弁護士費用特約(弁護士特約)とは? 交通事故での使い方と利用の流れ

本コラムでは、すでに弁護士費用特約に加入している方や、加入するかしないかについてお悩みの方にむけて、「弁護士費用特約とは」などの基本情報から使い方、利用手順について、ベリーベスト法律事務所 交通事故専門チームの弁護士が解説します。
弁護士費用特約を適切に使えば、事故後の示談交渉において大きな金銭的メリットを得ることができます。ぜひご活用ください。
1、弁護士費用特約とは?
弁護士費用特約とは、交通事故被害者になったときや、日常生活で弁護士への相談や依頼が必要となったとき、その費用を保険会社が補償してくれる特約のことです。最近では、この特約だけ独立させた「弁護士保険」なども販売されています。
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(1)弁護士費用特約(弁護士特約)の基礎知識
日本弁護士連合会(日弁連)が公表するデータによると、令和5年度における弁護士費用保険の販売件数は2524万件でした。令和6年10月時点で、日本弁護士連合会(日弁連)と協定を結んでいる保険会社・共済協同組合の数は22社となり、より利用しやすくなっています。
たとえば交通事故に遭ってしまった場合、被害者は加害者に対して損害賠償請求をすることができます。その際、弁護士に相談することを検討したくても、その費用は被害者自らが負担しなければならず、相談や依頼をあきらめてしまう方もいるでしょう。
そのようなとき役に立つのがこの弁護士費用特約です。この特約に加入していれば、弁護士に相談・依頼をする際の費用を保険会社が負担してくれるため、被害者は経済的な負担なく弁護士に依頼できます。
ただし、実際に事故被害にあったとしても、ご自分が加入している保険に弁護士費用特約を付けていたことまで思い至らず、弁護士への相談をあきらめてしまうケースがあるようです。まずはご自身が加入されている保険の内容を確認してみてはいかがでしょうか。 -
(2)弁護士費用特約が役に立つケース
契約者が100%加害者ではない事故
結論からいえば、特約が使えない場合はほぼありません。
保険約款を確認していただければわかりますが、契約者の過失割合が0%の場合はもちろんのこと、たとえ99%でも、相手の1%分の責任を追及するために弁護士へ依頼するのであれば、弁護士費用特約を利用することができます。
物損事故
物損事故でも特約を利用することができます。
物損事故の場合、示談金がそこまで高くならないため、弁護士費用のほうがかかってしまい、弁護士に依頼するメリットがない場合が多いといえます。
しかし、特約に加入していれば、弁護士費用の心配をすることなく弁護士に依頼をすることできます。
相手が任意無保険
相手が任意保険に加入していない場合、その相手は自動車保険の保険料さえ支払えない経済状態であったり、そもそも被害者に損害賠償をする気がなかったりすることが多いでしょうから、満足な損害賠償を得ることができるかわかりません。そのため、弁護士費用を自ら支払って弁護士に依頼をしても、費用倒れになる可能性が高いといえます。
しかし、特約に加入していれば費用倒れになるリスクを回避することができます。 -
(3)弁護士費用特約が使えないケース|未加入・重過失など
この特約は任意保険とはあくまで別物ですので、別途契約をしていない限り、特約は利用できません。交通事故の発生後に付けた弁護士特約は、その交通事故について適用することはできない点にご注意ください。
また、仮に特約に加入していても、事故の状況によっては特約を利用できない場合があります。たとえば、契約者本人の故意・重過失が原因で損害が発生した場合です。具体的には、無免許運転や酒気帯び運転、また、犯罪行為の結果、事故が発生した場合などです。また、自動車事故でない場合や台風や洪水などの自然災害により発生した被害事故の場合もこの特約を利用することができません。 -
(4)契約者以外でも弁護士費用特約が使えるケースがある
実は、この特約は契約者以外の方が被害に遭われた場合でも使えることがあります。
具体的には、以下の6つのどれかに該当すれば利用することができるケースがほとんどです。- 契約者
- 1の配偶者(内縁関係でも可)
- 2または2の同居の親族
- 1または2の別居の未婚の子
- 契約自動車に搭乗中の者
- 1~2に該当しない者で契約自動車の所有者
