後遺障害等級8級の症状と認定基準|逸失利益や慰謝料の計算方法

更新:2024年09月10日 公開:2024年03月29日
後遺障害
後遺障害等級8級の症状と認定基準|逸失利益や慰謝料の計算方法
後遺障害等級8級は、交通事故による後遺症のうち、失明や指の喪失などの症状があるものについて認定されます。

症状に応じた適切な賠償金を受け取るためには、交通事故対応の実績がある弁護士に相談することが大切です。また、弁護士に依頼をすれば、後遺障害等級認定の申請や損害賠償請求の手続きのサポートも一任することができるので、精神的な負担も軽くなります。

本記事では、後遺障害等級8級に当たる後遺症の症状・認定基準や、加害者に対して請求できる慰謝料・逸失利益の計算方法などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
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1、後遺障害等級8級に当たる症状は?

失明・視力低下、指の欠損・用廃(機能を著しく失った状態)、脚の短縮、主要関節の用廃、偽関節など、多岐にわたる後遺症が後遺障害等級8級の対象とされています。

後遺障害等級8級が認定されるのは、分かりやすくまとめると、以下のいずれかに該当する後遺症です。

1号 1眼が失明し、または視力0.02以下になった場合
2号 脊柱(背骨)に運動障害が残った場合
3号 以下のいずれかの手指を失った場合
  • 1手の親指を含む2本
  • 1手の親指以外の3本
4号 以下のいずれかの手指の用を廃した場合
  • 1手の親指を含む3本
  • 1手の親指以外の4本
5号 片脚が5センチメートル以上短くなった場合
6号 片腕の肩関節・肘関節・手関節のうち、いずれか1つの用を廃した場合
7号 片脚の股関節・ひざ関節・足関節のうち、いずれか1つの用を廃した場合
8号 片腕に偽関節が残った場合
9号 片脚に偽関節が残った場合
10号 片足の指を全部失った場合

2、後遺障害等級の認定手続き

後遺障害等級の認定は、加害者が加入している自賠責保険の保険会社に対して申請します。申請方法は、「事前認定」と「被害者請求」の2通りがあります。

  1. (1)事前認定の手続き

    「事前認定」とは、加害者側の任意保険会社に後遺障害等級認定の申請を任せる方法です。加害者が任意保険に加入している場合に限り、事前認定を選択できます。

    事前認定のメリットは、交通事故の被害者本人の労力がほとんどかからない点です。申請書類の大半は、加害者側の任意保険会社に準備してもらえます。

    その反面、任意保険会社は書類の不備などを積極的には指摘してくれないので、適切な後遺障害等級の認定がされないおそれがあります

    事前認定によって後遺障害等級の認定を申請する際には、加害者側の任意保険会社に対して後遺障害診断書を提出しなければなりません。
    後遺障害診断書は、症状固定の診断を受けた後で、医師に依頼して作成してもらいます。

    その後は加害者側の任意保険会社が手続きを行い、申請書類は損害保険料率算出機構に回付されて審査が行われます。認定が完了したら、その結果は追って被害者に通知されます。

    後遺障害等級の認定結果について納得がいかない場合は、異議申立て、自賠責保険・共済紛争処理機構への申立て、訴訟の提起(裁判)などが可能です。

    事前認定に対して異議申立てを行う場合は、納得できる形で申立てを行うため、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。

  2. (2)被害者請求の手続き

    「被害者請求」とは、交通事故の被害者が自ら、後遺障害等級認定の申請を行う方法です

    被害者請求の場合、被害者が申請書類をすべて準備しなければならないため、事前認定に比べて手間がかかります。その一方で、十分な書類をそろえて申請できるため、適切な後遺障害等級が認定されやすいよう積極的に動けるという点が大きなメリットです

    被害者請求は、加害者が加入している自賠責保険の保険会社に対して、被害者が申請書類を直接提出します。主な申請書類は以下のとおりです。

    • 申請書
    • 支払請求書
    • 印鑑証明書
    • 交通事故証明書
    • 事故発生状況報告書
    • 後遺障害診断書
    • 後遺症の状態がわかる資料(カルテ、写真、専門医の意見書など)
      など

    申請書類を提出した後の流れは、基本的に事前認定と同様です。申請書類が損害保険料率算出機構に回付されて審査が行われ、認定結果は被害者に通知されます。

    後遺障害等級認定の結果に不服がある場合は、異議申立て、自賠責保険・共済紛争処理機構への申立て、訴訟の提起(裁判)などが可能です。

3、後遺障害等級が認定された場合に、請求できる損害賠償

交通事故の後遺症について、後遺障害等級が認定された場合、被害者は加害者(または任意保険会社)に対して「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」の損害賠償を請求できます。また、そのほかにもさまざまな費目の請求をすることが考えられます。

  1. (1)後遺障害慰謝料

    「後遺障害慰謝料」とは、後遺症を負ったことによる精神的損害の賠償金です
    後遺障害慰謝料の金額は、認定された後遺障害等級に応じて、以下のとおり目安が決まっています。

