰謝料を算定する基準が変わり、後遺障害が生じれば逸失利益や後遺障害慰謝料を請求することも可能です。
2、交通事故で請求できる損害賠償金の種類
交通事故で請求できる損害としては、積極損害や消極損害、慰謝料、物的損害が挙げられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
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(1)積極損害
積極損害とは、交通事故により被害者が出費せざるを得なくなった費用のことです。
<積極損害に含まれる賠償金の項目>- 治療費
- 付添看護費
- 入院雑費
- 通院交通費
- 義肢等の装具費用
- 文書料
- 葬儀費用 など
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(2)消極損害
消極損害とは、交通事故がなければ得られたであろう収入や利益のことです。積極損害が被害者から実際に出ていったお金のことを指すものであるのに対して、消極損害は、被害者が得られなくなったお金のことを指します。
<消極損害に含まれる賠償金の項目>- 休業損害
- 逸失利益
なお、逸失利益は、被害者に後遺障害が生じた場合に認められる損害項目です。
後遺障害等級認定の手続きで適切な等級が認定されないと、受け取れる金額が大きく変わってくることに注意が必要です。 -
(3)慰謝料
慰謝料とは、交通事故による精神的苦痛を金銭で賠償するものです。詳しい内容については、第3章で説明しますが、慰謝料には、以下の3つの種類があります。
- 入通院慰謝料
- 後遺障害慰謝料
- 死亡慰謝料
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(4)物的損害
交通事故の被害者は、加害者に対して物的損害の賠償金を請求することが可能です。物的損害に含まれる賠償金の項目としては、以下のものがあります。
- 車の修理費
- 車の買い替え費用
- レッカー費用
- 評価損
- 代車費用
- 休車損害
3、重傷を負った際の慰謝料の算出方法
交通事故で重傷を負ったとき、慰謝料(入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料)を算出する方法について、説明します。
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(1)軽症・重傷・死亡で請求できる慰謝料が異なる
交通事故の慰謝料は、軽症・重傷などの怪我の程度または死亡によって請求できる慰謝料が異なってきます。
たとえば、むちうちや打撲など怪我の程度が比較的軽症であった場合は、入通院慰謝料のみを請求することになりますが、怪我の程度が重傷で後遺障害が生じたような場合には、入通院慰謝料に加えて後遺障害慰謝料を請求することが可能です。
また、交通事故で被害者が死亡してしまった場合には、死亡慰謝料を請求することができます。
このように、被害者の症状や死亡に至ったかどうかによって請求できる慰謝料が変わってくるため、ご自身の状況に応じた適切な損害項目を選択することが大切です。 -
(2)入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の算出方法
交通事故の慰謝料を算定する基準には、自賠責保険基準、任意保険基準、裁判所基準の3つの基準があります。
どの基準を採用するかによって、算出される慰謝料の金額が大きく異なってくることに注意しましょう。3つの基準の中では、自賠責保険基準がもっとも低い金額になり、裁判所基準がもっとも高い金額になります。
ただし、被害者にとってもっとも有利な裁判所基準は、弁護士が代理人として保険会社と交渉をする場合にしか利用することができません。そのため、少しでも多くの慰謝料を請求したいという方は、弁護士への依頼が不可欠です。
なお、交通事故で重傷となった場合の各慰謝料の算出方法は、以下のようになります。
① 入通院慰謝料
自賠責保険基準では、入通院慰謝料は、以下の計算式のうちいずれか少ない方の金額になります。
- 4300円×治療期間
- 4300円×実通院日数の2倍
たとえば、6か月(180日)間治療で通院をしたケースで、うち80日間が実通院日数だったとします。
- 4300円×180日=77万4000円
- 4300円×80日×2=68万8000円
裁判所基準では、公益財団法人日弁連交通事故相談センターが発行する「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」)に掲載されている基準をもとに算出します。
同書籍には、別表Ⅰと別表Ⅱという基準がありますが、交通事故の怪我が重傷のケースでは、別表Ⅰが用いられます。別表Ⅰを基準にすると、たとえば、6か月間通院をしたケースでは、入通院慰謝料の金額は116万円になります。