なお、保険が適用される方の範囲は、契約者(正式には「記名被保険者」といいます。)を基準に考えます。保険会社によって若干の違いがありますので、詳しくは保険約款をご確認ください。
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(5)弁護士特約を利用しても、保険の等級には影響しない
被害者自身が加入している車両保険などは、適用を受けると保険の等級が上がり、その後の保険料が上がってしまうケースが多いです。しかし、弁護士特約は保険等級制度の対象外なので、適用を受けても保険の等級が上がることはありません。
中には特約を使うともったいないと思う方もいるでしょう。しかし、弁護士費用特約は、通常の保険のように、今年保険を使わなかったから来年1等級上がるといったことはありません。今回の事故で特約を使わなかったからその分が来年に持ち越されることもないのです。
そのため、せっかく特約があるのに使わないのはむしろもったいないといえるのです。保険料上昇の心配も不要なので、気兼ねなく弁護士特約をご利用ください。 -
(6)弁護士費用特約にかかる費用
特約を任意保険に付帯させるには、その分の保険料を保険会社に支払う必要があります。
前述のように、特約はそれ自体単独では存在せず、任意保険などとセットになっています。そして、多くの保険会社では、付帯させるかどうかを契約者が任意に決めることができます。
もし、自動車保険に加えて特約も契約しようとすると、付帯させない場合よりも年間1000円から2000円程度保険料がかかります。
もちろん弁護士に依頼した場合にかかる費用は弁護士によって異なりますが、もしものときのことを考えれば、特約を付けておいても損はないのではないでしょうか。 -
(7)依頼する弁護士は自由に選べる
特約を使って弁護士に依頼をしようと保険会社にその旨を伝えたら、保険会社から弁護士の紹介を受けることがあります。
そうすると、特約を使う際には保険会社が紹介してくれる弁護士でないとダメなのでは?と勘違いしてしまいそうですが、どの弁護士に依頼をするのかは自由に決めることができます。
保険約款を確認していただきたいのですが、特約を使う場合は保険会社指定の弁護士でないといけない旨は書かれていないはずです。ご自身が納得して選んだ弁護士に依頼することをおすすめします。
また、この弁護士なら大丈夫だと思って依頼したのに、その弁護士が頼りなかったり、実は交通事故の問題に詳しくなかったり、という場合も考えられます。
そうした場合、途中で弁護士を変更することが可能です。しかし、変更する際には事前に保険会社へ連絡しましょう。ただし、すでに支払った着手金などは返還されない点のみ知っておきましょう。
訴訟提起からご依頼いただき、十分な損害賠償金を獲得した事例
最終示談金額:950万円
Aさんは自転車で走行中に自動車にはねられ、重度の後遺障害が残りました。前の弁護士が訴訟に消極的だったため当事務所に依頼。訴訟の結果、950万円の賠償金で和解が成立しました。
この事例から得られること
- 記憶が曖昧な事故でも、刑事記録などを用いて過失を争える場合がある
- 前の弁護士が対応しきれない場合でも、事務所を変更することで道が開ける可能性がある
- 後遺障害逸失利益は、個別事情を丁寧に主張することで増額の可能がある
弁護士に相談するメリット
- 訴訟提起を視野に入れた交渉・対応により、納得のいく解決を目指せます
- 難解な損害賠償の手続きを、被害者の立場に立って一貫してサポートしてもらえます。
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2、弁護士特約の使い方と利用手続きの流れ
弁護士特約を使う際の手続きの流れは、以下のとおりです。
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(1)保険に弁護士特約が付いているかどうか確認する
まずは、ご自身が加入している保険に弁護士特約が付いているかどうかを確認しましょう。自動車保険のほか、火災保険やクレジットカードなどにも弁護士特約が付いていることがあります。
また、弁護士特約の契約者だけでなく、配偶者、契約者や配偶者と同居している親族、加入者や配偶者の未婚の子(別居時も利用可)、これらの者が所有する自動車の運転者や同乗者なども弁護士特約を利用できる場合があります。弁護士特約を使えるかどうかは、保険約款などを参照して確認しましょう。
とはいえ、保険約款などは複雑な内容になっていることもありますので、ご心配な場合は、一度ご加入されていらっしゃる保険会社にご確認されることをおすすめいたします。 -
