足(足指)の後遺障害

交通事故で足の指を失ったり、足の指が動かなくなったりした場合には、後遺障害等級認定を申請しましょう。認定される等級によって、慰謝料や逸失利益を請求できる可能性があります。

本ページでは、足指の後遺障害に関する等級認定基準や、適切な後遺障害等級の認定を受けるためのポイント・手続きなどを解説します。

目次

  1. 1、足指の後遺障害とは
  2. 2、足指の後遺障害等級と認定基準
    1. (1)欠損障害と機能障害
    2. (2)欠損障害の等級と認定基準
    3. (3)機能障害の等級と認定基準
  3. 3、後遺障害等級認定を受けるためのポイント
  4. 4、足指の後遺障害に関する損害賠償額の算定基準
    1. (1)損害賠償額の3つの算定基準
    2. (2)後遺障害慰謝料の金額目安
    3. (3)逸失利益の算定方法
  5. 5、後遺障害等級認定の申請手続き

1、足指の後遺障害とは

足指の後遺障害とは、足の指を失ったり、足の指が動かなくなったりした状態です。交通事故の被害に遭った際に足の指を負傷すると、それが完治せずに後遺障害として残ってしまうことがあります。

たとえば、以下のような状態が足指の後遺障害に当たります。

  • バイクを運転している時に事故に遭い、足の指が加害車両に轢かれて粉砕骨折してしまい、治療をしても動くようにならなかった。
  • 交通事故による強い衝撃が足の指にかかり、壊死して治療の見込みがなかったので、切断せざるを得なかった。
  • 交通事故によって足の指を骨折した際、異常な方向に曲がってしまい、治療をしても完治せずに曲がったままの状態となった。
    など

足指の後遺障害は、靴下や靴を履いていれば目立ちにくいです。しかし歩きにくくなる、下半身で踏ん張ることが難しくなるなど、日常生活や仕事には多かれ少なかれ影響が生じます。

足指の後遺障害については、後遺障害等級の認定を受けることにより、加害者側に対して後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できます。弁護士のサポートを受けながら、適正な等級の認定を受けられるように申請手続きを行いましょう。

2、足指の後遺障害等級と認定基準

足指の後遺障害は、「欠損障害」と「機能障害」の2つに大別され、それぞれの症状に応じた後遺障害等級が認定されます。

(1)欠損障害と機能障害

「欠損障害」とは、身体の部位を失った状態をいいます。交通事故によって足指を失った場合は、欠損障害として後遺障害等級の認定を受けることができます。

「機能障害」とは、身体の部位が正常に動かせなくなった状態をいいます。交通事故によって足指が全く動かなくなった場合や、動きにくくなった場合は、機能障害として後遺障害等級の認定を受けることができます。

(2)欠損障害の等級と認定基準

足指の欠損障害については、失った指の種類および本数に応じて、5級~13級の後遺障害等級が認定されます。

5級 ・両足の指全部を失ったもの
8級 ・片足の指全部を失ったもの
9級 ・片足の親指を含む2本以上を失ったもの
10級 ・片足の親指1本を失ったもの
・片足の親指以外の4本を失ったもの
12級 ・片足の人差し指1本、または人差し指を含む2本以上を失ったもの
・片足の中指、くすり指、小指の3本を失ったもの
13級 ・片足の中指、くすり指、小指のうち1本または2本を失ったもの

(3)機能障害の等級と認定基準

足指の機能障害については、「用廃」となった指の種類および本数に応じて、7級~14級の後遺障害等級が認定されます。

7級 ・両足の指全部の用廃
9級 ・片足の指全部の用廃
11級 ・片足の親指を含む2本以上の用廃
12級 ・片足の親指1本の用廃
・片足の親指以外の4本の用廃
13級 ・片足の人差し指1本、または人差し指を含む2本以上の用廃
・片足の中指、くすり指、小指の3本の用廃
14級 ・片足の中指、くすり指、小指のうち1本または2本の用廃

足指の「用廃」とは、以下の①または②のいずれかに該当する状態をいいます。

  1. 以下の部位を失ったもの
    親指:末節骨の半分以上(=爪部分の骨)
    その他の指:遠位指節間関節以上(=第1関節以上)
    ※足指を根元から全部失った場合は、欠損障害となります。
  2. 以下の関節に著しい運動障害を残すもの
    親指:指節間関節(=中腹にある関節)
    その他の指:中足指節関節(=付け根にある関節)または近位指節間関節(=第2関節)
    ※著しい運動障害:可動域が正常な側(健側)の2分の1以下に制限されている状態

3、後遺障害等級認定を受けるためのポイント

足指の後遺障害について、適正額の後遺障害慰謝料や逸失利益の賠償を得るためには、症状に応じた正しい等級の認定を受けることが大切です。

後遺障害等級認定に当たっては、医師が作成する後遺障害診断書の内容が重視されます。

後遺障害診断書には、前の項目で解説した認定基準に沿った記載がなされていることが大切です。
欠損障害についてはどの部位が欠けているのかの記載、機能障害については用廃の要件を満たしていることが分かる記載が必要になります。特に足指を失っていない機能障害については、可動域が正常な側(健側)の2分の1以下に制限されていることを数値で示さなければなりません。

