休業損害の計算方法は? 交通事故被害者が適切な金額を受け取る方法

更新:2025年03月06日 公開:2016年12月28日
休業損害
休業損害の計算方法は? 交通事故被害者が適切な金額を受け取る方法
交通事故に遭ってケガをしてしまうと、仕事や家事、介護など、入院などで本来すべき仕事を休まざるを得なくなるケースが多々あります。そのような場合、被害者は加害者側に対して休業損害を請求することが可能です。

それでは、休業損害はどのように計算するのでしょうか。また、どうすれば適切な額の休業損害を受け取ることができるのでしょうか。

今回は、休業損害の計算方法と適切な額の休業損害を受け取る方法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
この記事でわかること
  • 休業損害と慰謝料、休業補償の違い
  • 休業損害の計算において、自賠責保険基準は実収入に基づいた方法ではない
  • 弁護士が利用できる裁判所基準を利用すれば、適正な額が得られる可能性が高い
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1、休業損害とは?他の損害との違い

そもそも休業損害とは一体どのような損害のことをいうのでしょうか。他の損害との違いとともにご紹介します。

(1)休業損害とは?

休業損害とは、交通事故によってケガを負ってしまい、仕事を休まなくてはならなくなってしまったために得られなかった収入のことをいいます。
ケガの痛みで出勤ができなかった場合や、治療やリハビリのために欠勤する必要があった場合などには、対応して得られなかった収入を休業損害として賠償請求可能です。

(2)慰謝料との違い

なお、休業損害は「慰謝料」とは異なります。
慰謝料とは、精神的損害を補填するための賠償金です。交通事故によるケガ・後遺症(後遺障害)・死亡について、被害者はそれぞれ慰謝料を請求できます。

休業損害は、交通事故による被害者の実収入の減少を補填するものに対して、慰謝料は精神的損害を補填するものであり、補填の対象が異なっています。

(3)休業補償との違い

また、休業損害に似た言葉として「休業補償」があります。休業補償は、仕事中のケガなど労働災害が生じた場合に、勤務先から支払われるものです。休業損害は交通事故被害者が、加害者に対して請求する損害賠償金であり、休業補償とは異なります。

(4)後遺症逸失利益との違い

後遺症逸失利益とは、被害者が交通事故に遭わなければ将来得られたはずの収入をいいます。事故により後遺障害が生じてしまうと、労働能力が制限されてしまいますので、事故前と同様に働くことができず、収入の減少が生じてしまいます。そのような将来の収入減少を補填するものが後遺症逸失利益になります。
単に「逸失利益」とだけいう場合は、休業損害ではなく、この後遺症逸失利益を指すことが多いです。

休業損害と逸失利益は、どちらも収入の減少を補填する賠償項目になりますが、以下のように請求できる期間が異なっています。

  • 休業損害…事故発生から治療終了(完治または症状固定)まで請求できる
  • 後遺症逸失利益…治療終了後から一定期間請求できる

2、休業損害の計算方法は?|休業日数の数え方

それでは、休業損害はどのように計算することができるのでしょうか。

(1)算定基準は3種類

休業損害を算定する際の基準には、「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判所基準)」の3つがあります。

自賠責保険基準

自賠責保険から支払われる保険金額を計算する基準です。3つの基準の中で、休業損害の金額はもっとも低くなることが多いです。
自賠責保険に請求した場合、休業損害は原則として以下の計算式で算出されます。

休業損害=1日あたり6100円×休業日数
  • ※ただし、休業損害証明書等の立証資料などにより1日あたり6100円を超えることが明らかな場合は、1日あたり1万9000円を限度として実際の損害額が認められます。

この6100円という金額は、被害者の職業に左右されません。サラリーマンであっても、個人事業主であっても、主婦であっても、休業損害は原則として「6100円×休業日数」で計算されてしまいます。
なお、休業日数は、交通事故が原因で実際に休業した日数のことをいい、有休を使った場合も含まれます。

任意保険基準

加害者側の任意保険会社が独自に用いる基準です。休業損害の金額は、自賠責保険基準よりやや高くなることが多いですが、弁護士基準よりはかなり低くなります。
なお、任意保険基準の具体的な内容は非公開とされています。

弁護士基準(裁判所基準)

過去の裁判例に基づき、被害者が受けた客観的な損害額を算定する基準です。休業損害の金額は3つの基準の中でもっとも高額となることが多く、被害者は弁護士基準に基づく休業損害の賠償を受ける権利があります。

弁護士基準によって補償される休業損害は、交通事故と相当因果関係がある休業期間に対応する賃金全額です。弁護士に依頼すれば、法的根拠に基づいて弁護士基準による休業損害の賠償を請求できます。