(2)依頼先の弁護士を探す
弁護士特約が使えることがわかったら、依頼先の弁護士を探しましょう。探す際には必ず交通事故を得意としている弁護士を探してください。
というのも、交通事故の分野は法律だけでなく医学や保険の知識が必要になり、非常に専門性が高いといえます。そのため、必ずその道に精通している弁護士に依頼すべきです。
具体的な方法としては、交通事故事件を取り扱っている弁護士・法律事務所のホームページを探すのが一番簡単ですが、より詳しいことが知りたいのであれば、弁護士・法律事務所が出版している交通事故に関する書籍を参考にするのもよいでしょう。 -
(3)保険会社に弁護士特約の利用を伝える
依頼する弁護士が決まったら、次に、保険会社に弁護士特約を利用する旨と、依頼先の弁護士に関する情報を連絡しましょう。
保険会社への連絡後は、費用に関するやりとりは弁護士と保険会社の間で直接行われるケースがほとんどです。 -
(4)弁護士と委任契約を締結する
依頼する弁護士との間では、依頼内容や弁護士費用などを記載した委任契約を締結します。委任契約の締結は、保険会社への連絡より前であっても構いません。
弁護士とのトラブルを避けるため、委任契約書の内容は締結前に必ず確認しましょう。 -
(5)保険会社から弁護士へ弁護士費用が支払われる
保険会社への連絡と委任契約の締結が済んだら、通常は、保険会社から弁護士へ着手金などの弁護士費用が直接支払われます。
また、弁護士による事件の処理が終了した段階では、その結果に応じて保険会社から弁護士へ報酬金が支払われます。
3、弁護士費用特約を使うベストなタイミングと注意点
特約が使えることがわかった場合、どのような場合にこの特約を使い、弁護士に依頼するのがよいのでしょうか。また、使えたとしても注意点があるため、あらかじめ知っておきましょう。
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(1)弁護士費用特約を使うべきシーンとタイミング
交通事故被害に遭ったタイミングで、できるだけ早く弁護士に相談したほうがよいケースがほとんどです。
特に以下のような場合は、弁護士への依頼を検討されるとよいでしょう。
- 保険会社から提示された示談金額が妥当かどうか知りたい
- 慰謝料の金額をアップさせたい
- 適切な後遺障害等級認定を受けたい
- 後遺障害等級認定に納得ができないので異議申立てをしたい
- 保険会社との窓口になってほしい
- 事故直後から弁護士に相談することで、適切な治療・保険手続きが可能になる
- 適切な後遺障害認定が、賠償額の増加につながる
- 事故直後からの対応により、損害立証や後遺障害申請を有利に進めることが可能です。
- 医師への依頼文書の作成や書類収集など、後遺障害等級認定を専門的にサポートしてもらえます。
- 治療方針や保険制度の適切な選択に関するアドバイスが受けられます。
- 解決事例を詳しく見る
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(2)弁護士特約には補償の上限額がある
弁護士特約には、300万円程度の補償上限額が設定されているのが一般的です。この場合、弁護士費用が上限額を超えると、超過部分については自己負担となります。
ただし、相当高額の損害賠償を請求する場合を除いて、多くのケースでは弁護士費用の総額が補償上限額の範囲内に収まります。基本的には、弁護士費用の負担はゼロ、またはほとんどないことが多いと考えてよいでしょう。
もし、最終的に300万円を超える費用がかかる場合(たとえば、常時介護が必要な重度の後遺障害の場合や死亡事故の場合など高額請求になりそうなケース)には、その部分についてはご自身で負担する必要があります。自己負担について心配な場合は、担当の弁護士に確認してみるのもよいかもしれません。
事故直後の相談で後遺障害等級を獲得し、十分な賠償に成功した事例
最終示談金額:2058万4128円
Aさんはバイク事故で両手首などを負傷し、事故直後に当事務所へ相談。労災保険を活用して治療に専念し、後遺障害12級6号の認定を受け、十分な賠償金を獲得しました。
この事例から得られること
弁護士に相談するメリット
4、弁護士費用特約を使って弁護士に依頼するメリット
交通事故の被害者が弁護士特約を使って弁護士に対応を依頼することは、多くのメリットがあります。積極的に弁護士特約をご利用のうえ、弁護士にご依頼ください。