医師によっては、後遺障害等級の認定基準に沿わず、一般的な診断内容を記載するにとどまることもあります。その場合は弁護士にご依頼いただければ、後遺障害診断書に適切な記載をしてもらえるように、医師と相談のうえで調整を試みます。

4、足指の後遺障害に関する損害賠償額の算定基準

足指の後遺障害については、認定される等級に応じて「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」の損害賠償を請求できます。

後遺障害慰謝料:後遺障害による精神的損害の賠償金
逸失利益:後遺障害による労働能力の低下に伴い、将来得られなくなるであろう収入の賠償金

後遺障害慰謝料や逸失利益の具体的な金額は、損害賠償額の算定基準によって大きく異なります。被害者としては、裁判所基準(弁護士基準)に基づいて適正額の損害賠償を受けることが重要です。

(1)損害賠償額の3つの算定基準

交通事故の損害賠償額の算定基準は、「自賠責保険基準」「任意保険基準」「裁判所基準(弁護士基準)」の3つです。

  1. 自賠責保険基準
    自賠責保険から支払われる保険金の額を算定する基準です。
  2. 任意保険基準
    加害者側の任意保険会社が独自に定めている基準です。
  3. 裁判所基準(弁護士基準)
    被害者に生じた客観的な損害額を算定する基準です。

上記のうち、被害者にとってもっとも有利かつ公正なのは裁判所基準です。後遺障害慰謝料や逸失利益の額を計算する際には、必ず裁判所基準を用いましょう。

(2)後遺障害慰謝料の金額目安

自賠責保険基準および裁判所基準による後遺障害慰謝料の金額は、以下のとおりです(任意保険基準は非公開で、保険会社によって異なります)。

後遺障害等級 自賠責保険基準 裁判所基準
1級(要介護) 1650万円 2800万円
2級(要介護) 1203万円 2370万円
1級 1150万円 2800万円
2級 998万円 2370万円
3級 861万円 1990万円
4級 737万円 1670万円
5級 618万円 1400万円
6級 512万円 1180万円
7級 419万円 1000万円
8級 331万円 830万円
9級 249万円 690万円
10級 190万円 550万円
11級 136万円 420万円
12級 94万円 290万円
13級 57万円 180万円
14級 32万円 110万円

※自賠責保険基準の場合、1~3級で被扶養者がいれば増額されます。

(3)逸失利益の算定方法

逸失利益の金額は、自賠責保険基準および裁判所基準のいずれも以下の式によって計算します(任意保険基準は非公開で、保険会社によって異なります)。

逸失利益=1年当たりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

<労働能力喪失率>

後遺障害等級 労働能力喪失率の目安
1級(要介護を含む) 100%
2級(要介護を含む) 100%
3級 100%
4級 92%
5級 79%
6級 67%
7級 56%
8級 45%
9級 33%
10級 27%
11級 20%
12級 14%
13級 9%
14級 5%

ただし自賠責保険基準では、後遺障害慰謝料と逸失利益の合計につき、下表の補償限度額が設けられています。補償限度額を超える部分の損害は、自賠責保険ではカバーされないので、裁判所基準を用いて別途請求する必要があります。

<後遺障害に関する自賠責保険の補償限度額>

後遺障害等級 補償限度額
1級(要介護) 4000万円
2級(要介護) 3000万円
1級 3000万円
2級 2590万円
3級 2219万円
4級 1889万円
5級 1574万円
6級 1296万円
7級 1051万円
8級 819万円
9級 616万円
10級 461万円
11級 331万円
12級 224万円
13級 139万円
14級 75万円

5、後遺障害等級認定の申請手続き

後遺障害等級認定の申請は、以下のいずれかの方法によって行います。

  1. 事前認定
    加害者側の保険会社が、損害保険料率算出機構に対し、後遺障害等級に関する事前照会を行います。被害者自ら手続きを行う必要がないため、手間が省けるメリットがあります。

    <事前認定の必要書類>
    ・後遺障害診断書
    など
  2. 被害者請求
    被害者が自ら、損害保険料率算出機構に対して申請を行います。必要書類をそろえる手間がかかりますが、後から書類を追完できる、申請手続きの進捗状況が分かるなどのメリットがあります。

    <被害者請求の必要書類>
    ・支払請求書
    ・後遺障害診断書
    ・交通事故証明書
    ・事故発生状況報告書
    ・印鑑証明書
    など

後遺障害等級認定の申請は、損害保険料率算出機構において審査されます。事前認定の場合は加害者側の保険会社を通じて、被害者請求の場合は被害者に直接結果が通知されます。 後遺障害等級の認定結果が出たら、加害者側との示談交渉などへ進みましょう。

納得できる形で後遺障害等級認定の申請を進めるためには、被害者請求を行うことをおすすめします。弁護士にご依頼いただければ、手間がかかる被害者請求の手続きを代行するほか、その後の損害賠償請求まで一貫してサポートいたします。

交通事故によって足指に後遺症が残りそうな方は、お早めに弁護士へご相談ください。

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