足(足首)の後遺障害
目次
1、足指の後遺障害とは
以下では、足首に後遺障害が生じる可能性のある主な傷病例と日常生活や仕事に及ぼす影響について説明します。
(1)主な傷病例
足首に後遺障害が生じる可能性のある傷病例には、以下のようなものがあります。
- 足関節果部骨折
- 足関節捻挫症
足首は、腓骨・脛骨・距骨・踵骨などの骨とそれらをつなぐ筋肉や靭帯によって構成されています。そして、足関節の骨折や捻挫により骨・筋肉・靭帯が傷つけられると、足首の痛みや可動域に制限が生じるなどの後遺障害が生じることがあります。
(2)後遺障害が日常生活や仕事に及ぼす影響
足首は、歩行時の衝撃を吸収・分散し、身体の前方移動の支点になるという重要な役割があります。足首の骨折や捻挫により痛みや可動域の制限といった後遺障害が生じると、日常生活や仕事に以下のような影響を及ぼす可能性があります。
- 歩行や階段の昇降が困難になる
- 正座や前かがみで痛みが出る
- つまずきやすくなる
- 長時間の立ち仕事が困難になる
- 重い荷物を運ぶ仕事に就けない
- 外回り営業で長い距離が歩けなくなる
2、症状と治療法、初期対応の重要性
交通事故で足首を怪我した場合、どのような治療が必要になるのでしょうか。以下では、足首の怪我の症状、治療法、初期対応の重要性などを説明します。
(1)捻挫や骨折の症状
交通事故で足首の骨折や捻挫をすると、以下のような症状があらわれます。
- 足首の腫れや圧痛
- 皮下出血
- 歩行困難
- 靭帯断裂
- 可動域制限
足首を骨折・捻挫すると、通常は強い痛みが起こり、歩行が困難な状態になります。軽度な捻挫であれば、歩くことはできるものの放置すると足関節が脆弱化して、捻挫の再発が起きやすくなります。
(2)治療方法
①足首捻挫の治療方法
足首を捻挫したときの初期治療は、「RICE治療」が基本となります。
RICE治療とは、以下の応急処置の頭文字をとった治療法です。
- 患部を安静にする|Rest
- 氷で冷却する|Icing
- 弾性包帯やテーピングで圧迫する|Compression
- 患部を挙上する(心臓よりも高い位置に挙げる)|Elevation
患部の出血、腫れ、痛みを緩和するためにも、足首の捻挫に関しては、この初期治療が重要になります。
軽度の足首捻挫であれば、最小限の保存的治療で治癒可能ですが、靭帯断裂を伴うような重度の捻挫だと外科的手術による靭帯再建術を行わなければならないこともあります。外科的手術は、関節鏡下手術により実施しますので、外くるぶしの周囲に関節鏡を挿入するための小さな傷を数か所開け、損傷した身体を糸で縫い合わせます。
②足首骨折の治療法
骨の位置がずれていない足首の骨折であれば手術ではなくギプス固定による保存療法が選択されます。
しかし、足首を骨折した場合の多くは、骨のずれを伴いますので、外科的手術が選択されます。外科的手術では、骨片の位置を正しく整え、治療中に再び骨片がずれることがないようにするために観血的整復固定術(ORIF)という手術が行われます。具体的には、患部を切開し、折れてしまった骨を適切な位置に戻して、ワイヤー・ピン・スクリュー・プレートなどの特殊な器具でしっかりと固定します。
また、骨折に伴い靭帯が断裂しているような場合には、靭帯再建術も同時に行います。
③リハビリ治療
足首の怪我による痛みや腫れが落ち着いてきたら、交通事故の怪我により低下した身体機能を回復させるためにリハビリ治療を開始します。
まずは痛みのない範囲からゆっくりと足を動かしていき、腫れや痛みで硬くなってしまった患部の動きをよくしていきます。 ある程度動きが出てきたら、次は、落ちてしまった筋力を戻すための運動を始めます。最初はチューブなどを用いてすねやふくらはぎの筋肉を動かしていき、徐々にスクワットやつま先立ちなど足をつけたトレーニングを始めていきます。 その後、脚が痛みなくつけるようになったら、不安定感をなくすためのバランストレーニングを行います。
事故前の状態に戻すには、リハビリ治療が重要になりますので、無理のない範囲で進めていきましょう。
(3)初期対応が後遺障害等級認定に与える影響
足首の怪我が完治せず、何らかの症状が残ってしまったときは、後遺障害等級申請をすることで、症状に応じた後遺障害等級の認定を受けることができます。後遺障害等級が認定されると、治療費・休業損害・入通院慰謝料に加えて、後遺傷害慰謝料や後遺障害逸失利益を請求できますので、適正な後遺障害等級認定を受けることが大切です。
そのためには、交通事故発生後の初期対応が重要になります。