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(1)弁護士費用を気にせず依頼できる
通常、弁護士に交通事故事件を依頼する場合、着手金や報酬金などの弁護士費用がかかります。しかし、この特約があれば、代わりに保険会社が支払ってくれるため、そうした費用をご自身が負担する必要がありません。そのため、費用の点を気にせずに弁護士に事件を依頼できるのです。
また、対応を依頼しようと思っても、依頼するとかえって費用がかさんでしまうのではないかと思い、依頼をためらってしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、心配はご無用です。先ほどと同様、費用は保険会社が負担してくれますので、費用倒れの心配がないのです。
そして、弁護士に依頼すれば、加害者が加入している保険会社とのやりとりはすべて弁護士が代理して行ってくれますので、ご自身で交渉をしたり、書面を作成したりするなどの煩わしさから解放されます。 -
(2)慰謝料などの増額が期待できる
特約を使って弁護士に依頼をすれば、賠償額の増額が期待できます。
弁護士に依頼せず、自らが保険会社と交渉をする場合、保険会社は自社の内部基準(この基準を「任意保険基準」といいます。)に従って慰謝料等を算定し、賠償額の提示をしてきますが、この任意保険基準は弁護士が交渉する際に使用する裁判所基準よりも大幅に金額が小さいのです。
しかし、弁護士が保険会社と交渉を行うと、交渉が決裂した場合に裁判になることが予想されるので、保険会社も裁判の結果を見据えた金額を提示してきます。その結果、賠償額の増額が期待できるのです。
弁護士に依頼することによって得られる慰謝料の金額について、具体例を紹介します。たとえば、死亡慰謝料の金額には、自賠責基準と裁判所基準では、下記の表のように、数倍もの差があることを知っておきましょう。保険会社の低額提示から約400万円の増額で示談成立
最終示談金額:927万5393円
Eさんはバイク事故で重傷を負い、後遺障害12級が認定されましたが、保険会社の示談提示額が極めて低く、当事務所に相談。交渉により約400万円の増額に成功し、示談が成立しました。
この事例から得られること
- 弁護士が介入することで、慰謝料や逸失利益が大幅に増額される可能性がある
- 弁護士特約がなくても、適切なサポートを受けられる
弁護士に相談するメリット
- 裁判基準に基づいた適正な賠償額を見積もり、増額交渉ができる。
- 保険会社との示談交渉を一任でき、精神的負担が軽減されます。
- 解決事例を詳しく見る
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(3)負担の軽減・早期解決につながる
交通事故の損害賠償請求を被害者自身が行うことは、時間・労力・ストレスの観点から大きな負担になります。弁護士にご依頼いただければ、保険会社のやりとりを含め、損害賠償請求の対応を全面的に代行いたしますので、依頼者のご負担は大幅に軽減されるでしょう。
また、弁護士を通じて損害賠償請求を行うことは、紛争の早期解決にもつながります。法的に論点を整理したうえで、損害賠償に関する建設的な示談交渉ができるからです。
仮に交渉が決裂したとしても、弁護士が代理人として交通事故ADRや訴訟に対応し、できる限り早期に適切な解決を目指します。
5、交通事故被害者は事故対応に詳しい弁護士に相談を!
交通事故の被害にあってしまうと、場合によってはこれまでの人生からなにもかもが一変してしまうことがあります。そのような大きなストレスを受けている中で、ご自身で加害者側の保険会社の担当者と交渉を続けることは、さらなる負担となることでしょう。弁護士費用特約に加入していれば、弁護士への依頼を自身の負担なく行うことが可能です。しかも、自動車保険の等級にも影響しません。
弁護士を依頼することによって、交渉の段階から弁護士に対応を任せられるだけでなく、自賠責基準よりも大きな金額の賠償金を受け取ることができます。まずは、医療スタッフと連携した対応を行える、ベリーベスト法律事務所の弁護士にご相談ください。あなたが治療に専念したうえで、適切な損害賠償を受けられるよう、力を尽くします。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。
交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。