(2)実際の収入を基準とする休業損害の計算方法

3つの基準をご紹介しましたが、事故前の実際の収入をもとに計算をした方が、実態に即した、より適切な額になるはずです。
3つの基準のうち、弁護士基準(裁判所基準)で請求する場合は、実際の収入をもとに計算を行います。基本的な計算式は以下のとおりです。

休業損害=1日あたりの基礎収入×休業日数

また、1日あたりの基礎収入は基本的に以下の計算式を使って求めます。

1日あたりの基礎収入=事故前3か月の収入÷90日(または3か月間の勤務日数)

なお、1日あたりの基礎収入については、被害者の事故当時の職業によって異なってきます。職業別の計算方法は後述します。

(3)休業日数の数え方

休業損害の計算に用いる休業日数は、交通事故時からケガが完治し、または症状固定※の診断を受けるまでの期間において、被害者がケガを理由に仕事を休まなければならなかった日数です。

  • ※症状固定:治療を続けても症状の改善が見込めないと医学的に判断される状態

具体的には、以下のような理由で仕事を休んだ日を休業日数としてカウントします。

  • ケガの痛みで仕事ができる状態になかった
  • ケガの痛みで公共交通機関を用いた通勤ができなかった
  • 医師から安静にするよう指示を受けたため、出勤できなかった
  • ケガを治療するために医療機関へ通院した
  • ケガのリハビリのために医療機関へ通院した など

これに対して、医師から完治または症状固定の診断を受けた後に仕事を休んだ日数については、休業損害の対象となる休業日数に算入しません。完治または症状固定後の休業は、交通事故との間に相当因果関係がないと考えられるためです。

3、被害者の職業別|休業損害の計算方法

休業損害は、被害者の職業によって計算方法が異なります。それぞれケース別に確認していきましょう。

(1)サラリーマン(給与所得者)の場合

サラリーマン(給与所得者)の場合、休業損害の計算式は以下のとおりです。

休業損害=事故前3か月の給与合計額÷90日(または3か月間の勤務日数)×休業日数

なお、基本給はもちろんのこと、事故前3か月の給与合計額には、基本給はもちろんのこと、各種手当等の付加給も含まれます。ただし、賞与については、上記方法ではなく、事故の影響で減額した賞与の金額を計算し、当該金額を請求することになります。

(2)専業主婦(夫)の場合

専業主婦(夫)は外で仕事をして収入を得ているわけではないため、休業損害をもらえないようにも思えます。

しかし、専業主婦(夫)が交通事故によって家事をすることができなくなってしまった場合にも、休業損害を請求することができるのです。
専業主婦(夫)の休業損害の計算式は以下のとおりです。

休業損害=賃金センサスに基づく平均年収額(※)÷365日×休業日数

  • ※令和元年に起きた事故の場合、令和元年賃金センサスを参照に女性の平均年収額388万100円を基準に計算します。

(3)自営業 ・個人事業主の場合

自営業の方の休業損害の計算式はケース・バイ・ケースではありますが、一般的には以下のとおりです。

休業損害=事故前年の申告所得(収入額-必要経費+固定費)÷365日×休業日数

固定費は、例えば、損害保険料、地代家賃、リース料、利子割引料、減価償却費、従業員給与、租税公課(ただし、確定申告の所得所得額の算定上経費計上できるものに限る)です。

(4)パート・アルバイトの場合

パートやアルバイトは給与所得者なので、同じく給与所得者であるサラリーマンと同様に、原則として事故前3か月の給与合計額を基準として休業損害を算定します。

(5)学生の場合

学生は、収入がない場合は原則として休業損害が認められません。ただし、パートやアルバイトなどで継続的な収入を得ていた場合には、交通事故を原因とする欠勤日について、休業損害の賠償を請求できます。

また、交通事故が原因で留年し、または治療が長期化したことによって就職の時期が遅れた場合には、以下の計算式に基づいて休業損害の賠償を請求可能です。

休業損害=就職内定先における給与額(日額)×休業日数

  • ※就職が内定していない場合は、賃金センサスの年齢別平均賃金を用いる
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4、休業損害請求の注意点

休業損害をしっかりと受け取るためには、以下のポイントを押さえておくことが大切です。

(1)実際の収入をもとに計算すること

自賠責基準では原則として1日あたり6100円として休業損害が計算されてしまいますので、それ以上の収入を得ているのであれば、実際の収入をもとに計算した方が適切な額の休業損害を受け取ることができます。

