交通事故後の頭痛原因や後遺障害等級、損害賠償請求について解説
このような交通事故により生じる頭痛は何が原因なのか、不安を抱える方も少なくありません。また、頭痛に対してどのような賠償を受けることができるのか、疑問に思う方もいるでしょう。
本コラムでは、交通事故後に頭痛の症状が出てくる原因や損害賠償請求について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、交通事故後に悩まされる頭痛、何が原因?
交通事故後の頭痛は何が原因で生じているのか、考えられる理由を紹介します。
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(1)交通事故後に生じる頭痛の原因と考えられるもの
交通事故後に頭痛が生じる原因にはさまざまなものがありますが、代表的な原因として、以下の3つが挙げられます。
① 外傷性頚部症候群(むちうち症)のうち頚椎捻挫型
外傷性頚部症候群とは、いわゆる「むちうち症」と呼ばれるものです。交通事故により頭部が大きく揺さぶられると、頚椎に無理な力が加わり、頚椎捻挫の症状を引き起こすことがあります。
このようなむちうち症になると、頭痛が生じることがあります。② 低髄液圧症候群
低髄液圧症候群とは、交通事故による衝撃で脊髄の硬膜が破れて脳脊髄液が漏れ出し、減少することで頭痛などの症状が発症する疾患です。
低髄液圧症候群での頭痛は、事故直後ではなく、事故から数日または数か月後に症状があらわれるケースが多いといわれています。③ 頭部外傷
頭部外傷とは、頭部に衝撃が加わることで、頭部の軟部組織(皮膚、皮下組織)、頭蓋内(脳、髄膜など)や頭蓋骨が損傷することをいいます。
頭部外傷には、軽いたんこぶ程度で済むものから、脳挫傷など重篤な障害が生じたり、死亡に至ったりするものもありますので、早期の治療が重要です。 -
(2)頭痛を治すためにはしっかりと治療をすることが大切
交通事故により頭痛を発症したときは、すぐに病院を受診しましょう。
頭痛はさまざまな原因により生じるものであるため、早期に適切な検査を行い、原因を特定することが大切です。一般的には、整形外科を受診することになりますが、頭痛の原因が脳の損傷である場合には、脳神経外科などの受診も検討する必要があります。
「頭痛だから大丈夫だろう」と病院での受診を先延ばしにしてしまうと、事故との因果関係が否定され、適切な賠償を受けられなくなる可能性もあるため、注意してください。
2、交通事故が原因の頭痛で損害賠償請求はできる?
交通事故が原因で頭痛を発症した場合、相手に損害賠償請求をすることができるのかどうかを解説していきます。
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(1)交通事故による損害賠償請求とは
交通事故による損害賠償請求とは、事故発生に責任のある加害者に対して、交通事故により発生した損害の賠償を請求することです。このような損害賠償請求は、民法709条や自動車損害賠償保障法3条等に基づいて行います。
また、損害賠償請求の相手方は交通事故の加害者になりますが、加害者が任意保険に加入している場合には、加害者の保険会社との間で交渉を行うのが一般的です。
被害者にも事故の発生について落ち度がある場合には、過失相殺により、賠償額が減額されることもあります。
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(2)頭痛を理由とする損害賠償請求では後遺障害等級認定の有無で賠償額が大きく変わる
交通事故による頭痛が後遺障害として認定されるかどうかによって、被害者が請求することができる賠償額は大きく変わってきます。「後遺障害慰謝料」および「逸失利益」の請求が可能になるからです。後遺障害に基づく損害の賠償を請求するにあたって、後遺障害が残存していることの証拠を示すため、適切な後遺障害等級の認定を受けることが重要になります。
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(3)頭痛を理由とする損害賠償で請求できる項目
交通事故による頭痛が後遺障害として認定された場合には、一般的な損害項目(治療費、休業損害、傷害慰謝料など)に加えて、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できる可能性があります。
① 後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、交通事故により後遺障害が残ってしまったことによる肉体的・精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。
後遺障害慰謝料は、基本的には後遺障害等級認定の手続きで認定された後遺障害等級に応じた金額が支払われます。後遺障害等級は、1~14級まであり、数字が小さくなるほど重い後遺障害となり、後遺障害慰謝料の金額も大きくなります。
② 逸失利益
逸失利益とは、後遺障害がなければ将来得られたはずの収入などの利益のことです。
頭痛などの後遺障害が生じてしまうと、仕事や日常生活にも支障が生じて、事故前のように満足に行動することができなくなってしまいます。
そうなると、将来にわたって収入の減少という損害が生じてしまう可能性があるため、「逸失利益」として、本来であれば得られたはずの利益の分の損害の賠償を、加害者に対して請求することができるのです。なお、逸失利益は、以下のような計算式によって算出します。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数労働能力喪失率は、認定される後遺障害等級によって異なります。数字が小さいほど重い症状となりますので、労働能力を喪失するパーセンテージもその分高くなり、逸失利益の金額も大きくなります。
3、後遺障害等級の認定手続き