このように、自賠責保険基準と裁判所基準では、慰謝料額が大きく異なるのです。② 後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、後遺障害等級認定の手続きにより認定された後遺障害等級に基づいて金額が算定されます。
たとえば、交通事故で腕を骨折し、肩、肘、手首のどこかに1か所に著しい機能障害が生じた場合には、後遺障害等級10級10号が認定されます。同等級の後遺障害慰謝料は、自賠責保険基準で190万円、裁判所基準で550万円です。
③ 死亡慰謝料
自賠責保険基準では、死亡した被害者本人の慰謝料と遺族の慰謝料に分かれており、死亡した被害者本人の慰謝料は400万円です。遺族の慰謝料は、人数に応じて以下のようになっています。
- 遺族が1人……550万円
- 遺族が2人……650万円
- 遺族が3人……750万円
- 被害者に被扶養者がいるときは、上記金額に200万円を加算
裁判所基準では、死亡本人と遺族の慰謝料が一緒になっており、被害者が家族内でどのような立場であったかによって、以下のように金額が変わってきます。
- 一家の支柱……2800万円
- 母親、配偶者……2500万円
- その他……2000~2500万円
4、加害者側に損害賠償金を請求する流れ
加害者側に損害賠償金を請求する場合は、以下のような流れで行います。
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(1)怪我の治療
交通事故により怪我をしたら、まずはその怪我の治療を行うようにしてください。
加害者が任意保険に加入している場合には、入院費や治療費などは加害者の保険会社から支払われることが多く、治療中に被害者が負担することは基本的にはありません。賠償金の額にもかかわることであるため、医師の指示に従って、適切な頻度で通院を継続するようにしましょう。
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(2)完治または症状固定
交通事故の怪我の治療は、怪我が完治または症状固定になるまで続けます。症状固定とは、これ以上治療を継続しても症状が改善しない状態のことです。
医師から症状固定と判断された場合には、痛みやしびれなどが残っていたとしても、交通事故と因果関係のある治療はその時点で終了となり、それ以降は自費で通院をしなければなりません。 -
(3)障害が残った場合は後遺障害等級認定手続き
症状固定と診断された後に残存する後遺障害については、後遺障害等級認定の手続きをとることができます。
後遺障害等級認定の手続きには、被害者がすべての手続きを行う被害者請求と加害者の保険会社がすべての手続きを行う事前認定という2つの方法があります。
賠償金を支払う保険会社が行う事前認定の手続きでは、適切な後遺障害等級認定は期待できませんので、面倒でも被害者請求により行うことが大切です。弁護士に依頼をすれば、後遺障害等級認定に必要な書類の収集や作成などを任せることができますので、被害者の負担を大幅に軽減できます。
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(4)保険会社との示談交渉
後遺障害等級認定により適切な等級認定を受けたら、被害者としての損害額を算定し、保険会社と示談交渉を進めていきます。
弁護士に依頼をすれば、保険会社とのやりとりをすべて弁護士が行うだけでなく、被害者にとって有利な裁判所基準で交渉を進めることができます。交渉による精神的負担を軽減し、最適な条件で示談をまとめるためにも、弁護士への依頼がおすすめです。
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(5)示談がまとまらないときは裁判
保険会社との交渉では希望する条件での示談に至らなかった場合には、裁判所に損害賠償請求訴訟を提起します。
訴訟手続きは、非常に複雑な手続きになりますので、弁護士のサポートが不可欠です。示談交渉から弁護士に依頼していれば、引き続き訴訟も担当してもらうことができます。
5、まとめ
交通事故の賠償金にはさまざまな項目があり、怪我の程度が重傷になればなるほど、その金額は大きくなります。
交通事故で重傷を負い、重大な障害が残ってしまった場合には、日常生活や仕事でさまざまな支障が生じますので、適切な賠償金の支払いを受けることが重要です。
交通事故の被害に遭い、損害賠償金を適切に獲得したいとお考えの方は、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。交通事故に関する知見・経験豊富な弁護士が、親身になりながらサポートいたします。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。