したがって、まずは、自分の休業損害がどのくらいになるのかを弁護士に相談してみましょう。

(2)きちんと休業損害証明書を書いてもらう

サラリーマン(給与所得者)が休業損害を請求するためには、休業損害証明書を勤務先に作成してもらわなくてはなりません。

その際、休業した日付や休業期間中の給与の支払いの有無やその金額、さらには事故前3か月に支給された給与額などを記載してもらう必要があるのですが、これらの事項を正確に記載してもらわないと、実際にもらえる休業損害が減ってしまうことがあります。

そのため、休業損害証明書をきちんと書いてもらうということも非常に重要になってきます。

(3)重複請求はできない

会社を休んだことで収入が減少した場合、休業損害以外にも減収分の補填を目的として支払われる補償があります。しかし、事故を原因として被害者が利益を得ることは、公平の観点から妥当ではないと考えられていますので、休業損害と重複して損害が補填されることがないよう調整がなされています。

具体的には、休業損害として支払いを受けた場合には、以下のような補償を受けることができなくなります。

  • 労災保険による休業(補償)給付金
  • 自賠責保険金、政府保障事業のてん補金
  • 所得補償保険給付金
  • 人身傷害保険による休業損害の補填

5、適切な額の休業損害を受け取るために弁護士へ相談を

適切な額の休業損害を受け取るためには、弁護士への相談をおすすめします。

(1)休業損害や慰謝料の算定は弁護士へ依頼するべき

休業損害は、休業1日あたりの収入をどのように計算するかによって、金額が大きく変わってきます。保険会社による計算では、休業1日あたりの収入が低くなっているケースもありますので、弁護士が交渉をすることで休業損害を増額できる可能性があります。

また、交通事故の慰謝料には、自賠責保険基準・任意保険基準・裁判所基準という3種類の算定基準があり、どの基準を使用するかによって慰謝料額が大きく変わってきます。弁護士が交渉する際には、被害者にもっとも有利な裁判所基準に基づいて慰謝料を請求しますので、保険会社が提示した金額よりも増額できる可能性があります。

(2)当事務所の解決事例

事務職で年収に変化がなくても後遺症逸失利益が認められた事例

保険会社は、被害者の年収が事故前後で変わりがないこと、事務職であるため右足の可動域制限があったとしても労働能力に変わりがないことなどを主張し、低額な後遺症逸失利益を提示してきました。

そこで、弁護士は、被害者が事故の影響で転職せざるを得なかったこと、転職先では昇進・昇給がないこと、退職金制度がないこと、事務職であったとしても業務中に勤務先を動き回る必要があること、本人の努力によって収入を維持していることなどを主張し、粘り強く交渉した結果、事故前後で年収に変化がなくても後遺症逸失利益の支払いが認められました。

事例:可動域制限の事例。事務職で年収に変化がなくても、逸失利益は認められる

逸失利益や慰謝料について交渉を工夫して十分な賠償額を獲得した事例

保険会社は、脳挫傷痕による12級13号の後遺障害について「脳挫傷痕があるだけで12級は認定されるわけであり、逸失利益はそれほど生じていないはずである」という主張をしてきました。

そこで、弁護士は、ご本人から聞き取った生活面での影響等を書面にして交渉の材料にするなどして工夫し、結果として十分な賠償額を得ることができました。

事例:逸失利益や慰謝料についての交渉を工夫し、十分な賠償額を獲得!

このように休業損害だけでなく、その他の損害賠償についても、弁護士へのご依頼によって増額が期待できます。特に、後遺障害(後遺症)に関する慰謝料や逸失利益については、弁護士へのご依頼によって数百万円から数千万円の増額が得られるケースも少なくありません。

弁護士にご依頼いただければ、交通事故の損害賠償請求に必要な手続きを全面的に代行し、被害者が適正な賠償を受けられるようにサポートいたします。交通事故の被害に遭った方は、速やかに弁護士へご相談ください

5、まとめ

交通事故によって仕事を休まざるを得なければ、休業損害を請求することが可能です。計算方法等をきちんと理解して、適切な額の支払いを受けましょう。

ベリーベスト法律事務所では、交通事故の対応に強い弁護士を中心とした交通事故専門チームを結成しており、最新の知見を常に共有しています。お勤めの方だけでなく、学生(未成年者)、主婦、自営業者などの方も、休業損害を適切に受け取れるようサポートすることが可能です。まずはお気軽にお問い合わせください。

▼ 動画でも休業損害についてわかりやすく解説しています。ぜひご覧ください。

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この記事の監修者
パートナー弁護士
弁護士会登録番号 : 49321

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

交通事故部マネージャー弁護士として、交通事故(被害者側)、労災問題(被災労働者側)及びその周辺分野に精通しています。マネージャーとして全体を統括し、ノウハウの共有に努めつつ、個人としても多数の重傷案件を含む400件以上の案件を解決に導いてきました。お客様と真摯に向き合い最善の解決を目指すことをモットーとしています。

この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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