ここからは、後遺障害等級認定の手続きおよびその流れを確認していきましょう。
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(1)怪我の治療
交通事故により怪我をした場合は、まずは、怪我の治療を行います。
事故後しばらく病院に行かず、時間が経ってから通院を開始すると、その時点の怪我が事故によるものかどうかがわからず、事故との因果関係を否定されてしまうおそれがあります。そのため、交通事故の被害にあったときは、すぐに病院を受診することが大切です。 -
(2)医師に後遺障害診断書の作成を依頼
医師から「症状固定」と判断された場合には、医師に後遺障害診断書の作成を依頼しましょう。症状固定とは、これ以上治療を継続しても症状の改善が見込めない状態になることをいいます。
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(3)後遺障害等級認定の申請
後遺障害診断書の作成が済んだら、後遺障害等級認定の申請を行いましょう。なお、後遺障害等級認定の申請の手続きには、「事前認定」および「被害者請求」という2つの手続きがあります。
① 事前認定
事前認定とは、加害者の保険会社に後遺障害等級認定の申請を任せることをいいます。事前認定では、加害者の保険会社がほとんどすべての手続きを行ってくれるため、被害者にとって負担が少ない手続きです。
しかし、認定された後遺障害等級に基づく後遺障害慰謝料などの賠償金を支払うのは、手続きを行う保険会社となります。保険会社の支払額が増える可能性のある等級認定の手続きを、積極的にサポートしてくれるとは限りません。
適正な後遺障害等級認定を受けるためには、後述する被害者請求の方法で行うのがおすすめです。② 被害者請求
被害者請求とは、被害者自身が後遺障害等級認定の申請手続きを行う方法です。
<被害者請求で必要になる書類の作成・収集>- 支払請求書
- 交通事故証明書
- 事故発生状況報告書
- 通院にかかる診断書、診療報酬明細書
- 印鑑証明書
- 後遺障害診断書
事前認定と異なり、上記の書類の作成・収集を被害者が行わなければならないという手間がありますが、手続きに透明性がありますし、レントゲンなどの画像や、意見書、事故の衝撃の大きさを裏付ける物的な損害の資料や、ご自身の状況を直接的に伝える陳述書など、必要に応じて追加で証拠を提出することもでき、適正な等級認定が受けられる可能性が高くなります。
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(4)損害保険料算出機構で等級認定の審査・認定
損害保険料算出機構の調査事務所では、提出された書類などをもとに審査をし、後遺障害等級認定を行います。原則的に書面審査の機関ですので、適切な資料を揃えることができるか否かが、認定の有無に直結することもあります。
4、損害賠償請求のサポートは弁護士に相談できる
交通事故による損害賠償請求をお考えの方は、弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)適切な後遺障害等級認定に向けたサポートができる
適切な後遺障害等級認定を受けるためには、被害者請求の方法によって行うことが重要です。しかし、事前認定とは異なり、被害者請求は、被害者側ですべての手続きを行わなければならず、被害者にとって負担が大きいといえる手続きです。
弁護士に依頼をすれば、このような負担の大きい被害者請求の手続きを弁護士に任せることができます。適正な後遺障害等級を受けるためのアドバイスも聞けるため、一人で手続きを進めるよりも適正な後遺障害等級の認定が受けられる可能性が高くなります。
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(2)保険会社や加害者とのやり取りを任せることができる
交通事故の示談交渉は、被害者が保険会社または加害者との間で行っていかなければなりません。しかし、保険会社の担当者は多くの交通事故の事案を取り扱っており、多くの知識を有しているため、被害者個人では対等な立場で交渉を行うのが難しいといえます。
また、加害者が任意保険に未加入の場合には、加害者本人を相手にして交渉をしていかなければなりません。加害者が誠実な対応をしてくれないようなケースでは、被害者の方にとって大きなストレスとなるでしょう。
このように被害者本人だけでは適切に示談交渉を進めることが困難なケースも多いため、弁護士のサポートが不可欠になります。
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(3)慰謝料を増額できる可能性がある
交通事故の慰謝料の算定基準には、次の3つの基準があります。
- 自賠責保険基準
- 任意保険基準
- 裁判所基準(弁護士基準)
このうち、被害者にもっとも有利になる基準は裁判所基準ですが、基本的には弁護士に依頼をしなければ、裁判所基準での示談に応じてくれません。弁護士に依頼することで慰謝料が増額できる可能性があるといわれるのは、これが理由です。
少しでもよい条件で示談をするためにも、まずは弁護士にご相談ください。
5、まとめ
交通事故により生じる頭痛には、軽傷で済むものから重篤な障害が残るものまでありますので、早期に適切な治療を行い、原因を特定することが大切です。
また、頭痛の症状が長引くときは後遺障害として認定される可能性もありますので、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
交通事故後の頭痛で損害賠償請求をお考えの方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。知見豊富な弁護士が親身になってサポートいたします。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。