足首の怪我は、捻挫による靭帯損傷や骨折が生じていることがあり、これらの傷病の有無は、レントゲン・CT・MRIなどの検査をしなければ判明しません。事故直後に必要な検査を行わなければ、その後の検査で靭帯損傷や骨折などが明らかになったとしても、事故とは無関係な怪我であるとみなされてしまい、後遺障害等級認定を受けられない可能性があります。
そのため、事故発生直後は、すぐに病院を受診し、医師に症状を詳しく説明するとともに、必要な検査を受けるようにしてください。
3、後遺障害等級認定と慰謝料算定
足首の怪我で後遺症が生じた場合、どのような後遺障害等級が認定されるのでしょうか。以下では、足首の怪我で認定される可能性のある後遺障害等級と後遺障害慰謝料について説明します。
(1)3種類の算定基準と後遺障害慰謝料の金額
後遺障害等級申請の結果、後遺障害等級が認められると認定された後遺障害等級に応じた後遺障害慰謝料を請求することができます。後遺障害慰謝料の金額を算定する際の基準には、以下の3つの算定基準があります。
- 自賠責保険基準 ・・・・・・ 自賠責保険会社が慰謝料を支払う際の算定基準
- 任意保険基準 ・・・・・・ 任意保険会社が慰謝料を支払う際の算定基準
- 裁判所基準 ・・・・・・ 裁判所が慰謝料の支払いを命じる場合の算定基準
3つの算定基準は、それぞれ異なる計算方法がとられていますので、慰謝料の金額もどの算定基準を用いるかによって大きく変わってきます。一般的には、裁判所基準がもっとも高額で、自賠責保険基準がもっとも低い金額になります。
足首の怪我で認定される可能性のある後遺障害等級と各算定基準による後遺障害慰謝料の金額をまとめると以下のようになります。
等級 | 認定基準 | 後遺障害慰謝料 | |
---|---|---|---|
自賠責保険基準 | 裁判所基準 | ||
8級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの | 331万円 | 830万円 |
10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの | 190万円 | 550万円 |
12級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの | 94万円 | 290万円 |
(2)後遺障害等級認定にあたっての注意点
足首の怪我で後遺障害等級認定を受ける場合には、以下の点に注意が必要です。
①症状固定のタイミング
足首の怪我で後遺障害等級認定を受けるタイミングは、医師から症状固定と診断された時点になります。
症状固定とは、これ以上治療を継続しても症状の改善が見込めない状態をいいます。治療期間が長くなると加害者側の保険会社から治療費の打ち切りの打診を受けることがありますが、症状固定時期の判断にあたって重要視されるのは保険会社ではなく医師の見解です。そのため、保険会社から治療費の打ち切りの打診を受けたとしても、直ちに治療を終了するのではなく、医師の判断にしたがって治療の終了時期を決めていくようにしましょう。
②適切な後遺障害等級認定を受けるには被害者請求の方法で申請すべき
後遺障害等級申請の方法には、事前認定と被害者請求という2つの方法があります。
事前認定は、加害者側の保険会社に書類の収集や作成などをすべて任せることができる方法で、被害者の負担はほとんどありません。しかし、自分に有利な医証などを提出できませんので、必ずしも被害者にとって有利な結果になるとは限りません。
被害者請求は、書類の収集・作成をすべて被害者自身で行わなければならないため、事前認定に比べると被害者の負担は大きくなります。しかし、自分に有利な医証などを提出できますので、適切な後遺障害等級認定を受けられる可能性が高くなります。
なお、後遺障害等級認定の申請方法の詳細は、こちらをご参照ください。
4、足首の後遺障害について弁護士に相談するべき理由
以下のような理由から足首の後遺障害については、弁護士に相談するのがおすすめです。
(1)適切な後遺障害等級の認定に向けたアドバイスが受けられる
足首の後遺障害では、事故直後にレントゲン・CT・MRIなどの検査を行うことが重要です。また、適切な頻度で通院をしなければ後遺障害等級認定で不利になる可能性もあります。
治療段階から弁護士に相談をすれば、将来の後遺障害等級認定に向けたアドバイスが受けられますので、適切な後遺障害等級認定を受けられる可能性が高くなります。
(2)後遺障害等級申請の手続きを任せられる
適切な後遺障害等級認定を受けるには、被害者請求による申請方法をとるべきです。
しかし、被害者請求は、被害者自身で書類の収集・作成をしなければなりませんので、被害者自身で手続きをするのは負担が大きいといえます。弁護士に依頼をすれば後遺障害等級申請の手続きをすべて任せることができますので、被害者の負担を大幅に軽減することができます。