    後遺障害等級 後遺障害慰謝料
    1級(要介護を含む) 2800万円
    2級(要介護を含む) 2370万円
    3級 1990万円
    4級 1670万円
    5級 1400万円
    6級 1180万円
    7級 1000万円
    8級 830万円
    9級 690万円
    10級 550万円
    11級 420万円
    12級 290万円
    13級 180万円
    14級 110万円

    上記のとおり、後遺障害等級8級が認定された場合、後遺障害慰謝料の金額目安は830万円です。

  2. (2)逸失利益

    「逸失利益」とは、後遺症によって労働能力が失われた場合に請求できる、将来得られなくなった収入の損害賠償です

    逸失利益の金額は、以下の式によって計算します。

    逸失利益=1年当たりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

    ※1年当たりの基礎収入:原則として、事故前の年収の実額です。ただし専業主婦(専業主夫)の場合は、賃金センサスに基づく女性労働者の全年齢平均給与額(2022年の賃金センサスでは394万3500円)を用います。

    参考:「就労可能年数とライプニッツ係数表」(国土交通省)

    労働能力喪失率

    (例①)
    • 後遺障害等級8級が認定された(労働能力喪失率:45%)
    • 1年当たりの基礎収入は500万円(会社員)
    • 事故当時40歳(労働能力喪失期間:27年、ライプニッツ係数:18.3270)

    逸失利益
    =500万円×45%×18.3270
    =4123万5750円
    (例②)
    • 後遺障害等級8級が認定された(労働能力喪失率:45%)
    • 1年当たりの基礎収入は800万円(自営業)
    • 事故当時35歳(労働能力喪失期間:32年、ライプニッツ係数:20.3888)

    逸失利益
    =800万円×45%×20.3888
    =7339万9680円
  3. (3)その他の損害賠償

    後遺障害慰謝料と逸失利益のほか、交通事故の被害者は、加害者に対して以下の損害賠償を請求できます。該当する項目につき、もれなく損害賠償を請求しましょう。

    ① 治療費

    ケガの治療にかかった費用の実額です。
    (例)初診料・入院費・通院費・薬剤費など

    ② 通院交通費

    ケガの治療やリハビリのための通院に要した交通費です。公共交通機関であれば実額、自家用車であれば走行距離に応じた金額(ガソリン代)が損害賠償の対象となります。

    ③ 装具・器具購入費

    ケガの治療やリハビリに必要な装具・器具の購入費用の実額です。

    ④ 付添費用

    被害者の入院や通院に、家族が付き添った場合の逸失利益(休業損害)です。入院であれば1日当たり6500円程度、通院であれば1日当たり3300円程度が認められます。

    ⑤ 入院雑費

    入院中における、日用品などの購入費用です。実額にかかわらず、入院1日当たり1500円程度が認められます。

    ⑥ 休業損害

    ケガの影響で仕事を休んだ場合に、得られなかった賃金です。有給休暇を取得した場合も、休業損害の賠償を請求できます。

    ⑦ 入通院慰謝料

    ケガをしたことによって、被害者が受けた精神的損害です。後遺障害慰謝料とは別に請求できます。

    ⑧ 物的損害

    車や携行品等が壊れたことによる損害です。
    (例)修理費(または買替費用)・代車費用・評価損・休車損害など

4、交通事故被害に遭ったら弁護士に相談を

交通事故の被害に遭った方は、加害者側に対する損害賠償請求について、弁護士への相談をおすすめします。

弁護士は、後遺障害等級認定の申請・示談交渉・訴訟など、損害賠償請求に必要な対応全般をサポートが可能です。交通事故の状況に応じた適切な主張構成を検討し、十分な証拠をそろえた上で、被害者が適正な賠償を受けられるように尽力します。

加害者側の提示する示談金額が納得できない場合には、弁護士が増額を目指して交渉します。特に任意保険会社は、独自の基準によって示談金額を計算するため、提示額が実際の損害額に遠く及ばないケースが多いです。弁護士が示談交渉をすることで、任意保険会社からも示談金の増額を引き出せる可能性があります。

交通事故の損害賠償請求を弁護士に依頼すれば、さまざまな負担が大幅に軽減され、適正額の損害賠償を受けられる可能性が高まります。交通事故の被害に遭った場合は、早めに弁護士へご相談ください。

5、まとめ

後遺障害等級8級が認定された場合、入通院慰謝料等とは別に、830万円程度の後遺障害慰謝料や収入・年齢などに応じた逸失利益の損害賠償を請求できます。

後遺障害等級認定の申請や、加害者側に対する損害賠償請求については、弁護士へ依頼することで精神的負担も軽減され安心して進めることができるでしょう。また、被害者ご本人の労力が大幅に軽減される上に、損害賠償の増額も期待できます。

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外口 孝久
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プロフィール
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所属 : 第一東京弁護士会
弁護士会登録番号 : 49321

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

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